ナマステ・ボリウッド ムック・スートラvol.3

 

ナマステ・ボリウッド ムック・スートラvol.3のThat’s Bollywood 2000’sが発売された。 

タイトルに『2000’s』とあるとおり、2000~2009年までのボリウッド映画の総まとめである。今年は2010年、ゼロ年代といえばつい昨年までのことだが、次第に遠い過去の話になっていま7。ボリウッド関係の書籍、とりわけ最近のものがほとんど存在しない日本で、こうした形で大きな変化と飛躍を遂げた映画界に関する出版物が出ることの意義は大きい。 

2009年から2000年までの年ごとの主要作品と傾向を検証し、スターの世代交代や新たなカリスマの出現なども併せて、この10年間のボリウッドを俯瞰できる図鑑のような仕上がりだ。ページをめくっていると、大ヒットしたフィルミー・ソングや心に残るシーンなどが走馬灯のように脳裏を巡る。 

1990年代以降、衛星放送の普及により、エンターティンメントの『グローバル化』の波がインドに押し寄せたこと、また各地で大型のシネコンが増えたこともあり、ボリウッドにおける映画作りが相当変化した。かなり乱暴な言い方をすれば、ボリウッドがハリウッド化してきたことにより、旧来の『インド映画圏』以外でも、充分観客のテイストに応えられる内容になってきたといえる。とりわけ2000年以降のゼロ年代においてはその傾向が急速に進んだ。 

さらには近年、ボリウッドを巨大な市場として期待するハリウッド関係の資金が盛んに流入するようになってきており、インドでの興行収入はもちろんのこと、インドで製作された作品の国外でのロードショー公開なども併せて、急速に国際化が進展することになった。上映時間もずいぶんコンパクトなものが多くなっている。 

そうした意味で、90年代前半の日本における『インド映画ブーム』は時期尚早であったともいえるだろう。当時、日本で公開された作品のタイプが重なっていたこともあるが、『踊る』『ハッピーエンド』『貧者が憧れるゴージャスな夢』などといったフレーズでインドの映画作品を語る論評が多く、それらの多くがそれまでインドの映画に縁のなかった映画関係者たちから頻繁になされていた。 

そうしたスタンスで映画の興行がなされていたこと、それらを取り上げるメディアもその物言いを増幅して日本社会に喧伝したため、インドの映画に対するステレオタイプなイメージが定着することになった。ブームが一服すると従来の映画好きの人たちの間では『メッセージ性がなく中身もない映画』『長すぎて疲れる』となり、それ以外の人たちからは存在さえも無視されるような・・・としては言い過ぎかもしれないが、総じてB級、C級以下の作品群であると一括りにされてしまっているようであることが残念だ。 

ひとたび固定観念化してしまうと、それを拭い去るのは難しい。少なくとも当時の『ブーム』の記憶がある世代の間でインド発の映画に対するネガティヴなイメージがある限り、どんなに良い作品が日本で公開されても、特にインド映画に関心のある人でなければ映画館に足を運ぼうとはあまり思わないようだ。 

そうしたイメージを抱いている観客を相手に、興行会社も二の足を踏んでしまうのも無理はない。そもそも興行側にしてみてもインドの映画といえば『踊る×××』『やたらと長い』という認識しかないのかもしれない。 

近年大きく変貌しているボリウッド映画作品。それがゆえに前述のとおり、都会のシネコン向けの映画が増えているが、これにより取り残される形になったそれ以外のファン層を狙ったボージプリーその他の方言による映画も隆盛するという多層化の時代を迎えている。

 こういう時代なので、本来ならば今こそ日本でのヒットを狙うことのできる作品が多く出てきているはずなのだが、それらの多くは日本国内での映画祭での公開に留まってしまうのは、やはり90年代前半に突如訪れた『インド映画ブーム』の影響を引き摺っているという部分が大きいのだろう。 

ボリウッド作品を含めたインド映画とはいかなる形においても無縁で真っさらな状態であれば、より多くの人々が『IT大国の映画って何だろう?』と純粋な好奇心で映画館に足を運び、スクリーン上で展開しているストーリーとまっすぐに向かい合いことができたのではないかとも思う。メディアという限りなく大きな影響力を持つ存在によって創り上げられた『イメージ』が日本市場におけるインドの映画作品参入の障壁となっているとすれば、あんまりな話だ。 

