現在、日本・アメリカ・イギリス・フランス・韓国・中国(香港を含む)で、事業を展開しているユニクロが、2032年までに世界一のアパレル製造小売業グループになるという目標を掲げたうえで、インドとロシアへの進出のための本格的な調査に入ることを発表した。
シンプルなデザインを基調に、新素材を積極的に活用したうえで比較的短いサイクルで商品をリリースしている同社だ。マンネリ化を防ぐためか、定番アイテムについても前年と同一のものが店頭に並ぶということはなく、必ずどこかを変更・改良するとともに、ときに他企業等とのコラボ商品などでアクセントをつけるなど、ひとつひとつの品物はベーシックながらも、常に変化を続ける『スピード感』がある。
また効率化という面でも際立っており、多様なアイテム構成かつ迅速な商品入れ替えを行ないつつも、店舗により在庫量や置いてある品物のバリエーションに多少の差はあっても、店頭の商品、店構え、スタッフ等々、基本的にあらゆる面において『標準化』されているのが大きな特徴だろう。チェーンのファストフード屋が衣料品店になったような印象を受ける。そのため各国のアウトレットで販売されているアイテムも、日本の店舗に並んでいるものと大差ないようだ。
だが、これまでユニクロが事業展開している日本を含めた6ケ国にはない独自の豊かな服飾文化を持つインドだけに、単に日・米・韓等で売れ筋の品物のみをそのまま並べるだけではないように思う。相対的に年中気温が高い地域が多く、冬はかなり冷え込む北部にしても、山岳部を除きデリーやラクナウその他人口が集中する都市圏が存在する平原部では日本よりも夏物を身にまとう時期がかなり長い。加えて素材、色彩等の豊富さから、逆にユニクロの本家である日本やその他の市場に様々なアイデアやヒントを与える存在になることだろう。
生産拠点がバングラーデーシュ(およびベトナム)に移行するというのも面白い。急成長したアパレル業界大手に、市場ならびに原料供給地・生産地としての南アジアの存在感が浮上してきた。もともと繊維・衣類産業が盛んなバングラーデーシュだ。同国の関係機関がJETROの協力を得て開催した『バングラデシュ展』の開催、池袋サンシャインのインポートマートで展示会実施といった形で、同国産の主にテキスタイル関係を紹介する試み地道な活動が続けられている。
また小規模ながら個人事業主でもモン・インターナショナルのように、バングラーデーシュ出身の経営者による自国の衣類や革製品の取り扱い、同国との深いつながりを持つNGOが現地で製造した品物を日本国内で販売などといった例はあっても、本格的なテキスタイルの分野において日本からさほど注目を集める国ではなかった。だがここにきて突然大手アパレル会社が進出予定とのことで、同業他社も生産拠点としてのバングラーデーシュに着目する動きが出てくるかもしれない。
インド、バングラーデーシュがユニクロの事業そのものの核となるわけではないようだが、今後このふたつの国を軸にどういう展開がなされていくのか、何を行なっていくのか、ちょっと気になっている。
ユニクロ、インドなど新興国出店強化で「世界一目指す」 (msn産経ニュース)
投稿者: ogata
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インドでUNIQLO
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悪いだけの草じゃない
大相撲の幕内力士若ノ鵬が大麻取締法違反で逮捕されたことがきっかけとなり、9月2日に十両以上の力士を対象として、尿検査が抜き打ちで実施されたところ、西前頭三枚目の露鵬(大嶽部屋)と東十両六枚目の白露山(北の湖部屋)から大麻の陽性反応が出た。この騒動は日本各マスコミで大きく取り上げられているので皆さんご存知のとおり。
昨年以降、朝青龍問題(私には相撲界とスポーツメディア寄ってたかっての外国人力士イジメとしか思えなかったが・・・)や若手力士が稽古場で兄弟子たちに暴行を受けて亡くなるなど、トラブル続きだった角界。今回はひとつの不祥事を受けて、迅速に対応した形だったが、意外にも相撲協会理事長を務める北の湖親方の足元に火が点いてしまい大わらわだ。
おそらく今後、各種メディア等で『大相撲大麻汚染』『退廃の角界』などいった記事がスポーツ紙を中心に多数掲載されるのだろう。先述の露鵬は大麻を六本木の繁華街で外国人から手にいれたと供述していることから、力士だけではなく他競技の選手の名前も今後取り沙汰されるようになってくるのかもしれない。 -
マムターの勝利・・・でいいのか?

