ダース選手の関西 ベスト8ならず

 前日の延長15回の熱戦の末、引き分け再試合となった岡山県代表の関西高校と東京代表の早稲田実業高校のカード。最初のふたつのイニングは両校とも無得点。
 試合が動いたのは3回表、早実の攻撃でツーアウトのランナー二塁で迎えた二番打者が三塁線を破る痛烈な当たりのタイムリー二塁打。この回裏からは前日の15回を完投したエース斉藤が登板。5回に打順が回ってきた彼は、レフト越えの本塁打を放ち、早稲田実業はさらに1点追加の2対0とする。
 実力拮抗する関西高校も反撃する。7回裏にツーアウトでランナーを一塁に置いた場面で、左中間を深々と破るツーベースヒット。走者は三塁を回りホームイン、1点を奪い返した。
 ドラマチックだったのは8回裏一死ランナー三塁のシーン。関西高校の5番バッターがセンターのバックスクリーンに飛び込む大きなホームランを放ち見事逆転劇を演じた。
 関西高校1点リードで迎えた9回表の早稲田実業の攻撃、アウトカウントあとふたつでベストエイト進出、これで試合は決まったかに思えた。
 しかしまさに『筋書きのないドラマ』が野球である。走者一塁で早実の5番打者が放ったライト前ヒットを外野手が処理しそこねて後逸。その間に一塁をスタートしたランナー、そして打者本人までホームインして逆転してしまった。
 試合は9回裏、いよいよクライマックスを迎える。ツーアウトながらも満塁の場面でバッターは前日3点タイムリー・スリーベースによる同点劇を演出した四番バッター。守る早稲田実業側にしてみれば、実に嫌な場面であったことだろう。
 グラウンド、観客スタンドともにいやがうえにも高まる緊張感。ワンストライク・ツーボールのカウントから斉藤投手が投げ込んだストライクゾーン高目のボール、打者安井のバットが一閃した瞬間、スタジアム内の時間が凍りついてシーンと静まり返ったように思われた。ダイヤモンド後方に高々と上がったファウルフライを捕手が追っていく・・・・試合終了である。前日の引き分け試合から数えて24イニング目にして勝負あった。この日は出番がなく、ベンチから試合を見守っていたインド系球児ダース選手の悔しそうな表情も画面に映る。
 足掛け2日間の熱い闘い。まさに青春のすべてを賭けてぶつかり合う選手たちの姿に思わずホロリと涙してしまった3月30日の夕方である。
 この日全力を尽くして勝利をもぎとった早稲田実業高校。明日3月31日に行なわれる準々決勝をものにすれば、4月2日に準決勝、翌3日には決勝戦が予定されている。このあたりから日程的にも実にハードだが、今後もベストを尽くしての良い結果を期待したい。  関西高校、そしてダース投手には夏の甲子園に再び帰ってくることを目指して、今後も頑張ってもらいたい。
※『目の前はブータン』は明日更新します。

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