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カテゴリー: politics

  • FRONTLINE 2019年総選挙結果特集

    FRONTLINE 2019年総選挙結果特集

    左派ニュース雑誌「Frontline」、今号特集は先日結果が判明した総選挙について。「右派共和国」というタイトルにて特集記事を組んでいる。

    今回の総選挙も2014年に続いてBJP(インド人民党)率いる「右派」による連合、NDA(National Democratic Alliance)の大勝に終わった。この右派連合について、国外メディアは「国家主義のアライアンス」「ムスリム排除の連合」と捉える例が少なくないが、これは多分に誤りを含んでいます。アライアンスの核となるBJPについてはそうした理解で良いかと思うが、NDAに名を連ねる所属する他の政党についてはこの限りではないからだ。

    NDAに加盟している政党には、中央や人口稠密な北インドによる支配を跳ね返そうという南インドのドラヴィダ民族主義政党が有力メンバーとして名を連ねているし、北東地域政党で現在所属している州からの分離要求を掲げているのはもちろんのこと、インド共和国からの離脱さえ理想として描いている政党すらあるからだ。

    こうした主張の内容すらまったく異なる右翼政党、民族主義政党が連合を組むというのは、多様性に富むインドらしいところでもある。

  • 上位カーストが対象の留保枠

    EWS(経済的弱者層)への10%の留保を設定することが決まったのは今年の1月。これまでの留保対象とならない層における一定水準以下の収入の世帯の者への救済策だ。つまり上位カーストの貧困層に対するものとなる。

    暮らし向きの良さ悪さはカースト上の秩序と比例するものではない。つまり同じ程度に貧しくてもカーストが高いほど損をするという「逆差別」への救済措置となるエポックメイキングなケースと言える。

    従前から「上位カーストへの留保を作る」と公言していたBJPの公約の実現だ。このあたりが出てくるのは総選挙が迫ってからという、いかにも計算された選挙戦の一環ということになる。

    来月終わりから再来月はじめにかけて投票が実施される(警備要員の配置その他の理由から全国一斉にではなく、いくつかのフェーズに分けて実施される)総選挙の争点のひとつでもある。 

    カーストをベースとせず経済状態に依拠する留保枠が設定されることは歓迎すべきことだが、肝心の収入レベルをどのように判定するのだろうか?インフォーマルセクターで日銭を得る人が占める割合も高いので、このあたりの不透明さも今後問題になってくることが容易に予想される。

    10% EWS quota for social equality: Centre (Hindustan Times)

    しかしながら、まだハードルがある。これまで留保枠は全体の50%を越えないという制約があったため、カーストに依拠としない(しかしSC、ST、OBCsに含まれない層を対象とすることから、まったくカーストに依拠しないとも言えない)留保枠を認めるかどうかについて、最高裁の判断に委ねることになっている。

    上位カースト貧困層への救済という観念が現実のものとなったのは良いことかもしれない。だが全体の5割、6割が留保対象となるというのは、あまり健全なこととは思えない。

    現代インドにおいて、「システムとしては存在しないはずのカースト」により「現実に存在する不平等」を解決するための「必要悪としての上位カーストへの逆差別」とその「逆差別により不利益を被っている層への救済」という矛盾とともに、「帝国主義時代に英国がインドの人々を縛った分割統治」の手法が、「民主主義の時代に人々が利益誘導のため活用」するというパラドックスがある。

    10% quota: Centre’s defence of reservation for poor upper castes in SC raises several questions (scroll.in)

  • LAAL LAKEER (赤い線)

    LAAL LAKEER (赤い線)