もちろん今となってはそんなことを言っても仕方ない。まさにそういう状況を打開するために渾身の力を込めて頑張ってくれているのがNamaste Bollywoodであり、今後益々の発展を期待したい。 

幸いなことに、今の20代前半までの年齢層の人たちは、昔のインド映画ブームによる刷り込みがなかったり、そもそも記憶自体が存在しなかったりする。同時に余暇や趣味の時間が充分に確保できる年代でもあることから、前述のような状況は今後大きく変わっていくものと思われる。もちろんインドという国に対するイメージについても、それより上の年齢層とはかなり異なるものがあるとともに、ボリウッド作品内容の普遍化、グローバル化という流れもあり、今後興味、関心を持つ層が急増しないまでも、年々拡大していく下地はあるはず。 

今回のThat’s Bollywood 2000’sにて、様々なジャンルの作品の紹介のみならず、巻頭ではゼロ年代の主要作品の海外ロケ地(非常に多くの国・地域が世界地図上に書き込まれている)とともに、これらの映画に出演している俳優、製作者、音楽関係者等のプロフィールにもページを割いてあり、ボリウッド映画の多様性を実感できるつくりになっている。『ゼロ年代のBollywoodを語る』という対談記事と合わせて、今のボリウッドを知るため大いに役立つことだろう。 

また欄外にもボリウッド映画の予備知識、ゴシップ、スターの来日に関するもの等々の記述がふんだんに散りばめられているなど、寸分の隙もなく充実した内容になっている。グラフィックの美しさはもちろんのこと、豊かなコンテンツとともにボリウッドに対する限りない愛情と情熱に満ちたお薦めの一冊である。

購入先についてはこちらをご参照願いたい。

Namaste Bollywood #25

Namaste Bollywoodの今号の特集は『ゼロ年代のボリウッド』である。 

2000年から2009年までの、Kabhi Kushi Kabhie Gham, Devdas, Munna Bhai MBBS, Kabhi Alvida Naa Kehna, Om Shanti Om, Rab ne bana di Jodi等々の 代表的作品が取り上げられている。 

ご存知のとおり、ボリウッド映画界のトレンドはここ10年ほどで大きく変化するとともに、ロケ地、配給先、資金関係などにおいて、一層のグローバル化が進展した時期でもあった。 

この時代を振り返るムック本もNamaste Bollywoodから発刊される。題して『That’s Bollywood 2000’s』だ。 

Namaste Bollywoodのウェブサイト内に、ボリウッド映画のDVDレビューが掲載されるようになっている。 

十年一昔とは言うが、今から遡ること11年前の今ごろ、世界規模でのコンピュータの誤作動が『2000年問題』に対する懸念が世界的話題になっていたことが、はるか遠い昔のことに感じられる。 

私たちがこうしている『今』の出来事も次第に過去へと追いやられてしまうのだが、ゼロ年代に続く『10年代』のボリウッド映画界ではどんな作品が発表されていくのか、今のスターたちがどう進化していくのか、どんなスターが誕生してくるのか等々、非常に楽しみである。

Namaste Bollywood #24

namastebollywood #24
namastebollywood #24。

Namaste Bollywood #24, 今回の特集は『ボリウッド v.s. インド映画』だ

インドの映画大国たるゆえんは、制作本数の多さのみならず、地方語による映画づくりが盛んで、国内に幾つも制作の中心地があること、それらを支えるファンの厚い層があることだろう。

ボリウッドのヒット作を地方語作品でリメイク、あるいは地方語作品で当たったタイトルをボリウッドでリメイクというケースはしばしばある。巻頭では、前者の例としてMunna Bhai M.B.B.S.を、後者の例としてGhajiniを取り上げて、それぞれの作品内容の比較を試みている。

また『インド映画』ではないが、共通するシネマ文化背景を持つパーキスターンにおけるボリウッド作品のパクリについての言及があるのも興味深い。

その他、マラーティー、パンジャービー、ベンガーリー、テールグー、カンナダー等の諸語の映画における近年のヒット作にも触れている。

インド生まれの作品の海外上映事情に関する言及があるのも興味深い。リティク・ローシャン主演のKitesは5月21日のアメリカ公開後、全米チャート第10位にランクインしたとは知らなかった。

