サーサンギルの野生動物保護区へ3 

サーサンでの宿

人の出入りが頻繁な休日であるため、宿の主のニティンさんの携帯はしょっちゅう鳴りっぱなしで、宿泊の人々の対応にも追われていた。家族経営なので仕方ないのだが、あまりに忙しそうである。言葉は悪いがかなりがさつな感じの人であるが、人柄は悪くないようだ。

同じ宿に泊まっている人たちが、「オンライン予約したのか?」と尋ねてくる。この家族連れもそうであったが、他にもネットで予約したという人たちが何人もいるようだ。こんな簡素な宿がそうしたことに対応しているとは知らなかったのだが、今はそういう時代なっているらしい。

ちょうど西洋人の二人連れがサファリにいくとのことで相乗りさせてもらうことになった。サファリの料金はジープ1台でいくらという設定になっていて決して安くないこと、外国人料金があることなどから、運が良かったと言える。

出発!

宿で食事を済ませてからしばらくサファリの時間まで待つ。午後3時になってから出発だ。町の賑やかなところから少し外れたところに国立公園の入口があり、そこからジープに乗ってスタート。西洋人の二人連れとは、フランス人の還暦あたりの年齢の女性ふたり。フランス語を話すガイドが同乗しており、国から予約したツアーでインドを訪れているとのことだ。彼女たちのインド人ガイドはフランス語が流暢な人で、どこで学んだかといえば、ポンディチェリーで習ったとのこと。フランスに留学その他で住んでいたわけではないそうだ。

休日なので家族連れが多い

国立公園に入ってからしばらくは、ここに暮らしている人たちがあり、そうした人たちは自由に行き来できる部分となっている。そこからしばらく進むと左手には鉄道の線路が走っている。夜間は通行止めになっているとのことだが。おそらく国立公園が夜間は閉鎖されるからなのだろう。

かなりクルマの往来がある

サファリに参加してからわかったが、園内をジープがまるでコンボイを組んで走るような状態になってしまっている。これではライオンを見ることができなくても仕方ない。ここはピークの時期を外して訪れるべきだろう。ライオンを見ることができるかどうかが、最大の関心事であるが、あまりに多いジープの行き来を見て自信がなくなってくる。こんなに忙しい状態だとライオンは道になっているところの近くに出てくるだろうか。

うっそうとしたジャングル、少し開けた景色になっている部分、川の流れといったある程度変化のある景色の中を進んでいくと、川の部分にはクロコダイルがいることを示す看板がある。どういうところにライオンがいたりするのかわからないが、すぐそこから木が繁っていて見えないことから、ライオンのほうはこちらを眺めていたりしたのかもしれない。乾季の終わりの酷暑期には、しばしばライオンたちが水場に出てくるのを目撃することができるという。

だが雨季などはどうなのだろうか。雨が降るとダートは沼地のようになってしまうところがあることだろう。まさにそれがゆえに四駆のジープということになるのかもしれないが。

公園内には八つのルートがあり、そのときどきでライオンがいたという情報で、ルートを選択するのだという。かなり広い国立公園内で、道路から見えるところはごく限られている。また木が繁っているため、比較的近くにライオンがいても見えないこともあろうことは想像に難くない。

園内には警備の人たちが詰めているスポットがある。彼らはバイクで来ていて、ちゃんとした建物の詰所もなく、普通に道端に立っていたり、椅子に座っていたりする。危険はないのか、事故はないのかと少々気になるところである。

この野生動物簿国内の整備関係の仕事をする作業員とおぼしき人たちもその辺で倒木に腰かけていたりするし、彼らの子供あるいは保護区内の集落の子供と思われる幼児たちの姿もある。こんなで大丈夫なのだろうか?と思うとともに、それほどライオンに出会うチャンスは少ないのかも?と悲観的にもなったりする。

クジャクの背後に見えるのは集落の家屋

国立公園に入ってからすぐのところに集落があるのはまだいいとしても、一番奥のエリアにも小さな集落があり、四世帯が暮らしているというのにも驚いた。ライオンが近くに出没するところであるとのことだ。飼育している水牛の乳をとるのが生業で、町に売りに出て現金収入を得ているのだとか。かなり危険な生活環境のようだが、百獣の王と人間の不思議な共存である。

この日、結局のところライオンを見ることはできなかった。目にすることが出来たのはサルやシカ、ガゼルの類の草食動物たち、イーグル、フクロウ、クジャク等の鳥類である。ここまで来なくても田舎ではよく目にすることができる動物たち。明日の朝にもう一度トライしてみるのもいいかもしれないが、時間が限られているので諦めることにする。

足跡はライオンではなくヒョウのものなのだとか

せっかく近くまで来ておいて、サーサンギルを訪れなかった前回のグジャラート訪問時には残念な思いをしたのだが、今回はここまで足を伸ばしたのだからずいぶん気分は違う。こちらはライオンの存在に気が付かなくても、ライオンはこちらを見ていた、と思うことにする。

ライオンはどこかから私たちを眺めていたかも?

〈続く〉

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