日本で学ぶ インドを学ぶ

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 現在、アメリカで学ぶ外国人留学生の数は約58万人。そのうちインド人学生は6万7千人近く、全体の11.5%と最も多いのだという。(以下、中国、韓国、日本と続く)
 一方、日本に来ている約10万人の留学生たちの中で、インド人留学生はどの程度を占めているのかというと……わずか264人。全体からみても、たったの0.2%しかいないのである。(中国人留学生は70,814人、全体の67.4%)
 異国へ留学するにあたり、新しい言葉を学ばなければならないということは大きな壁になるに違いない。インド人留学生の多くは、語学や地域学のような「日本を学ぶ」学問ではなく、理系の専門分野を志向するため、わざわざ日本語を習得するなんて、時間の上でもコストの面でもムダが多いのだろう。
 もちろん理系大学院の中には英語だけで研究できるコースもある。とはいえ、ごく例外的なものを挙げて「日本は英語で学べる国」だとは全面展開できない。


 インドから日本へ来る留学生たちは、他国でも学べるユニバーサルな学問をあえて「日本で学ぶ」ことになる。
 費用のかかる先進国で学ぶということは、高い学問水準の中で学位を目指すということ。大学院での学位取得の難易は重要な問題だが、苦労して日本で取得した学位が母国でどの程度評価されるかということは、それ以上に重要な問題である。手間やコスト面も含め、日本が勉強の場として魅力的かどうか。その結果がこの「0.2%」という数字になって表れているのだろう。
 日本のインド人留学生たちは理系に特化しているため、単純に比較はできないが、日本への留学生としてはごく少数派のイギリス、フランス、スウェーデンといった西欧の国ぐによりも、インド人学生のほうがはるかに少ないのはずいぶん寂しい。
 南アジアから日本に来る留学生たちの中では、バングラデシュからの留学生が974人(0.9%)、スリランカからは609人(0.6%)。彼らも多くが理系の留学生たちだが、私費学生はごくわずかで、大半は日本の文部科学省奨学金をもらう国費留学生。留学する側にとって資金援助は魅力的でも、純粋に「日本が留学先として人気がある」というわけではなさそうだ。
 逆のケースはどうだろうか。インドには世界各国からの留学生が、実にさまざまな分野で学んでいる。特に第三世界からインドの理系大学や大学院に進む者は多い。しかし、日本人留学生となると、語学をふくめ、その地域を専門に「インドを学ぶ」学生たちが大半を占めている。一般の人びとから見るとマニアックな世界である。
 語学留学生といっても、中国のそれとは比べようもない。ヒンディー語は、世界の話者人口では英語・中国語に次いで第3位、母語話者人口では中国語・英語・スペイン語に次いで第4位の大言語だが、タイ語やベトナム語のように現地ビジネスで必須の言葉というわけでもない。学習・体得する魅力がチョット弱いようだ。
 旅行先として人気があっても、インドの具体的な学問分野に関心のない者にとっては、留学先としてインドを選択する理由は見当たらないだろう。
 「留学先」として日印間にはまだまだ距離があるように思うのだが、近ごろは「インドIT短期留学」という新しい留学スタイルも現れている。期間はわずか5カ月間。もちろん学位が取れるコースではないのだが、他国でも学ぶことのできる分野をあえて「インドで学ぶ」ことが、今後ひとつの流れになり得るのだろうか。
 これは一般の日本人学生たちにとって、インドが「勉学の場として魅力的かどうか」をはかることにもなる。

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