今年1月にデリーで開催された2008 Auto Expoにて鳴り物入りで登場したターター自動車の10万ルピー車NANO。インド国内のみならず世界戦略をも担う期待の新星だ。同社は今年のダシェラーに入る前あたりで、このモデルの路上でのデビューを狙っていたようだ。だがその発売どころか生産工程についても暗雲がたちこめており、光が差し込んでくる気配さえ感じられない。
ナーノーの組み立てが行なわれているのは、ターター自動車が西ベンガル州のスィングールに建てた工場。ここでの土地収用をめぐる争議が続いているのはこれまでずっとメディアで報じられていたところだが、このほどターター自動車自身が作業員たちを引き揚げ、この生産拠点を放り出してしまう可能性が大きくなってきた。
Tata stops work, Bye Bye to West Bengal ? (Hindustan Times)
Battle Ground Singur (Hindustan Times) -
9月最初の週末 ネパールのイベント@日比谷公園
空のしたミキさんに教えていただいたのだが、今度の週末6日(土)と7日(日)に日比谷公園で第2回ネパール・デー・フェスティバル2008が開催されるとのことだ。
今年8月後半の東京の天気はちょっとヘンだったが、例年台風さえ来なければ好天が続くはずのこの季節。晴れればまだまだ暑いとはいえ7月、8月と比べれば、格段に過ごしやすい。ご家族ご友人等誘い合わせて出かけてみてはいかがだろう。
上記ウェブサイト中のgalleryには、開催第1回目であった昨年の会場内の写真が掲載されている。まだあまり広く知られていないイベントだけに、広い会場の一角でゴチャッと集まってガヤガヤやっているような風景が頭に浮かぶ。
でもそんな具合が一番心地よいのだ。適当に食べて飲んで、疲れたら芝生でゴロンと寝転ぶ。再び小腹が減って何か食べ物をと露店の間を徘徊していると、『ああ、やっぱり来てましたね』と知人に挨拶。こういう催しに必ず来ているあの人、この人・・・。『あれ下さい』と品物を指差すと、それを包んで差し出してくれるのは、やっぱりあのお店の人。こういうイベントに必ずといっていいほど出店する業者さんともよく出会う。
都会の大きな公園の中に突如出現したムラ社会みたいな感じもするが、たった2日間という短い期限付きの幻想空間みたいなものでもある。日比谷公園の同じスペースで、年間いくつものイベントが開催されるが、どれひとつ同じ雰囲気のものはない。集う目的が違えば、そこにやってくる人々も違う。
在日の知り合いがあれば『あの人はきっと来るだろうな』『彼にも一応声かけておこうか』といくつかの顔が胸に浮かぶだろう。そうした相手と会場で顔を合わせたり、そのつながりで思いもかけない人にバッタリ出会ったりということだってあるだろう。そういう機会があり、そういう会場がごく気楽に訪れることができる距離にあるということは実にありがたい。
ところでネパール・デー・フェスティバル2008ウェブサイト内のイベントプログラムにある『ナマステ体操』とは何ぞや?Googleで検索してみると、こんな記事が見つかった。
ナマステ体操で人々の健康と幸福、そしてこの国の平和を(ODA新聞)
JICAのシニアボランティアとしてネパールに赴任された方が考案されたものらしいが、これまでその体操を目にしたことかないし名前さえ知らなかった。ナマステ体操はこのイベントで華々しく里帰りを飾ることになるようなので、それが一体どういうものなのか、よくよく観察しておこうと思う。 -
スリランカフェスティバル2008
9月13日(土)および14日(日)に、東京渋谷の代々木公園でスリランカフェスティバル2008が開催される。
同公園にて、ここ数年おなじみとなったこのイベントだが、年によって開催時期がかなり前後していたが、屋外での催しものとしては結局このあたりの時期が一番適当なのではないだろうか。暑さがやわらぎ、湿度も下がってくる季節。ワイワイと外で一日過ごすのにはもってこいだ。台風にさえ見舞われなければ、天気も安定しているはず。
そんなわけで、9月中旬のこの週末、ぜひ代々木公園まで足を運んでみてはいかがだろうか。 -
パナソニックLX3に注目

カメラがデジタルの時代に入ってからというもの、純然たる光学系技術志向の職人気質の『カメラ屋』メーカーが沈んでいくいっぽう、従前の光学・機械工学技術に加えて電子技術にも長けたところが一気に伸びてきた観がある。伝統あるαブランドがソニーに買収されたミノルタのような例もあれば、ソフト面での開発に長けた韓国のサムソンと提携して生き残りを図るペンタックスのような例もあるが、同時に家電メーカーからカメラの分野に進出して定着するところも出てきた。ソニーやパナソニックがその典型だ。
