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カテゴリー: column

  • ダム建設工事で危機的状況の文化遺産

    パーキスターンのダム建設でこのような問題が生じているとのことだ。

    ダム湖に沈む文化遺産を救うために(特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

    太古の時代より、様々な民族や文化が興亡したこの地域についての概略やダム建設の背景等については、上記リンク先のスライドをご覧いただきたい。

    この問題のあらましについては下記リンク先にも記されている。

    Diamer-Bhasha threatens ancient heritage sites (DAWN.com)

    Bhasha dam and heritage sites(DAWN.com)

    南アジア文化遺産センターのウェブサイトによると、ダム建設で水没する地域で失われる岩絵その他の文化遺産は3万点にも及ぶという。長い歴史の中でこうした遺産を残した様々な民族の生活等に関する調査はまだほとんど手つかずだそうで、ダム竣工まで残された時間が10年という状況は非常に厳しい。

    この件に関する講演は、11月8日(土)に日本大学文理学部3号館で開催されるシンポジウム・パーキスターン2014でも行われるとのことである。

    シンポジウム・パーキスターン2014 (特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

  • ディーワーリー

    ディーワーリー

    インドの祝祭、ディーワーリー。隣国のネパールではティハールとして人々が祝う。

    このディワーリーの祝祭が祝日として定められている国はかなり多く、南アジアのインド、ネパール、バングラデシュ、スリランカ等以外でもシンガポール、モーリシャス、フィジー、ガイアナ、スリナム、トリニダード&トバゴといったインド系移民が多い国々でも公休日となっており、かなりグローバルなお祭りであるといえる。

    しかしながら、インドの隣国にして、国内に幾つものヒンドゥーの伝統的な聖地や名刹を抱えている(分離後は廃れてしまっているが)パキスタンについてはこの限りではない。

    Pakistani Hindus ask government to give Diwali holiday (BBC NEWS ASIA)

    印パ分離独立の際にインド側に移動したヒンドゥー教徒たちの人口が多いとはいえ、今でも総人口の1/20を占めるということは、決して無視できる数字ではない。そもそも同国は、旧宗主国イギリスが去った後に、ヒンドゥーがマジョリティーとして支配することを嫌うアンチテーゼとしてのムスリム国家建設を目指したという歴史経緯があるとはいえ、社会的に高い地位を占める者、影響力の大きな者が去ってしまったことが、その背景にあるといえる。

    たかが祝日と言うなかれ。現在同国内で続くヒンドゥーたちへの蔑視やヒンドゥー自身の受難が主にインドのメディアにてしばしば報じられているが、年中行事の中でも最大級の祝祭が軽視されているところに、彼らの置かれた立場が透けて見えると言っても決して大げさではないだろう。

  • ミゾラム・プレミア・リーグの事故

    一昨日にインドのニュース番組で取り上げられていたが、ミゾラム・プレミア・リーグの試合中の事故により、選手が亡くなるという痛ましい事故があった。

    10月14日にミゾラム州都のアイゾールで行われたミゾラム・プレミア・リーグのゲームの後半戦にて、Beth lehem Vengthlang FCの選手が味方のミドルシュートがゴールポストに当たった跳ね返ったところに詰めてボールをゴールに押し込んで得点を記録。

    この選手、Peter Biaksangzualaは、宙返りで喜びを表現していたのだが、2回転目で頭部から着地したことにより、脊髄を損傷した。彼は直ちにコールカーターの病院に空輸されて治療を受けていた。インド北東部の一州のローカルリーグでプレーしていた彼は、将来はI-Leagueのチームに加わることを夢見ていたとのことだが、5日後の10月19日に集中治療室内で帰らぬ人となってしまった。

    彼への追悼記事がFacebookのMozoram Premier Leagueのコミュニティページにアップロードされている。このような事故が二度と起きることがないよう切に願いたい。

    Indian Mizoram Premier League footballer dies from spinal injuries after somersault goal celebration (Mail Online)

  • Markha Valleyのガイドブック

    Markha Valleyのガイドブック

    もはやこの時期にラダックのトレッキングガイドブックなどと言っても、ほぼ来年のシーズンで使うような話になってしまうが、このような本がある。

    書名:Exploring Ladakh Markha Valley Trekking and Homestay Guide

    著者:Nicholas Eakins

    出版社:Hanish & Co.