    LAAL LAKEER

    小説「赤い線」(「赤線」ではない)
    チヤッティースガル州バスタル地方に引かれた目に見えない「赤い線」。
    マオイストの影響下にある「赤い線」の向こう側、「人民政府」が力を振るう地域とこちら側つまり州政府が警察力で抑え込むエリア。
    どちらも先住民たちが暮らす寒村が点在する地域だが、「赤い線」のこちら側では、マオイストの掃討のためという名目で家を焼かれ村を追われる。これに抗うと「マオイスト」であるとして投獄される。
    さりとて「赤い線」の向こう側では、「警察のイヌ」との疑いをかけられた者はマオイストたちへの怖れから、弁護する者のない「人民法廷」で一方的に裁かれなぶり殺しにされる。
    相容れないふたつの支配勢力がせめぎ合う狭間での人間模様。
    「世界最大の民主主義国家インド」における盲点は、民主主義の根幹である「数は力」。「多様性の国」とはいえ、あらゆる側面においてマジョリティと利益を共有する部分のない(あるいはそれがとても少ない)マイノリティは、自らの権利を主張することは、「反社会的」であるとみなされる危険を伴う。バスタル地方だけではなく、カシミールしかり、北東地域しかり、である。
    長年、バスタル地方を取材してきたインドのジャーナリストによる「小説」。現地の事実関係に精通した著者によるものだけに、非常に重みのある作品だ。
    アマゾンでKindle版を購入した際、「ヒンディー語版」と記載されていた。おそらくオリジナルは英語で書かれているのではなかろうか。
    限りなくドキュメンタリーに近い力作である。
    著者のフリダイェーシュ・ジョーシー。ジャーナリストとしても、小説家としても、今後注目していきたい人物だ。

    書名:Laal Lakeer (Hindi Edition) Kindle版
    著者:Hridayesh Joshi
    出版社:Harper Hind
    ASIN:B01AI732W2

  • ムンバイのユダヤレストラン

    ムンバイのユダヤレストラン

    コラバにあるユダヤ教施設ナリーマンハウスの中にはコーシャル・ムンバイというレストランがあることを知った。だだしその日は土曜日、つまりサバース(ユダヤ教の安息日)であるため、どうかと思い電話してみたが誰も出ない。まあ近いので行ってみることにした。

    ムスリム地区にあるこのユダヤ教施設。昔からユダヤ人が多かったコラバだが同じくユダヤ人コミュニティの存在で知られたフォート地区、バイクラー地区と異なり、ここにシナゴーグが建てられたことはない。別名チャダードハウスとしても知られるこの施設には、世界各地から来るユダヤ系の人たちのための宿泊施設も有している。

    だいぶ前に前を通りかかったときの記憶とは、佇まいがずいぶん違っているのは、2011年のムンバイ同時多発テロが背景にある。VT駅、レオポルドカフェ、トライデントホテル、タージマハルホテルなどとともに、あの事件の舞台となったひとつの施設だ。テロリストたちがナリーマンハウスに立てこもり、ここを取り仕切るユダヤ教司祭家族、宿泊者等多数が殺害されている。タージマハルホテル同様、ナリーマンハウスにも、デリーから出動した特殊部隊が突入し、事件発生50数時間後に制圧された。

    そんないわくつきの施設となってしまったが上に、今も非常に厳しいセキュリティ体制が敷かれている。ここに入っている「コーシャル・ムンバイ」は、日曜から金曜までの午前9時半から午後9時まで(金曜日のみ午後1時半まで)の営業であることはわかった。

    Kosher Mumbai (CHADAD OF INDIA)

  • プリヤンカー・ガーンディーの政界デビュー

    昨日、インドから凄いニュースが飛び込んできた。国民会議派総裁ラーフル・ガーンディーの妹、プリヤンカーの政界デビュー。

    これまで選挙戦で応援演説に立つことはあったが、政治活動とは極力関わらずにいた彼女だが、会議派幹部(UP州東部担当)として正式に活動開始となった。 UP州東部といえば前回選挙でモーディーの出馬した選挙区バナーラス、UP州首相アーディティャナートの本拠地ゴーラクプルを含む。おそらく彼女はこのUP州東部から総選挙に出馬するのだろう。ガーンディー家の伝統的な地盤があるUP州西部のラーイバレリー地区からではなく。

    前回国民会議派総裁、ソーニアー・ガーンディーの娘だが、90年代にソーニアーが政治に担ぎ出された頃、彼女の息子ラーフル、娘プリヤンカーが成長するまでのつなぎという役回りだったが、その息子、娘で大きく期待されていたほうは、このプリヤンカーであった。

    知的かつ自信に満ちたスピーチはもとより、「ガーンディー王朝」と揶揄された国民会議派のネルー家嫡流にふさわしいノーブルさ、気高さ、品格を持つのがこのプリヤンカーであった。 加えて祖母インディラーの面影を濃く感じさせる物腰、仕草、スピーチなどからも、「まったくもって凡庸」な兄ラーフルより、はるかに人気がある。輝き具合がまったく違う。
    インディラーの面影といえば、ソーニアーは努めて義母のなりふりを模倣していたものだが、プリヤンカーに備わるそれは、やはり生来のもの、DNAに刻まれたものなのだろう。