『新興カメラメーカー』のひとつであるパナソニックから、ちょっと気になるコンパクトデジカメLUMIX DMC-LX3が発売された。やや大きめのCCD、充実したフルマニュアル操作性、タテ・ヨコの比率がワンタッチで変更できること、豊富なアクセサリ類などが売りになっているようだが、このカメラの真価は35?判換算で24〜60mm相当のズームレンズのワイド端でF2.0、テレ端でF2.8という、現行のコンパクトデジカメで類を見ないレンズの明るさだ。
旧モデルLX2のズームレンズ焦点域は28mm〜112mmであったが、今度のLX3では24mm〜60mmへと大幅な変更がなされた。その分F値がF2.8〜F4.9からF2〜F2.8と格段に向上して、まったく別のカメラに生まれ変わったといってもいい。広角側により強くなったことと合わせて、スナップ中心でコンパクトデジカメらしい使い方をする分には使い勝手が非常に良くなったはず。そもそもコンパクトデジカメの光学性能や画質を考えれば、あまりに無理な焦点域のズームが必要だとは思わない。
別売のアクセサリ類として、光学ファインダー、速写ケース、18mm相当の超広角撮影が可能となるワイドコンバージョンレンズなどが用意されていることからも、本格的な撮影の道具としてのムードを醸し出しており『ちょっといいカメラが欲しいなぁ』という人の購買意欲を大いにそそりそうだ。 -
キングフィッシャー ロンドンへ飛ぶ

インドの新興エアラインを代表する航空会社のひとつ、キングフィッシャー・エアラインスが9月3日から国際線に進出する。手始めはバンガロール・ロンドンを往復する便であり、じきにムンバイ・ロンドン便も続くようだ。他にもサンフランシスコ、ニューヨーク、アムステルダムなどへの乗り入れが予定されているらしい。
マレーシアを本拠地とするエア・アジアのように、自国および近隣国を軸足を置き、地域を代表する航空会社に成長していったのと違い、南アジア近隣国や中東諸国への飛行も検討されているもののプライオリティは低く、今のところは欧米志向のようである。
ともあれ、例の赤くて格好いい制服を着たフライト・アテンダントたちの姿をインド国外の空港で見かける機会が出てくるのだろう。
将来、キングフィッシャー・エアラインスで東京からバンガロールへ直行できる日がくるのかどうかわからない。それでも今後、成田空港への乗り入れについての検討がなされるかどうかという点については、発着にかかるコストもさることながら、それが果たして良いことなのかそうでないのかはともかく、インドにおける日本のプレゼンス、インドから見た日本の関係がどのくらい深いものになっているかということが如実に反映されることだろう。
もちろん日印間の友好や親善などといったエモーショナルなものではなく、経済という人々の日々の活動を通じた実体をともなう繋がりがどれだけ濃いものになっているかということであることはいうまでもない。 -
ご当地仕様チキンラーメンは如何に?

ある方からいただいた電子メールで初めて知ったのだが、日清食品のチキンラーメンの発売50周年を記念して、今年3月から日本国外6ケ国でオリジナルのチキンラーメンが発売されているのだそうだ。どれも日本国内で販売されているものとは違うテイストに仕上がったご当地仕様だ。その国々とは、インド、ブラジル、アメリカ、インドネシア、ハンガリー、中国(香港バージョンと広東バージョンあり)である。
さて、インドでは現地法人INDO NISSIN FOODSからどういうものが売られているかといえば、『インドで好まれる焼そばタイプ。ローストしたチキンエキスに、インドのスパイスの定番といわれるターメリックやレッドチリなどを加え、インド風味豊かな味に仕上げました』と日清食品のウェブサイトにある。
また中国の広東バージョン『コクのあるスープを好む広東の嗜好にあわせ、うまみとコクのあるゴマ風味のきいた白濁色のチキンスープが特徴です。めんに卵を練り込んだ鶏蛋麺(チータンメン)仕様にしました』というのもなかなか良さそうである。日清食品のニュースリリース内にある各国版チキンラーメンの発売に関する記事の最下部にある『商品概要』を眺めてみると、おなじチキンラーメンでも国によって重量が違うようだが何故だろう?
