今宵も楽しく

近年のインドでは、ワイン需要が毎年3割前後の高い伸び率を示している。フランスやイタリアなどをはじめとする欧州産、南北アメリカやオセアニアからの輸入も好調だが、同時に自国産ブランドも着実に成長している。
国内消費を満たすだけではなく、欧州各国を対象に積極的に輸出に乗り出すようにもなっているのだ。日本でもChateau Indageを総代理店として輸入する会社があり、インド料理レストランなどで味わうことができるようになっているようだ。
インドにおけるワインの歴史は古く、インダス文明のころにはすでにブドウを原料にした酒が存在していたといわれる。またインドに進出した欧州の植民地勢力もワインを含む自国の酒文化を持ち込んだ。人の住むところ酒あり、ブドウのあるところワインありといった具合で、アルコールは地上に住む我々人類共通の文化といってもいいかもしれない。
さて、今をときめくインドのワイナリーはといえば、古代から脈々と受け継がれてきたものでなければ、大航海時代の欧州に端を発するものでもない。先述のChateau IndageSula VineyardGlover VineyardVinsura Vineyardなどいろいろあるのだが総じて新しく、『老舗』といえるChateau Indageにしてみたところで、その歴史わずか25年。
それ以前からワインと称して造られていた極甘の葡萄酒もあったが、この類は昨今のトレンドとは関係がない。インドで国内消費が伸びており、輸出も盛んになりつつある『今流行りのワイン』の歴史は、まさに始まったばかりと言って差し支えないだろう。
インドのワイナリーは、マハーラーシュトラ、カルナータカ、ゴアなどといった南部に加えて、北部ではパンジャーブやカシミールに点在しており、こうしている今も数年後の初出荷を目指して準備を着々と進める新興のワイナリーがいくつもあるのだろう。
もちろんワイン人気は、インドの好調な経済を背景に、人々の可処分所得の向上していることにより、嗜好品の消費が増えた結果ではあるが、これとあわせてライフスタイルの変化により、飲酒の機会が増えたことがあるのはいうまでもない。特に以前はあまり消費されてこなかったワインについては、それまでカスタマーとしてさほど重視されてこなかった人々が、かなりまとまった規模で消費行動に加わるようになってきたことがあるのではないかと思う。
つまり女性である。酒を飲む場所=男社会であったものだが、都会ではカップルや若者たちのグループで訪れることができるお洒落なスポットが増えたことに加えて、ウイスキーやラムといった『男臭い酒』とは異なり、ワインにはソフトかつ知的なイメージがあるのではないだろうか。そのため女性にはとっつきやすく、男性のほうにしてみても女性に勧めやすいものとなる。
マハーラーシュトラのナーシクで、昨年12月に第2回目となる『India Wine Show』という見本市が開かれた。機会があればぜひ足を伸ばして、インドを代表するワインの数々の味と知識を仕入れたいと思っている。
それではみなさん、楽しいお酒を飲みましょう!

『中国の餃子』で、ふとインドを想う

中国で製造された餃子の薬物混入事件が日本のメディアで盛んに騒がれている。JTの子会社が輸入した冷凍餃子を食べた3家族の合計10人が中毒症状を訴え、このうち3人が一時重体になっていたというのが事の発端であるのはご存知のとおり。
この餃子の製造元である中国河北省にある天洋食品厂から様々な冷凍食品を輸入していた日本企業各社が、一斉に該当製品の自主回収に乗り出した。厚生労働省も天洋食品厂から食品類を輸入していた19社に対し、餃子以外の製品についても検査するようにと指示するなど、本格的に調査に乗り出している。中国の同企業から仕入れている食品産業各社、ファミリーレストランなどの外食産業、学校給食なども中国産品の取り扱いを自粛したりするなど、この『毒物騒ぎ』がさらに大きな波紋を呼ぶことになりそうだ。
ご存知のとおり、今回の毒物成分はメタミドホスという有機リン系の農薬で、日本では使用が許可されていないものだという。これがどうして食品に混入してしまったのか?今後の原因究明が待たれるところだ。また被害に遭われた方々の早期の回復を願うとともに、今後同様の事件が続くことのないようにしっかりとした防止策を取って欲しい。まさに命にかかわる問題である。
しかし、である。ジェイティフーズ、加ト吉、味の素冷凍食品、マルハ、日本ハムなどといった日本を代表する食品産業を相手に卸していた中国企業ともなれば、相当な事業規模を持つとともに品質管理も厳重で社会的な信用も高かったはず。それなのにどうしてこんなことが起きたのだろう。
もちろん工場側が意図的に薬物を仕込むなどということはありえないはず。また偶発的な事故という線もどうなのだろうか?もしかすると、勤務先の工場に恨みを持つ一個人による故意の仕業だろうか?あるいは地元の対立する企業、ひょっとすると中国国外のアンチ中国勢力かなにかが、同食品厂のラインで働く従業員を買収して刺客に仕立てたのか?などといろいろ想像してしまう。今後の成り行きに注目したい。

