旅行に最適な一本!

シグマ
 先日は『旅行仕様の楽しいカメラは?』で、旅先で手軽かつ便利なカメラについて考えてみた。今回は旅先にレンズを持っていくなら何だろうかと探ってみることにする。もちろん身軽であることを大前提である。あえて一本でだけ持参するならば何か、最も便利なものはどれだろうか。
 汎用性という部分を重視すれば、画質に優る単焦点レンズよりもズームレンズということになる。このところコンパクトデジタルカメラの高級機種購買層がデジタル一眼レフ汎用機種にシフトしていることが示すとおり、主要各社ともこのタイプのカメラは高級なものからエコノミーなタイプまで、ほぼ出揃ったようだ。それだけに数年前までは『デジタル一眼専用設計』(35mmサイズよりひと回り小さいAPS-Cサイズのセンサーを持つカメラ用)なんてコトバが新鮮に響いたものだが、いまやこの手の様々なタイプのレンズが大量に市場に出回るようになっている。
 銀塩カメラやデジタル一眼レフでも最高級クラスで『フルサイズ』つまり35mmサイズのセンサーを装備したものよりも画角が狭くなる。そのため焦点距離の1.5〜1.6倍くらいの描画となってしまうため、従来使われていたレンズを装着すると望遠側に有利だが広角側が弱いなんて言われていたのも今や昔。 APS-C自体の画角に合わせた規格のレンズが各社から続々出ているため、もはやそんなことを口にする人はいなくなった。
 しかしこの『デジタル専用』レンズはフルサイズのセンサーを持つカメラで使用すると、元来の画角の違いから周辺がケラれてしまうため使えない。そのため昨年発売になったキヤノンの5Dの例に見るように、フルサイズのデジタル一眼レフが次第に低価格化してきたら、それまでに買い揃えたAPS-C用レンズを見捨てて飛び着くか、それとも高級機はフルサイズ、汎用から中級機クラスはAPS-Cといった棲み分けが今後も続いていくのか、気になる人は少なくないだろう。
 ともあれ一眼レフレンズとしては手頃な価格帯かつ汎用性の高いタイプの中で魅力的なレンズはいろいろある。シグマの30mm F.1.4 EX DC HSM は、35mm換算でほぼ従来の標準レンズに相当する画角だ。開放値がとても明るく描写も美しい優秀なレンズである。普段、便利だからとズームレンズばかり使っている私などは、このレンズを手にするとあらためて単焦点のレンズって違うなあ・・・と感心してしまう。
 ズームレンズではタムロンのベストセラーAF28-300mm Super Zoom F/3.8-5.6 Aspherical XR [IF] MACROはデジタル対応のDi仕様となり相変わらずの人気らしい。だがこれでは広角側が不足して困るではないか・・・と思っていたら、2004年に出たシグマの18-125mm F3.5-5.6 DCは大きな反響を呼んだ。
 やっぱりこういうレンズを待っていた人は多かったのだ。何しろこういうカメラは重くて大きい。持たなくてはならない荷物は他にもある。『どれか一本だけ付けて出かけよう』となれば、広角から望遠までひとつでカバーできるものがあればありがたい。このタイプのレンズ、続く2005年には同じシグマから望遠側の焦点域を大幅に伸ばした18-200mm F3.5-6.3DC、そして同社のライバルであるタムロンからはAF 18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II LD が発売となり、『これは便利だ』と飛びついた人は多いのではないかと思う。年末近くなってからはニコンからAF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G (IF)という同じ焦点域ながらも手振れ補正機能、しかもその効果たるや4段分というからスゴイ。このテのレンズの真打登場といったところだろうか。個人的にはニコンを所持していないので使うことができない。購入を検討するわけにもいかないのは残念である。
 でもよくよく思えば、ただ旅行するだけで200?の焦点域、35mmカメラ換算でなんと320mm!なんていう超望遠を利用することなんてほとんどないと思う。
 従来、一眼レフの交換レンズにおける手振れ補正機能といえば、焦点域が特に長い超望遠レンズによく付いているが、それ以外でISつまり手振れ補正が付いたものは今のところあまりなかった。私自身は2004年に発売されたキヤノンのEF-S 17-85mm F4-5.6 IS USMを使ってみてとても感心した。開放値がやや暗いのは気になるが、三段分の補正機能は、特に薄暗い朝夕の手持ちで撮る際、あるいは屋内での自然光での撮影など、旅先での大きなアドバンテージであろう。テレ端は85mmだが35mmカメラ換算で136mm。このくらいあれば充分だとは思う。
 超広角ズームも各社からいろいろ出ていて面白い。場合によってややエキセントリックな画となるかもしれないが、キヤノンのEF-S10-22mm F3.5-4.5 USMは非常に重宝かつ楽しいレンズだ。つまり従来の35mm銀塩カメラに換算すれば、16mm〜35mm程度に相当するのだ。16mm!というややムチャな画角で撮っても歪みは想像していたよりもずいぶん少なく、一見マトモな絵に見えてしまうのがうれしい。胸のすくような広がりを写せるし、あるいはスペースの関係で後方に引くことができないところでも非常に便利である。試しに猫の額ほどの中庭しかない(失礼!)東京代々木上原の東京ジャミーで一枚撮ってみた。もちろん10mm(35mm銀塩換算で16mm)の広角端を使用した。ここを訪れたことのある方ならば、このレンズの効果のほどはお判りいただけると思う。
東京ジャーミー
 ぜひバッグの中に常時放り込んでおきたい一本ではあるが、やや特殊なこのレンズでなんでもかんでも撮るわけにはもちろんいかない。
 また出かけた先でブツ撮りもやってみたい。するとちゃんとしたマクロレンズも欲しくなるのだが、こちらもやはり必要に応じてのワンポイント起用になるはずだから、『これ一本で』の候補にはなりえない。欲しいものすべてをうまく掛け合わせたものはないものだろうか・・・。
 そうした中で、今年2月に出たシグマのレンズはとても気になっている。17-70mm F2.8-4.5 DC MACROは、『被写体に寄れるデジタル専用大口径標準ズームレンズ』とのこと。最短撮影距離はズーム全域で20cmだそうだ。コンパクトデジカメと違って一眼レフの場合、この距離とは銀塩カメラのフィルム面に相当するセンサー表面からの距離なので、実際のワーキングディスタンスはわずか3cmほどになってしまうのだからスゴイ。被写体にレンズがカチンとぶつかりそうなくらい接近できるのである。ウェブ上で作例や製品レビューなどを見てみると、なかなか評判が良いらしい。
 35mm換算で27mmから112mmほど。望遠域はやや弱いとはいえ、もともと銀塩時代は今のデジタル一眼レンズみたいな超高倍率なものはなかったし、このくらいが最も実用的ではないかと思う。ズームレンズとしてはかなり明るいF2.8というのもうれしい。しかも本格的なマクロ機能付きとくれば、すぐにでも飛びつきたくなってしまう。これならば特に他のレンズを携行しなくても不便は感じそうにないし、埃っぽいインドでレンズ交換の際、センサーに向かってドカドカと大小のゴミが飛び込んできて付着するのに悩まされなくて済みそうだ。
 あれこれ考えていると私自身が買う気に満ちてきてしまった。人それぞれ写真を撮る目的は違うし、好みや考え方だっていろいろだろう。あくまでも私個人の独断であり、しかも性急すぎるかもしれないが、このレンズこそ現在『インド旅行に最適な一本!』と言い切ってしまおう。

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