買ってはいけない??

Coca Cola
 90年代初頭にペプシコーラがインド市場に進出、続いてコカコーラ両社が参入(同社は1977年に撤退するまでインドで操業していたため正確には再参入)したことにより、それ以前のインドに君臨していた二大コーラCampa ColaThumbs Up(こちらはコカコーラに吸収されて同社ブランドのひとつとなっている)による支配体制があっけなく崩壊した。
 いまでは外資系の両社がインドのソフトドリンク市場の8割のシェアを占めるようになっている。外来のソフトドリンクが売り上げを大幅に伸ばしたからだけではない。コカコーラはThumbs Upだけではなく人気商品MaazaLimcaさえも傘下に収めてしまったため、地場ブランドで外資系ソフトドリンクに対抗できる商品がほぼ消滅してしまったのも一因だ。
 3年前のちょうど今ごろ、これらアメリカ系企業の製品をはじめ、地元資本のメーカーによる清涼飲料水やミネラルウォーターの中にEU基準の30〜36倍も上回る殺虫剤(農薬)成分が含まれているらしいとのニュースがメディア等によって取り上げられて問題になっていた。
 今年もつい先日(8月2日)にデリーにある非政府組織Centre for Science and Environment (CSE) が発表したレポートを受けて、インド国内で販売されるソフトドリンクの安全性について波紋が広がっている。
 CSEによれば、やはり殺虫剤(農薬)成分が3〜5種類程度検出されたとのことで、その濃度はインド政府の定めるところの基準を24倍も上回っているといい、これらの製品を長期間にわたって消費することによりガンの発生、神経や免疫システムへの悪影響、奇形児の発生などが危惧されると警告している。
 これを受けてラージャスターン、グジャラート、マディヤ・プラデーシュ、チャッティースガルの四州では学校や役所での販売を禁止することになった。続いてアーンドラ・プラデーシュでは公立病院での販売を禁止、カルナータカでは学校や病院から半径100メートル以内の地域での販売を禁止といった措置を打ち出したが、ケララ州ではコカコーラ・ペプシコーラ製品の製造と販売を全面禁止という厳しい態度に出ることになる。
 もとより両社が製造過程で意図的に有害物質を混入させているわけではなく、清涼飲料水を製造するための主原料となる水の源泉が汚染されていることが原因であるとみられている。その意味では外資・地場資本を問わずソフトドリンク製造業(加えてミネラルウォーターは言うに及ばずビール醸造なども)そのものが成り立たなくなるという声も取りざたされていたのは3年前のことである。あのときは何となく政治的に幕引きがなされてしまったが、今回の『リターンマッチ』ではどういう決着がつくのか注目したい。
 一連の騒ぎは消費者問題であるとともにさらに大きな環境問題でもある。各メーカーが高いコストと引き換えに『安全である』とされる源泉から取水して製造した飲料類だ。これらに基準を大きく上回る農薬成分が含まれているとするならば、蛇口をひねれば出てくる水道水はどうなるのだろう?
 素人考えに過ぎないが、残留農薬の浸透によりこうした水源までが汚染されてしまう土壌で生産されたインド産の野菜、米、小麦などの農作物はことさら危険ということになるのではなかろうか?という疑問を抱くのは私だけではないだろう。なんだか『外資ソフトドリンク叩き』をしている場合ではないような気がする。
Pepsi
State bans Coke, Pepsi (Kaumudi Online)
Indian state bans Pepsi and Coke (BBC South Asia)
Soft Drinks are Completely Safe (Coca-Cola India)

「買ってはいけない??」への2件のフィードバック

  1. この件、新聞で読みました。きっとソフトドリンクに限った事ではない気がします。

  2. そうですね。
    そしてインドに限ったことでもないように思います。今後同じような話が他国からも出てきそうな予感。

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