インスタントラーメンはほとんど食べない私だが、チキンラーメンに限ってはお湯だけ注げばいいという手軽さもあり、時間のないときに一人自宅で食事する際には、ごくたまに利用することがある。『すごく簡単』『ゴミが出ない』という理由から、インスタントラーメンはあまり食べないけど、食べるとすればチキンラーメンという人はけっこう多いのではないだろうか。言うまでもなく。ティーバッグの紅茶をいれるのに等しいごくわずかな時間で準備できるという簡単さが唯一にして最大の美点である。
旨いとも不味いとも思わないが、これと同世代の原始的なインスタントラーメンはとうの昔に淘汰されているのに、チキンラーメンは今なお製造販売されているのは不思議だ。製造者に対しては失礼かもしれないが、究極の簡単さに加えて個性のない凡庸な味ゆえに飽きられることなく、一定の支持を得てきたのかもしれない。
インドものも含めて、全部で7種類もある外国仕様のものをひとつのパッケージにして、チキンラーメン・インターナショナルとして発売すれば、チキンラーメンを長年にわたって何となく食べてきた人たちに『いつもと違う味』で強くアピールするのではないかと思う。しかしながらすべての味を一巡してみると、やはり帰り着くのは長年親しんできた平々凡々たる味・・・ということもあるのかもしれないが。 -
トイレの博物館

デリーにちょっと珍しい博物館があるのをご存知だろうか。Sulabh International Museum of Toiletsというもので、文字どおりトイレの博物館だ。インド各地の便所ばかり取り上げているわけではなく、世界のトイレと公衆衛生の歴史の博物館である。

この博物館は、Sulabh International Social Service OrganizationというNGOが運営するもので、同じ敷地内にある。この団体は、主に排泄行為にかかわる公衆衛生の普及と発展、トイレ清掃にかかわる業務に従事する人々への差別意識解消などを目指すものだ。博物館を通じて世界のトイレの歴史や公衆衛生に関する客観的な視点を説き、理解を広めようという狙いのようである。
屋内の展示部分では、人類の歴史の中で排泄行為がどのようになされていたか、そこからどういう問題が発生してきたのか、ちゃんとしたトイレの出現により、これがどういう具合に解決されてきたのか、といったトイレの存在意義が図版等で解説されている。またトイレに関するウンチク、カラフルな色使いの欧州の貴族用(?)高級トイレの写真なども掲げられており、グローバルなトイレ文化に関する知識を学ぶことができるようになっている。

屋外では、インドで使用されている様々なタイプのトイレの実物が展示されており、設置形態や構造などがわかるようになっている。実際にしゃがんでみたり、その姿をカメラで撮っているオジサンなどもいたが、記念写真としてはあまり格好良くないように思う。

展示物を眺めながら館内を歩いていると、そこに勤務している学芸員の方にこの博物館を紹介するCDをいただいた。コンテンツはホームページ上で公開されているものとほぼ同じもののようである。彼女から勧められて初めて知ったのだが、日本人が書いたトイレに関する優れた本があるとのことだ。英訳されたものが日本国外で販売されているそうだが、日本語の原著は『ヨーロッパ・トイレ博物誌新装版』らしい。
さて、この博物館のロケーションについても簡単に触れておこう。国際空港を横目に見ながら更に西に進んだあたりのドワルカという新興タウンシップ近くのマハーヴィール・エンクレイヴにある。冒頭に記したとおり、Sulabh International Social Service Organizationという団体の施設内に設置されている。道路に面して『×××博物館』と大きな看板が掲げられているわけではないので、ちょっとわかりにくいかもしれない。博物館の定休日は日曜日である。


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メダルに届かず ビワーニーが送り込んだHitman
昨夕、ZEE NEWSを見ていたら、北京オリンピックにボクシングのインド代表として参加しているバンタム級のアキル・クマールの試合の話題で持ちきりだった。画面では今月15日に行なわれた昨年のアマチュアボクシング同級世界チャンピオンのセルゲイ・ヴォダポヤノフを破った試合の映像が繰り返し流れ、ハリヤナー州ロータクに暮らすアキル選手の家族や知人たちの様子なども伝えられていた。
