スーチー氏とNLD

先のミャンマー総選挙で勝利し、平和裏な政権交代により、与党となるNLD (National League for Democracy)。本来ならば党首のアウンサンスーチー氏が大統領に就任すべきところ、ご存知のとおり不条理な憲法規定により、子息が英国籍であるため資格がないことになるため、「代役」として腹心が大統領候補となった。

ミャンマー スー・チー氏側近が大統領就任か (NHK)

期待値があまりに大きいこと、同様に国外からのそれもまた過大であることから、スタートからかなり厳しいものがあるように思われる。軍政を継いだ前政権が経済、外交、民生の各分野で、予想外にいい仕事をしてしまったことも更にハードルを上げている。

政権への批判者として高い支持を集めた人物が必ずしも為政者として有能なのかいえば、必ずしもそうではない例が多い。また、現在の彼女の年齢も気にかかる。

加えて、私たちを含めて、およそ大衆というものは、短期間で目に見える効果を期待しがちであり、野党もそのあたりを攻撃してくることはもちろんのことで、大衆はそれにうまく乗せられてしまうのが世の常。

「スーチー氏」という「ブランド」には、なかば神格化されたといってよいほどのイメージがあり、政治の世界の泥仕合や合従連衡のかじ取りが求められる政権党のリーダーとして、これまでの批判者という立場から為政者にスイッチした瞬間から、内外からのブーイングや痛烈な批判を受け止めなくてはならない。

当然のことながら、華々しい実績もあり、キレ者が多い前政権、つまり軍服を脱いだ新世代(旧軍政期から見ての)実力者たちは、強烈なカウンターパンチを用意していることだろう。

「スーチー氏に任せれば大丈夫」というムードと期待感こそが、スーチー氏にとってウィークポイントなのではないかと思う。

また、ビルマ族以外の少数民族が暮らす「州」(概ねビルマ族がマジョリティの地域は「管区」、少数民族の占める割合が高い地域は「州」という区分になっている。概ね前者は英国時代に直接統治した地域、後者は割拠していた藩王国を通じて間接統治していた地域ということになる)については、今後「民主化」の中で、州の自治権強化を求めることになるのが筋だが、大胆な行政改革が求められる。

軍政時代には民族運動を武力で押さえつけていたが、これに対してスーチー政権はどのような対応に出るのか?というところで、注目していきたい。インドやネパールのように、「民族のモザイク」の土壌だけに、叡智が試されるところである。彼女がこれまで選挙戦での協力関係以外に経験のないこの部分は、NLD政権にとって相当な危険を秘めているということになるだろう。

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