写真展「藤原新也の聖地」

 3月18日(木)から、大丸ミュージアム・東京にて、藤原新也の写真展が開催されている。
「藤原新也の聖地」ポスターより
 彼の初期の代表作『インド放浪』『チベット放浪』、続いて『全東洋街道』が発売された時代には、こうした作品に触発され長い旅に出た人が少なくなかったそうだし、いまでもインドを含めたユーラシア大陸横断の旅をする若者たちは、一度はどこかで読んでいることだろう。
 「あの仰々しい文章はちょっと…」という声も耳にするが、遠い忘却の彼方を眺めているかのような写真の作風には、誰もがひきつけられてしまうことだろう。
 私が彼の作品に触れたのは『インド放浪』が初めてだった。「こういう風にも撮れるのか」と写真表現の豊かさに興味を惹かれ、未だ見ぬインドという国に憧れを抱くきっかけにもなった。作品によっては極度に露出アンダーであったり、目をこすりたくなるほどアウトフォーカスだったりするが、観る者に対して強い主張を持って訴えかけてくるものがある。物事を直視するだけでは本質が見えてこないこともある、ということだろうか。
 ガンジス河岸で野犬たちに脚を食いちぎられる遺体を見て「人間は犬に食われるほど自由だ」と表現するシニカルな姿勢は、彼の作品に共通したカラーであるように思う。
 出展されている作品のモチーフは風景や人物のみならず、昆虫、植物、女性の写真とバリエーション豊か。カメラのファインダーを通した藤原新也ワールドの多彩さをあらためて感じることができる。
 なお、会期は3月30日(火)まで。この後、京都の大丸ミュージアムでも同展が開催されるそうだ。(京都は5月13日(木)〜5月25日(火)の開催)

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