インドでテロ警戒・・・の背後にあるもの

インド発の ニュースでいろいろ流れているが、今回はこれまでのそれとは情報のソースがまったく異なるので、首をかしげている人は多いことと思う。

内容としては「グジャラート州地域で、パキスタンから10名のテロリストが越境。Lashkar-E-Taiba および Jaish-eMuhammed (どちらも原理主義過激派武装組織)の戦闘員で、自爆テロを含む攻撃を仕掛ける可能性が高い」といったもの。
ソースが異なるというのは、それをインド側に通報したのが、パキスタンのNational Security Advisorという機関であること。

パキスタンの首相府の指揮直下にある組織だが、昨年末以来、テロ防止と過去の事件の解決のため最大限の協力を約束したナワーズ・シャリーフ首相がこれを実行したものと見ることも出来るものの、実際にこれまでテロ組織の援助や攻撃計画実行などに関わっているのは、首相府-国家安全保障組織のラインではなく、軍-軍直下のインテリジェンス機関。

パキスタンでは「伝統的に」軍政が敷かれているとき以外は、前者文民政権と軍は対立・並立する関係にあり、こと隣国インドに対しては、せっかく文民政府が友好的なシグナルを送りつつも、これを後者が無きものとするような行為を繰り返してきた。先述のふたつの組織、どちらもパキスタン軍との協力・協働関係は深く、軍のインテリジェンス機関(ISI=Inter Services Intelligence 軍統合情報局)の預かり知らないところで、大型行動を起こすということは考えにくい。とりわけ軍が警備する国境地帯を抜けてということでもある。

仮に、この情報が本当に事実に基づいたものであるとするならば、インドにテロリストが侵入してきたという事実以上に、「この情報をインド側にリークした」ということの背後に、もしかするとパキスタンの軍部で勢力を二分する大変なパワーゲームが展開されているのではないか?ということも想像できないことではない。ちなみにNational Security Advisorのトップもまた軍人のポストである。

この一連の動きの中で、インドに侵入してきたテロリストたちが起こしうる事件と同様、あるいはそれ以上に危険なのは、パキスタン側の政府と軍の対立、加えてひょっとしたら生じているかもしれない軍の深刻な亀裂のほうであるかもしれない。

ナワーズ・シャリーフ氏は90年代にも首相を務めたことがあり、1999年にパルヴェーズ・ムシャッラフ将軍によるクーデターで拘束され、軍事法廷により死刑を宣告されたものの、アメリカとサウジアラビアの介入により、サウジアラビアに脱出した後、亡命生活を余儀なくされた過去がある。同氏にとっては、かつて政敵であった故ベーナズィール・ブットー氏以上に、同国国軍は不倶戴天の敵。 今後のパキスタン国内政情が気にかかるところだ。

Gujarat on high alert, 4 NSG teams rushed (THE HINDU)

※「ゴーラクプル2」は後日掲載します。

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