自国内の「無国籍者」に他国籍を買うクウェート

インドとは関係のない話で恐縮であるが、こんなニュースが目に付いた。

無国籍住民に大量の外国籍を買うクウェートの真意 (ニューズウィーク)

クウェートにて、昔からその土地に住み着いていたベドウィンの子孫にコモロ連合の国籍を買い与えており、コモロ連合はすでにそうした人々に対してパスポートを発行しており、こうした措置に対して人権団体が反発しているとのこと。

確かに、記事中にあるとおり、無国籍であった人々の立場に公的な位置づけがなされることにより、それに応じた行政サービスを含めた措置が可能となるという面はあるのだろう。

しかしながらその結果として、彼らが代々居住してきた(国境のこちら側と外側とを行き来しながら暮らしていたにしても)土地の市民ではないということが明確となることにより、つまり「外国人」となることにより、クウェート国内で暮らしていくには、当局の発行する在留資格が与えられることにより可能となるわけである。

当然のことながら、クウェートで「自国民」と同じ権利を有することにはならず、様々な不利益が容易に想像できる。また、在留資格が延長できなかったり、失効するようなことがあったりすれば、「外国人」である以上、国外に退去しなくてはならなくなる。

そうした人々に対して、まず在留資格を与える時点で選別がなされるということも可能となり、無事に在留資格が与えられたにしても、個々に対して恣意的な対応や措置、つまり国外への退去強制という手段がなされるのであろうし、それを実行できるようにするというのがこうした政策の意図であろう、というのがこの記事の意味するところであるが、まさにそれ以外の目的は考えにくい。

そのコモロ連合とはどのような国かといえば、アフリカ東部のマダガスカル近くにある島嶼部から成る小国で、概要についてはこちらをご参照願いたい。

コモロ連合基礎データ(外務省)

海洋交易を通じてアラブ世界との交流が盛んであった地域だけに、住民の大半がイスラーム教徒であり、アラブ系住民も多い国ではある。

クウェートに居住しながらも、こうした国の籍を与えられた人々に対して、「本国」から必要な庇護が与えられるとは考えにくく、仮に住み慣れた国での在留が認められず、縁もゆかりもない「本国への送還」となった場合、大変な苦難が待ち受けていることは言うまでもない。

これはクウェート国内に居住する無国籍の人々に対する地位保証の措置ではなく、明らかに金満国家による棄民政策である。

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