ラクダを駆る子供たち

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 ご存知のとおりUAEではラクダレースがとても盛んだ。テレビで中継されたり新聞に結果が大きく報道されたりするなど国民的な娯楽だ。レースで入賞することは、オーナーにとって大きな名誉であるとともに、現金以外にも高級乗用車、四輪駆動車その他の財産をもたらしてくれる。
 伝統的なラクダレースを担ってきたのはもちろんアラビア人たちであったが、現在騎手のほとんどが外国人、しかも南アジア出身の子供たちなのだという。「体重が軽いこと」と、外国人である彼らの「低賃金」に加えて、競技が「危険であること」がその理由だ。レース中の事故や他の騎手(の子供たち)とのケンカなどにより、命を落とす者が後を絶たないのだというから胸の痛む話である。
 子供たちは親の意思でブローカーに託される場合もあれば、組織的な誘拐により連れ去られることもある。産油国を出入りする労働者その他の南アジア人の子供に偽装して入国して騎手としての訓練を施される。UAEでおよそ3000人の子供たちがラクダレースにかかわっており、その中のおよそ7割から8割がパキスタン出身だという。
 UAEで1993年から子供を騎手として使うことを公には禁止した後も、この状態はそのまま続いてきており、今年の5月になってこの問題に真剣に取り組むべく当局が重い腰を上げたらしい。今後は16才以下および体重45キロ以下の者がラクダレースの騎手になることはできなくなるとともに、「ロボット騎手」の導入も検討されている。
 このほど騎手として働かされていたパキスタンの子供たち22名が国連の仲介により帰国することができた。ほとんどが貧困層の出身で、年齢わずか3歳の幼児も含まれるというほど、ほんの小さな頃に連れられていくケースが多いためか、帰国してからも両親を探り当てるために血液検査等が必要になるという。
 一連の動きは歓迎すべきことではあるが、問題は受け入れ側だけではなく、送り出す国々にもあることはもちろんだ。UAEのラクダレースに限らず、南アジアから湾岸産油国へ同様の手口で送り出される南アジアの子供たちがいるのはよく知られているところだ。こうした悪辣な「幼児移民」を生む背景が消えてなくなるわけではない。騎手がダメなら次は何のためにどこに送り込まれることになるのか、世間は注視していく必要がある。
Repatriated child jockeys return (BBC South Asia)

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