飛行機に立ち乗り?

ローコストを売りにする新興航空会社の伸長著しいアジア各地。日本はその波にすっかり乗り遅れた感がある。インドでも2000年代に入ってから航空会社の数が増え、多くはチケットのネット販売中心の低価格のビジネスモデルで既存市場に切り込む、あるいは新規路線を開拓するキャリアだ。 

結果としてフライト数の増加は国内の空港等をはじめとする関係施設の整備を促し、航空券が低廉化することにより、経済成長に伴う可処分所得増と相まって、飛行機を利用できる層が大幅に増えることとなった。 

新興航空会社の中でも安易な価格競争のみに走ることなく、競合他社との差別化を明確に打ち出して自社をブランド化するキングフィッシャーのような成功例もある。近ごろの同社は国際線への進出も加速させている。 

それでもアジアにおける新興航空会社の華やかな主戦場はインドであるとはまだまだ言えない。やはりこの流れをリードしているのはインドの東、アセアン諸国で『多国籍化』しているエア・アジアならびにその関連会社を筆頭とする格安航空各社だろう。すでに域内で国境を越えて格安航空会社がシームレスに行き来するシステムが出来上がっている。 

シンガポールを本拠地とするタイガー・エアウェイズは、すでにバンガロール、チェンナイ、トリバンドラム、テイルチラッパリといったインドの都市に就航しているが、飛行時間が1時間程度の短いもの(そのためインド便は対象外)に限り立ち席の導入を検討している。これにより乗客の支払う運賃は十数米ドル程度になる見込みだ。 

この『立ち席導入検討』の口火を切ったのはアイルランドの航空会社ライアン・エアーだが、それに先立ち体重の重い乗客から追加料金徴収、トイレ使用の有料化などといった提案により物議を醸してきた。 

飛行機の立ち席が具体的にどういうものかについては、下記リンク先の動画をご参照願いたい。もちろん何もないフロアーに立つわけではなく、乗客が身体を固定する装置が用意される。それでも離陸の際にはちょっとスリリングかもしれない。 

Plans for new standing area on Ryanair flights (Youtube)

目下、安全面からの検討の余地があるようだが、立ち席の装置のスタンダードが確立されれば、この流れは他国に間もなく波及することだろう。インドにおいても飛行時間が1時間前後あるいはそれ以下のセクターは多いため、他国での動きを注視しつつ導入を考えているところもすでにあるのではないかと思う。 

実は90年代初めに飛行機の『立ち席』を見たことがある。カンボジアの国内線でシェムレアプからプノンペンに戻る際、なぜか乗客のうちの1名が席からあぶれてしまった。驚いたことに、客室乗務員は何食わぬ顔で、乗客に『通路に座るように』と指示していた。離陸の際、彼は緊張した面持ちで腰を下して右側の席の手すりにしがみついていた。水平飛行に入ってから目的地が近づいて着陸態勢に入るまで、その人物は通路に立たされていた。 

当時のカンボジアは、総選挙のために国連が平和維持活動を行っていた時期であり、あらゆる面において現在とはずいぶん違う異なるものがあった。 

隣の乗客と『こんなの初めて見たなぁ!』とビックリしながら話し合ったものだが、運賃の低廉化とともに近い将来には『立ち席』がごく当たり前の風景になりつつあるのだろうか。

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