私にとって、観るスポーツとして最も好きなものがボクシングであるため、この選手についてはオリンピックが始まる前からとても気になっていた。ニュース番組がそのままアキル選手の試合の生中継となるようで、拳闘ファンとしてはまさに渡りに船といった具合である。
北京オリンピックに参加したボクサー5人のうち、最もメダルに近いと言われているのがこのアキル・クマール選手だ。準決勝に進出を決めた選手は、彼に加えてジテンダル、ヴィジェンダルの3名で、どれもクマール姓であることから、メディアでは『クマール・トリオ』と呼んだりしているようだ。
アキル選手は、U.P.のファイザーバードの生まれ、その他2名はハリヤナー州のビワーニーの出身である。しかしこの3名ともビワーニーでボクシングのトレーニングを受けてきた。このビワーニーとは、『ボクシングがクリケットよりも人気』と言われる、インドのボクシング界の聖地だそうだ。
アキル選手については『とても優れた選手』ということ以外に何の知識もなかった私だが、先述の昨年のアマチュア世界王者を破った試合の模様が繰り返し流れるのを見て、『確かにメダルに近い選手らしい・・・」と感じた。
軽いフットワークでアウトボクシングをする選手かと思えば、果敢に打ち合いにも出る。上下左右に打ち分ける多彩な攻撃で手数も多く、またディフェンスもしっかりとした選手のようだ。
それに『見た目』が素晴らしくいい。左のガードを腰のあたりまで下げ、獲物の様子をうかがうコブラのような動きの中で鋭いフリッカー・ジャブを繰り出す。敵が飛び込んでくるとマシンガンのような連打で圧倒。80年代から90年代にかけて、プロボクシング界のウェルター級からクルーザー級まで、中・重量級で活躍した『The Hitman』のニックネームで人気を集めたアメリカのデトロイト出身の黒人ボクサー、トーマス・ハーンズを彷彿させるカッコ良さだ。
さて試合開始の時間を迎え、対戦するふたりの選手たちが入場してきた。アキル・クマール選手側のセコンドにはターバンを巻いたスィク教徒トレーナーの姿があり、これまで見慣れたリング風景と違うインドらしさが醸し出されている。
さて肝心の本日の試合のほうはと言えば、モルドバのウェセスラヴ・ゴージャン相手に、初回ラウンド以外はほとんどいいところを見せないままに時間ばかり過ぎていく。前の試合はいったい何だったのか?と思うようなまったく拍子抜けの試合で、特にコメントする気にはなれない。
ポイントでかなりリードされていたアキル選手だが、相手に『さあ、かかってこい』と言わんばかりに大きく両腕を下げての挑発行為を繰り返す。接近戦での打ち合いの中での一発逆転を狙っていたのかもしれないが、ゴージャン選手はそれを相手にもせずに、離れては接近し、打っては離れと着実にヒットを重ねて勝利へ一歩一歩近づいていく。テレビの前にジッとかじりついていたわりには消化不良のまま終わってしまった。
周囲の期待があまりに大きかっただけに、アキル選手にかかる重圧も大きかったのだろう。トリオのうちの1名は北京のリングを去ってしまったが、残るライト・フライ級のジテンダル選手、ミドル級のヴィジェンダル選手の2名にはぜひともメダルを目指して頑張って欲しい。
試合そのものとは関係ないが、ボクシングの聖地ビワーニーの存在が非常に気になる。機会があれば、ぜひ訪問してジムの様子を見学したり、将来の五輪選手を目指す若い選手たちなどの話を聞いたりしてみたいものだと思っている。
Boxer Akhil Kumar crashes out in quarters (The Times of India) -
Namaste Bollywood #14
すでに手にされている方も多いかと思うが、Namaste Bollywoodの第14号が発刊された。今回のトップ記事は、東京六本木のシネマートで『ボリウッド・ベスト』と題して、8月30日からロードショー公開されるKABHI KHUSHI KABHIE GHAM (邦題:家族の四季 愛すれど遠く離れて) KAL HO NAA HO (邦題:たとえ明日が来なくても) DON (邦題:ドン 過去を消された男)、ならびに福岡国際映画祭2008での上映が決まったOM SHANTI OMにまつわるものだ。