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1,00,000 Rsの格安国民車 “NANO”

NANO
フォードからイギリスの高級車ブランド、ジャガーとランドローバーを買収交渉中のターター・モータース。およびこのたび正式発表となった価格10万ルピー車の開発も進めている。最高級クラスのブランド車から、これまで自家用車が高嶺の花だった層の人々をターゲットとする格安車まで、従来生産している他の自家用タイプのクルマ、バスやトラックといった大型商用車をも含め、実に幅広いレンジのさまざまなモデルが揃う総合自動車メーカーとなる。
デリーで開催されている2008 Auto Expoで、そのターター・モータースの格安小型車NANOが目玉となっている。エアコン、パワーウィンドウ、パワーステアリングなしのシンプルな造り(エアコンは別途装備可能)のこのクルマがどうして注目を浴びるのかといえば、インドのみならず世界各地で爆発的に普及するかもしれない潜在力を秘めた世界戦略車であるからだ。
今年後半から発売される予定のNANOは、どこか既視感をおぼえるクルマだ。そう、日本の軽自動車を思わせるものがある。全長3.1m、幅1.5m、高さ1.6m。排気量624ccで33馬力の4ドア車。後にディーゼルエンジンの車種も投入する予定とか。おそらく日本独自の軽自動車やクルマ社会における位置づけなどを非常に深く研究したうえで開発されたものではないかと思う。これを『インド版軽自動車』と言ってしまっては新鮮味がなくなってしまうが、NANOの武器はその超低価格ぶりにある。たったのエーク・ラーク(10万)Rsなのだ。

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毒も水もみんなの問題

昨今の日本のメディアでは盛んに輸入食品中に含まれる『中国毒』の問題を扱っている。加工品の場合、第一に現地での加工プロセス中での管理、中国における食品安全基準の甘さといった、体制上の欠陥、第二に低コスト化を求めて意図的に偽食品が作り出されるという倫理観の欠如といったあたりが大きな懸念材料として挙げられている。
また生鮮食品について、工業化の進行の結果として汚染された土壌で日本の基準値を超えた農薬等が使用された野菜や果物について、同様に汚染された水域で漁獲ないしは養殖された魚介類などが大量に日本市場に入ってきており、水際での散発的な抜き取り検査では全容を把握できるはずもないという声も挙がっている。

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US$は要らない!

目下、ルピー高が続いているが、対米ドル相場上昇という現象を除いても、近年のインド・ルピーの安定ぶりはかつてなかったものだ。80年代から90年代半ばごろにかけては、その間に92年の経済危機の際のような大きな切り下げもあったが、概ね当時のインドにおける金利より少し低い程度、つまり10%前後の率で切り下げていたと記憶している。
90年代も後半に入ると、1ドルに対して30ルピー台後半、つまり40ルピーを少し切る程度、闇両替だと40の大台に届くかどうかといった具合になって以降、それ以前よりもゆっくりと価値を下げて45ルピーを越えるようになり、やがて1ドル=50ルピーあたりにまで下がってからは持ち直し、その後長らく40数ルピー台で推移するようになっていた。そこにきて今や1ドル38ルピー台、39ルピー台で行き来している。
その間、消費者物価は平均4〜7%弱程度上昇しているので、日本のようなゼロ成長の国で収入を得ている者にとって、まだまだ安く滞在できるインドとはいえ、相対的に『高く』なってきていることは事実だ。加えてGDP成長率が7%から9%台という、まさに世界の成長センターであることから、特に住民の間に可処分所得の多い都市部において、『お金を使うところ』『お金がかかるスポット』が増えている。この国を訪問する外国の人々は以前に比べて多くのお金を消費するようになってきていることも間違いないだろう。

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