あとはナマステ・ボリウッド誌を実際に手にとってのお楽しみ。今のボリウッドの魅力を日本のファンに存分に伝えるべく、今回も非常に力のこもった内容である。

Namaste Bollywood #23

Namaste Bollyowwd #23
Namaste Bollywood #23が発行された。
同誌をめくって初めて知ったのだが、昨年マカオが開催されたIIFA(International Indian Film Academy)が、今年6月に韓国のソウルで開催されるとのことだ。
1990年代以降、クルマ、携帯電話機、家電製品等々、インド市場に怒涛のように進出し、大きな存在感を示すに至った韓国だが、自国ではボリウッド映画をどのように評価しているのだろうか。
さて、今号の特集記事は『はじめてのボリウッド』である。十数年前、いっとき日本で盛り上がったインド映画ブーム。だがそれがゆえに、以降の作品に対する関心の薄さの原因となっていることを踏まえてのものであるようだ。
『ブーム』の終焉以降、インド発の映画を見ずに過ごしてきた人たちの間で定着している先入観が、実は大きく様変わりしている今どきの作品へのアクセスを阻んでいるのであろうということは、私も常々感じている。
いっときの流行が終わってから、すでに十数年経過している。当時、小学校低学年であった子供たちが成人となるくらいの時間である。1990年あたりに生まれ、現在20歳くらいの人たちは、日本でインド映画が次々に上映された時期があったことを耳にしてはいても、実はよく知らないはずだ。
そうした先入観のない世代、知識欲や好奇心旺盛な年代こそが、日本におけるインド映画の有望な市場なのではないかと思う。
同時に、10代後半から20代前半あたりの年代は、自由に使うことができる時間に恵まれ、趣味であれ、スポーツであれ、好きなことに打ち込むことができる年齢層だ。またインドに対するイメージも、それよりも上の世代とはかなり違うようでもある。
加えて、洋の東西を問わず、娯楽映画の多くはそのあたりの年齢の人々を主なターゲットとしているものが多いことは言うまでもない。この市場をいかに取り込むことができるかということが、大きなカギとなる。
今号の特集『はじめてのボリウッド』は、まさにそうした人々を意識したものであろう。ムンバイー発の映画に関心を抱く人、ひいてはインドという国に対する興味を感じる若い世代の人々が、今後さらに増えてくれれば幸いである。

Namaste Bollywood #22

Namaste Bollywood #22
日本で唯一のボリウッド専門情報誌Namaste Bollywoodは、今年創刊4年目を迎えるとのことだが、このほど第22号が発刊された。
今回の巻頭を飾るのは、『ボリウッド名優特集』だ。イルファーン・カーン、ケー・ケー・メーナン他の俳優たちが取り上げられている。通常、メガヒットを記録するような作品で主演を張る役者たちではないとはいえ、ストーリー中で重要なカギを握る役柄で、演技派・実力派の彼らの存在あってこそ作品に磨きがかかる。
近年、映画で取り上げられるテーマの幅が広がりを見せていることもあり、彼らが主役での渋い作品も多く出てきている。記事内容について、あまりいろいろ書いてしまうとネタバレになってしまうので、あとは実際に誌面をご覧いただきたい。
3 idiots, Rocket Singh, Paa, Pyaar Impossible, Chance Pe Danceといった昨年終わりから今年初めにかけての新作情報、今号のBollywood Filmy Pedigreeは、アパルナー・セーンとコンコナー・セーン・シャルマー母子とその周辺についての紹介、デーヴ・ベネガル監督へのインタヴュー等々、盛り沢山だ。
書籍の紹介で、ちょっと気になるタイトルが挙げられている。日本では、書肆なゆた屋が取り扱っているHindi Cinemaという本である。オックスフォード大学出版から出ているだけあり、ただの映画関係読み物ではないようだ。インド国内の他のジャンルの映画への影響、映画とアングラマネーとの繋がりといった周辺事情、はてまたヒンディー語映画の海外市場についてついても論じられているとのことだ。個々の作品のみならず、映画界そのものの事情について関心を抱く人にとっては必読の書かもしれない。
さて、今年もまたボリウッド映画ファンの私たちにとって、多くの素敵な作品に恵まれた1年でありますように!
※ダーラーヴィー?以降は、後日掲載します。