言うまでもなく、どれも大作なので、東京でも福岡でも大いに好評をもって迎えられることは間違いないだろう。ただし個人的にちょっと気にかかる部分がないでもない。どの作品をとっても決して不満はないのだが、単に『インド映画好きな人たちの集まり』に終始してしまわないかというところだ。
90年代の日本でちょっとした旋風となった『インド映画ブーム』で、日本人映画ファンたちの間に刷り込まれたある種の固定観念を払拭するだけの広がりや深みを持つ、バラエティに富んだ作品群がやってこないといけないような気がする。ひとつひとつの作品の良し悪しではなく、より違ったタイプの映画が紹介されないといけないように思う。
私たちの間で、日本映画に対する紋切り型の印象、ハリウッド映画に定型化したマンネリ感覚を抱く人はまずいないだろう。もちろん日米ともに映画大国であり、有名無名の数々の監督、役者、裏方の人々が日々活躍しているとともに、私たちは子供のころから多くの異なるテーマ、違った作風の映画に親しんできている。
それがゆえに90年代の日本で突然起きたインド映画ブームについては、最初から非常に危ういものを感じていたのは私だけではないだろう。『歌に踊り』『派手なアクションとハッピーエンド』『庶民にひとときの夢を与える最大の娯楽』などといった表現が一人歩きを始め、『これまでになかった新鮮な映画』というスタンスで、似たような作品が次々に映画館に投入され、一時はかなりの人気を集めるにいたった。 -
怖い病
最近、狂犬病について書かれた本を2冊読んだ。以下の2冊である。

書名:ヒトの狂犬病
著者:高山直秀
出版社:時空出版
ISBN:4-88267-029-1 C0047
書名:狂犬病最侵入
著者:神山恒夫
出版社:地人書館
ISBN:978-4-8052-0798-7 C0047
前者は、『忘れられた死の病』というサブタイトルがついていることが示すとおり、1950年代までは、日本国内でも恐ろしくも身近な病気であった狂犬病だが、『撲滅』してから50年になろうとしている現在となっては、その病に怖さを実体験として知る者が少なくなり、正しい知識と警戒心が欠如している現状に警鐘を鳴らす目的で書かれたもののようだ。
後者は、同様のコンセプトのもとに、いつか日本に狂犬病が再上陸したら・・・という想定で様々なシミュレーションを展開している。日本が「狂犬病のない国」という状況は、かなり危うい土台の上にあることが明らかにされている。
どちらも医学専門家(前者は医師、後者は獣医師)によって書かれた書籍で、日本での狂犬病の歴史、現在の狂犬病事情についての海外での豊富な事例なども含まれている。もっと実際的な部分、つまり感染や発病のメカニズム、狂犬病が疑われる動物から咬まれた際のワクチン接種を含めた処置、各国の狂犬病対策の比較等々がわかりやすく説明してある。
別に私や家族が犬に咬まれたわけではないのだが、たまたま手にとってページをめくってみたら、なかなか興味深い記述が多かったため、一気に読み進むこととなったのだ。ただ『興味深い』といっても、発病したら必ず死に至る怖ろしい病気の話であることから、予備知識として仕入れておきたかった。間違っても楽しい内容なんかではあり得ないことは言うまでもないだろう。
以前、狂犬病にかかった犬の様子、同様にこれを発病した人間の状態を捉えた映像を目にしたことがある。特に後者についてはあまりに残酷かつ悲惨な様子がまぶたに焼き付いて離れない。それでもこれまで私自身には『咬まれたら医者に行って何回かワクチン打ってもらえば大丈夫なんだろう』という程度の知識しかなかった。
イヌ以外にもコウモリなどちょっと意外な動物からの感染例が多いこと、ワクチン接種の失敗例(その結果として発病)は少なくないこと、ワクチンにもいくつかのタイプがあり命に関わる副作用の可能性、そして力価つまり効き目にも相当な差があること、国・地域により用いるワクチンや接種方法にかなり広い違いがあること等々、私のような素人にとってはまさに目からウロコの新鮮な情報が多く、万一の場合のためいい勉強になった。
残念ながら、インドはこの病気で命を落とす人々が毎年およそ3万人という世界一の狂犬病大国でもある。自身の身を守るために、またこの国に関する予備知識の一部・・・といっては言いすぎかもしれないが、こうした本を読んでおくのは意味の無いことではないと私は思う。何しろひとたび発病すれば、確実に、しかもほんの数日以内に死に至るとても危険な病気である。