    先の複数の州議会選挙を潮目に、流れが変わったように見えるインド政界。「インディラーの再来」としてのプリヤンカーのデビューで、一気に上げ潮の勢いとなるのではないかと思われる。まさに「真打ち登場!」といったムードのマスコミの扱いである。

    しかしながら不安要素もある。

    プリヤンカー人気、プリヤンカーの幹部入りは会議派の大きな強みであり、同時に大きな画像弱みでもある。その「弱み」は何かと言えば、プリヤンカーの夫、実業家ロバート・ワドラーの存在。
    プリヤンカーの人気と影響力を背景に、彼自身は党の人間ではないのに、会議派内のことに口出しをする、また彼のビジネスには、いろいろと黒い噂が付きまとう非常に濃いグレーな人物だ。
    これまでもソニアーとラーフルが、ロバートの怪しげなビジネスの関係で追求されたことが幾度かある。

    今後、インド総選挙が近づく(今年4月終わりから5月あたりになる見込み)につれて、日本の新聞にも「話題のプリヤンカー氏とは」というような記事が掲載されることもあるだろう。彼女の影には、ロバート・ワドラーという、すべてを台無しにしかねないとんでもない奴がいるということは覚えておいたほうがいいだろう。

    Priyanka Gandhi Vadra Joins Politics, Gets Key UP Post Ahead Of Polls (NDTV)

  • 留保制度

    インドでは高等教育機関進学や公部門への就職などの際に留保制度があり、指定カースト(SC)、指定部族(ST)、その他後進階級(OBCs)といったカテゴリーの人たちが恩恵を受けることになる。

    これについては昔からいろいろ議論のあるところだが、ちょうどアメリカにおけるアファーマティブアクションと比較されることもあり、恵まれない境遇にあるが、やる気と能力にあふれる若者たちを多数引っ張りあげてきたことは間違いない。

    ただし・・・である。

    カーストの上下は現在の人々の社会的地位や経済状態を反映するものではなく、たとえば指定部族出身でも州大臣になり、身内で手広く事業も手がけて大変豊かになっていたり、その他後進階級出身だが弁護士や医者として成功して高級住宅地に住んでいるような人も珍しくない。

    そのいっぽうで貧しい高位カースト出身者も無数に存在している。ムンバイーのタクシー運転手の大部分は北インド、UPやビハール出身者たちだが、若いころから何十年も汗水流して働き、収入のほとんどを故郷の家族に送金しているこうした人たちの中に、最高カーストであるブラーフマンであることを示す名前を持つ相当な人数が含まれているのだ。

    そんなわけで、実際の経済状態ではなく、観念上の出身ジャーティで留保が決まるというのはあまりに不公平だという意見は以前からよくあった。
    だが、たしかに後進階級や指定カースト、指定部族の中にこそ、貧困はより多いし、差別されがちなので就職も容易ではない。ゆえに留保をというのは仕方ないものでもあった。

    だが「その他後進階級」という定義がクセ者で、我らも加えよ、俺たちも追加しろと、様々なコミュニティーが政治を動かし、このカテゴリーに仲間入りさせるよう働きかけてきた歴史がある。

    そんなわけで、憲法ではカーストは否定されているが、厳しい現状を前に、これを解決するための必要悪としてこうした「逆差別」が設定され、これにより救済される人たちが増えてくれば、それらのコミュニティーの社会的経済的地位が向上して、この問題が解決し、制度そのものが用済みとなる・・・はずであったのに、それとは裏腹に留保すべき対象がどんどん増えていくのだ。

    そしてついに、このたびは上位カーストの人々(Swarn Jati)の人々にも10%の留保を!という議論が展開しており、いっそう混迷してしまっている。

    留保制度というものは、底なしの泥沼のようなものである。

    BJP aims to woo back core voters by announcing reservation for upper castes (The Tribune)

  • Chinatown Days

    Chinatown Days

    英語版発売予定とのことで、リター・チョードリーのアッサム語による小説「Makam」をアマゾンに注文したのは数年前。アッサムにおける華人コミュニティを舞台にした小説。かなり良い評判は聞いていたので、ぜひ読んでみたかったのだ。

    幾度も発売が延期となり、その都度アマゾンから「申し訳ありません」とメールが来ていたが、ついに「この本は入荷しません」とかいう連絡が入った。不可解ではあったが、何らかの理由で世に出なくなったのだろうと諦めていた。

