東京杉並に眠るボース

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 インドの知人から神奈川県(?)にカーリー寺院があり、インド人、特にベンガル人の参拝客が多いという話を聞いた。それはごく最近できたものではなく、昔からあるお寺なのだという。彼は日本に来て日が浅く地理に疎いため、どのあたりにあるのか要領を得ない。そしてどうやらまた聞きらしく、何か勘違いしているのかもしれない。
 だが仏教とともに日本に入ってきたインドの神様は少なくないので、カーリーの仏教名「大黒天女」を祀ったお寺あるいはそうしたお堂を持つ寺院があり、それが在日インド人善男善女を集めるようになっている、というのならばあり得ない話ではないので、機会を見つけて調べてみたいと思う。
 そんな彼に「インドと縁の深い仏教のお寺がある」と、インド独立の志士チャンドラ・ボースの遺灰が納められている蓮光寺のことを話した。


 インド東部出身の彼によれば「大戦後、ネータージーの生死は不明のはず」とのことで、台北での航空事故死については、「そういう説もある」という認識を持っているそうだ。
 この際、どちらが正しいかなどということはあまり意味のないことだろう。しばしば東アジアの他国から日本に対して、「共通の歴史認識を」などという主張を見聞きすることがあるが、歴史背景、民族、国の事情等を異にする複数の国々が統一された歴史観を持つなどということはあり得ない。それぞれの国々で独自のバイアスがかかった「正史」には、多かれ少なかれ事実とかけ離れた部分を含むからだ。共通認識とは、すなわち声の大きな者の意見を他者に押し付けることに他ならない。
 幸い日印間には、こうした歴史認識にかかわる問題はないのだが、ボースの生死に関しては、両国のスタンスは大きく違う(当のインド国内でも様々なのだが)ようだ。
 とはいえ故郷の偉人に関わることなので大変興味を引かれるらしい。「近々訪れてみる」とのことなので、行きかたを詳しく説明してあげた。
 さてそのお寺、正式には日蓮宗頂光山蓮光寺という。東京都杉並区堀ノ内3丁目30番地にある。最寄駅の丸の内線東高円寺駅から来ると、蚕糸の森公園のちょうど裏側にあたる。
 私も一度訪れたことがあるのだが、想像していたよりもこじんまりとした境内に、ボースの胸像が安置されている。インドの要人もしばしば訪れているのだが、元首相のヴァージペーイー氏も二度ばかり来ており、彼の言葉が石碑に刻まれている。
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मुझे रेंकोजी ढुबारा आकर प्रसन्नता हुई,
जहाँ भारतीय स्वतंत्रता संग्राम के महान सेनानी नेताजी सुभाष चन्द्र बोस की स्मृतियाँ सुरक्षित हैंインドの偉大な自由の闘士ネタジースバッシュチャンドラボース
の霊を安置している蓮光寺を再び訪れることができてうれしく思います。
(ともに原文のまま)
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 歴史への認識はさておき、この蓮光寺にネータージーの遺灰が眠っているということはまぎれもない「事実」であると私は信じている。
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チャンドラ・ボース関係リンク
スバーシュ・チャンドラ・ボース (Wikipedia)
ネタジと日本人(スバス・チャンドラ・ボース・アカデミー)
杉並区の蓮光寺に眠り続けるボースの遺骨
インドで再び熱く語られるボース

「東京杉並に眠るボース」への5件のフィードバック

  1.  神奈川県にカーリー寺院の話、川を越えたらすぐ神奈川県なのでけっこ〜興味深いです!
    もしもホントにあるなら、日本で未だ知られざる隠れインドスポット?
    一種の都市伝説(?)だとしても、なかなかおもしろいですね。

  2. 生捨さん、
    カーリー寺院の謎については、いまのところ事実なのか、ただのカン違いか不明ですが、興味を引かれるところです。話をしていた本人に会ったら、もっと詳しくたずねておきます。
    あとタイピングミス(粗雑で恥ずかしいかぎりです)の指摘ありがとうございました。

  3.  「神奈川県にあるカーリー寺院」は、やはり知り合いのインド人のカン違いでした。実際にそこを訪れたベンガル人の話では、逗子にある日本ヴェーダンタ協会(http://www.vedanta.jp/index.html)
    で、11月1日にカーリー・プージャーが行なわれ、ここしばらくカーリーの祭壇がしつらえてあるとのこと。ともあれ在日のインド・バングラデシュ両国のヒンドウーの人々が多数集まったそうです。

  4. 事実ってなんだろう?
    信じることではないと思う。
    最近の動きではボース氏がロシアに秘密ルートで行っていたとの説もありますが台湾も事故なんでも起こっていなかったと言っている。
    難しい問題ですが鍵はロシア側にある。でも残念ながら事実が明かしたらインド現与党の多数の関係者に悪い影響が出そうですが”事実”はそう簡単に出てこないと思う。
    マニッシュ

  5. ボース氏の墜落事故は事実です。私は当日、台北市内にはいなかった。三峡・大埔の疎開学園にいた。それで直接の見聞はしていません。私のいとこの女学生(宮崎在住)は動員されて墜落現場に四散したインド国民軍の軍資金であるダイヤモンド拾いをさせられています。こういう目撃者はいまも大勢生存しているはずです。

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