『デジタル一眼』基準のコンパクトデジカメ

シグマDP1
例によって『インドでどうだろう?このカメラ』ということになるのだが、非常に期待されるモデルがついに発表となった。(発売日未定)
昨年秋にドイツで開催された写真・映像関係の総合見本市フォトキナで参考出品されていたシグマのコンパクトデジカメDP1だ。
同様に参考出品という形で展示されていたデジタル一眼レフSD14は今年3月に実機が発売されたものの、前者はその後どうなっているのか気になっていた。しかしここにきてようやく同社のDP1スペシャルサイトが出来上がり、PDFカタログのダウンロード配布を開始するなど、発売に向けて着々と準備が進んでいる中、果たして真打登場なるか?と期待される一台だ。
『一眼レフ基準』を打ち出すこのカメラの最大の売りにして、ユーザー側にとっても最大の注目点は、このモデルに搭載されるセンサーだ。この類のデジカメとしては世界で初めてAPS-CサイズのCMOSが採用されることになる。一般的なコンパクトデジカメのセンサー、1/1.8型ないしは1/2.5型のそれぞれ7倍、12倍に相当する非常に大きなものだ。激しい画素数競争が繰り広げられてきたデジカメの世界、1000万画素、1200万画素といった表記をよく見かけるが、現在の高画素時代、この数字における多少の違いはあまり意味がない。それよりもレンズの光学性能やカメラとしてのハード面およびソフト面の機能性のほうが大切だ。
しかしこの『画素数』というもの、あくまでも表面積1インチ当たりにどれくらいの密度があるかということに他ならない。同じサイズの印画紙に出力する場合、当然のことながらフィルムに当たるセンサーの表面積が大きなほうが有利だ。そのサイズに7倍、12倍もの差があるとすれば、ことセンサーの部分に限ればその優劣は火を見るよりも明らかといったところだろう。加えてこのセンサーはFOVEON X3ダイレクトイメージセンサーというちょっと革新的なフルカラーセンサーであるとされる。


DP1の魅力はでっかいセンサー。これによって大きな印画紙に出力する際有利であることはもちろんだが、ユーザーにとって最大のメリットとはこれまでコンパクトデジカメでは画面が荒れてしまい使いものにならなかったISO400以上の高感度設定が実用域に入ってくることだろう。そのため自然光でそのまま室内での撮影が可能となるし、夕方や夜間などでも手持ちで撮影できるシチュエーションが大きく広がる。APS-Cサイズのセンサー搭載のコンパクトデジカメを一度手にしたらもう手放せないのではないだろうか。
28mm単焦点といえば今までのところGR-Digitalしか存在せず、事実上リコーの独占市場である。優れたレンズによる高画質をアピールする同機に対して、従来方に比べて圧倒的に有利な大型センサーを盾にして乗り込むことになる。最大の利点はセンサーとはいえ、DP1のレンズが劣るということはないだろう。シグマ自体が各社のマウントに対応する多彩なレンズを製造する専門メーカーであり、こうした『唯一無二』な新作を世に送り出そうとしている以上、秀逸なものを作り上げてくるに違いない。露出制御方式についてはプログラムAE、絞り優先AE、マニュアル、オートに加えて、広角単焦点のカメラであまり使用する頻度は高くないように思うが、シャッター優先AEが準備されている点はGR-Digitalと異なる。また1/4000秒とコンパクトデジカメとしては異例なまでの高速シャッターが可能なところも『一眼レフ基準』ならではのことだ。そのくせボディサイズはGR-Digital並みで重量も240g(電池を除く)と小型軽量なのもいい。
スペックをチラリと眺めてみるといいことずくめみたいに思えるが、とても気になることが一点。レンズの開放値がF4(現行GR-DigitalはF2.4)と非常に暗いことだ。通常、描写の良さとともにレンズの明るさが単焦点レンズのメリットだ。なにぶん世界初のAPS-Cサイズのセンサー搭載のコンパクトデジカメということもあり、何か機構的に仕方なかったのかもしれないが、この大切な部分を削いでしまった単焦点コンパクトデジカメにどれほどの魅力を感じるのか疑問である。『レンズが暗い分、感度を上げて補ってくれ』というのではあんまりだ。このままで発売されるとすれば『一眼レフ基準』と大上段に構えながらも大きなスキを残してしまった。事実これだけでかなりネガティヴな先入観を与えてしまうのではないだろうか。ともあれどんな具合なのか実機に触れてみるのが楽しみである。
本来、写真を楽しむということは道具にドップリ依存するものではなく、手にしたカメラの機能・性能の中で自分なりの工夫や試みを重ねていくことにあると思う。しかしカメラがデジタルの時代に入ってからというもの、メカニズムそのものの進化があまりに目まぐるしく、最新鋭のモデルも2〜3年経つかどうかといったところで市場に出回るモデルの水準が大きく上がってしまい愛機がすぐに陳腐化してしまう。そのため次から次へと新しいモノに目移りしてしまうのは問題だ。
しかしこうした『唯一無二』なモデルが出てくるとどうも気になって仕方ないのは、現在市場に出回るカメラに対してどこか根本的な不満があるからなのではなかろうか。いくら優れたモノに思えても、次期モデル開発のために常にどこか不備な部分をワザと残してあるように感じるのだ。このあたりで『10年使える』とは言わずとも、5年くらいは飽きがこない魅力的なカメラが出てきてくれるといいのだが。

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