    ごく最近、たまたま知ったのだが、実はこの「Makam」が「Chinatown Days」として出版されているとのこと。

    アッサム語小説の英訳というわけではなく、著者自ら英語で改めて著したとのこと。そんなわけで、確かに「Makam」の英訳版の出版は中止となり、内容はぼ同じながらも改めて書かれた「Chinatown Days」という別の作品が発表されたわけだ。

    これが紙媒体ではなくKindle版で入手できるというのもスピーディーでありがたい。

    ずっと何年も待たされたこともあるし・・・。

    書名: Chinatown Days
    著者: Rita Chowdhury
    ASIN: B0786T8XKX

  • 5州選挙開票速報

    本日夕方からテレビに見入っていた。

    5州の州議会選挙、チャッティースガル州、マッディャプラデーシュ州、ラージャスターン州で得票数でBJPを上回ることが確定したという。マッディャプラデーシュでは連立工作如何によっては、BJPが政権を握る可能性もないとはいえないとはいえ、どうやらこれら3州は国民会議派政権となりそうだ。テーランガーナー州は、会議派の友党TRSが過半数を大幅に越え、会議派は第2の議席獲得数。

    まだ完全に結果が出たとは言えない段階であったが、すでにテレビニュースでは「開票結果はどうなるか?」ではなく、「なぜBJPは負けたか?そして会議派の勝因は?」となっている。

    唯一、ミゾラム州のみがBJPが率いる右派連合NDA(国民民主連合)に属するミゾ民族前線が過半数を得たがBJPはわずか1議席。もともとこの地域では地元の民族政党が圧倒的に強いこと、マジョリティから大きく離れた特殊事情のある州なので、ここでの結果が中央政府の選挙に影響することはない。

    来年5月に行われる(4月になるかもしれない)総選挙に向けて、国民の投票行動を予測する重要な参考になるであろうことから、メディアが「2019年Lok Sabha(下院)選挙のセミファイナル」と表現する今回の5州選挙は、国民会議派の勝利となった。

    来年5月は、国民会議派率いる アライアンス、UPA(統一進歩同盟)が躍進することになるのだろうか。

    大きく右に傾くと、ちゃんと大衆の投票行動で反対側に揺り戻すのは、インド大衆のバランス感覚だ。1980年代末に大きく左に振れたときもそうだった。当時リードしていた陣営とは対極にあった右派政党が急伸して中央で政権を得た、そして地方でも躍進したのが1990年代であった。

    決してファシズムに走ることなく、左右どちらかに偏り過ぎると、必ずや反発して振れを是正する。さすがは世界最大の民主主義国である。

    Rajasthan, Telangana, Chhattisgarh, Mizoram, MP election results 2018 : Live updates (THE TIMES OF INDIA)

  • ナガ族の100年闘争

    かつては意思も方向もバラバラだった人たちが初めて「ナガ族」として1918年に結成した政治組織「Naga Club」の100周年に当たる。
    そのNaga Clubはもはやなく、ナガランドでは路線の異なる複数のナガ人政治組織が割拠している状態だ。Naga Club自体は武装集団ではなかったが、英領インドからの分離とビルマ側に住む同族たちの地域との統合を目指していた。
    その流れを汲む組織が政府に対して武装闘争を開始したのは、たしか1947年だった。
    Naga Club結成から数えて100年間も闘っている。これほど長く続いている独立闘争は、そうそうないはずだ。
    (政府と休戦中で、状態も安定しているため2011年から旅行者も自由に訪問できるようになっているが、まだ独立要求の旗を下ろしたわけではない。)

    A Short History of Naga Club With Date of Formation as Foretold by Leaders (EASTERN MIRROR)

  • ハイデラバード改め「バーギャーナガル」の公約

    なぜUP州のトップであるCM(チーフミニスター)が他州のことについて、こんなことを言うのかわからないのだが。

    今月投票が実施されるテランガナー州議会。もしBJPが同州与党となったらハイデラバードを「バーギャーナガル」と改名すると発言。

    狂ったように地名変更が続くインドだが、やはり狂ってしまったのだろうか。

    デカンに咲いた北インドの系譜のムスリム文化の華、ハイデラバード。今もムスリム人口は44%を数え、周辺地域がテルグ語圏であるのに対して、旧市街を中心とするかなり広いエリアで、ウルドゥー語を母語とする大きな人口。

    ここを都と定めた旧藩王国の主、ニザームは北インド由来の血筋、しかも現在はトルコのオスマン家の一員(姻族)でもあるインドきってのムスリムの名家。そんな由緒ある旧藩王国の都の名を「幸町」みたいなものに変えてしまうのは、あまりにもったいない。

    そこまでしてムスリムを嫌い、イスラーム文化の影響を疎んじるのか。

    Ready to rename Hyderabad as Bhagyanagar, says Uttar Pradesh chief minister Yogi Adityanath (THE TIMES OF INDIA)

  • ムンバイ同時多発テロから10年

    昨日は2008年11月26日に発生したムンバイ同時多発テロから10周年であった。

    この日の夜9時半頃に発生したムンバイCST(チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス)駅での銃乱射を皮切りに、コラバのレオポルド・カフェへの襲撃、タージマハル・ホテルとトライデント・ホテルでの立て籠もり、ユダヤ教施設のナリーマン・ハウス襲撃など、南ムンバイの複数箇所で時を同じくして複数のテロが実行された。

    パキスタン水域から侵入し、インドの漁船を乗っ取ってムンバイに上陸した犯人たちは、犯行地点までは市内を流していたタクシーで移動したが、降車する際に車内に時限爆弾をセットしたため、これを知らなかったドライバーが向かった先でクルマが爆発を起こしている。

    またムンバイCST駅で銃を乱射した際に被弾した人たちの多くが搬送された先のカーマ病院でも襲撃を加えるなど、非常に入念かつ冷酷な犯行であった。

    2001年9月11日に起きたニューヨークでの同時多発テロの際もそうであったのだが、進行中の事件がテレビ等で中継されることをも計算に入れており、私たちは画面の前で進行している悪魔の仕業におののきながら釘づけとなった。

    このとき私はAaj Tak、NDTV India等のニュース番組で成り行きを見つめていた。夜になっても、気にかかって寝ていることはできず、ほとんど徹夜で視聴していた。インドの大手メディアは電波だけではなく、インターネットでもニュース番組をリアルタイムで配信しており、私は日本でそれを見ていたのだ。

    実行犯たちは携帯電話で、彼らをそこに送り込んだパキスタンのテロ組織幹部と連絡を取っていることが明らかになっていた。そんな中、テレビでインドの治安組織側の対応が放送されること、その時点でこの事件についてインド側が把握していることを逐一電波で流してしまうことは、敵に手の内を見せているようなものだという批判もあった。

    犯人たちが立て籠もったタージマハル・ホテル、トライデント・ホテル、ナリーマン・ハウスでは、長いこと膠着状態が続き、制圧へ向けて動き出すには、デリーから投入された特殊部隊のコマンドーたちの現地到着を待たなければならなかった。

    そしてついに彼らが現場に投入され、事態は急展開を見せた。事件発生から実に足掛け3日目の朝8時、最後の立て籠もり現場であったタージマハル・ホテルが制圧された。死亡者174名、負傷者300名以上という凄惨な事件がようやく幕切れとなった。

    なお、この事件の実行犯10名のうち、事件当時21歳だったアジマル・カサーブは、この手の事件としては珍しく警察に捕縛された。(2012年11月に絞首刑)

    後に事件の背後関係や実行犯たちの出自等の詳細がよくわかるようになったのは、犯人の1人が生け捕りになったためという部分も大きい。この若い実行犯男性を主人公にした映画The Attacks of 26/11 (2013年公開)は、そうした情報を下敷きして制作された作品だ。

    こうしたことが二度と起きてはならないのだが、決してそうはいかないように思われるのは、やはりインド・パキスタン関係であり、商都ムンバイをターゲットとした場合のインパクトの大きさであり、いつ何時見知らぬ人が徘徊しても誰も気にさえ留めず人々の往来を管理することが困難な大都会の匿名性でもある。

  • FRONTLINE 2018年12月7日号

    FRONTLINE 2018年12月7日号

    インドのニュース雑誌「Frontline」最新号が発行された。
    「前線」の名の示すとおり、左傾した論調が心地よい。 昔ながらのインドの高級誌は、やはり「左」なのだ。
    今号の特集はカーシー・ウィシュワナート寺院、通称ゴールデンテンプルとその周辺の「浄化」作業による破壊と再開発への批判。1992年のアヨーディヤーでのバーブリーマスジッド破壊になぞらえた批判を展開している。