    ISNB : 978-81-7927-004-2

    ルートにもよるが、一週間ほどかけて回るマルカー渓谷のルートは欧米人を中心に人気がある。この本では、その渓谷の自然や気候、そこに暮らす人々、そして野生動物たちについての紹介はもちろんのこと、トレッキングの準備や装備について、行程中でのホームステイについて書かれている。

    持参すべきものについても事細かく書かれており、初めてこうしたトレッキングをするような人にも参考になるのではないかと思う。

    8日間という想定で、その日ごとの区間について、ルート上の様子を写真入りで紹介がなされており、ページをめくっているだけでもワクワクしてくる。

    実は、この本の著者であるNocholas Eakins氏とは、レーの書店でたまたまお会いして、少し話をしたことがある。このトレッキングガイドブック以外にも、ラダックに関するいろいろな著作があるらしい。

    インド国外ではまず手に入らないのではないかと思うが、レーの書店には沢山並べられているポピュラーなガイドブックである。来年のシーズンに、マルカー渓谷に向かう方はぜひご一読をお勧めしたい。

  • Cha Project コールカーター華人街復興計画

    最盛期には2万人を数えたというコールカーターの華人人口。市内中心部のラール・バーザール界隈を中心とするあたりを旧中華街とすれば、東郊外のテーングラー地区が新中華街となる。

    どちらも1962年の中印紛争の勃発にともない、敵性国民として検挙されたり、ラージャスターン州にある強制収容所に送られるなどといった扱いを受けるようになってから、その数は激減。同様に、そのころまでは西ベンガル州のダージリン、アッサム州(1972年に分離したメガーラヤ州を含む)の一部にも存在していた華人コミュニティもこうした動きにより大打撃を受けることとなった。

    その後も華人人口は漸減しており、インド国外、とりわけカナダに移住する人たちが多く、彼らは直接大陸から来たわけではなく、父祖は中国出身でも自身の生まれ育ちはインドであるため、「印度華人」というアイデンティティを持つことになり、こうした人たちが旧正月にはコールカーターに残る親戚を訪問したりしている。

    さて、この中華街復興のため、10億ルピー規模のプロジェクトが進行中であるとのこと。その名も「茶プロジェクト」というもので、観光振興を狙ったものであり、シンガポールの華人グループと西ベンガル州の観光担当部門が共同で進めていくものであるとのこと。

    混雑している旧中華街の小路を「フード・ストリート」として打ち出し、郊外でスペースに余裕がある新中華街では文化紹介やエンターテインメント的な場を準備するとのことだ。両中華街が今後どのようになっていくのか、お手並み拝見といったところだ。

    すでにシンガポールではそうしたプロジェクトは手慣れたものであろうことから、ソツなく上手にまとめてみせてくれることだろう。

    Kolkata: Rs 100cr revival for ‘twin Chinatowns’ (THE TIMES OF INDIA)

     

  • ミャンマーからインドへの陸路越えが可能に

    ある方のFacebook書き込みで知ったのだが、なんとミャンマーからインドへの陸路による国境越えが可能になっているようだ。ミャンマー側でのパーミット取得が必要なようである。

    その陸路による出国・入国地点は、ミャンマーのサガイン管区のMorehからインドのマニプル州のTamuである。この情報は、こちらをご参照願いたい。

    Myanmar / India Land Border Crossing at Tamu/Moreh Open (Lonely Planet THORN TREE FORUM)

    Crossing the Indo-Burmese Border on Motorcycle (THE IRRAWADI)

    どちらの地域も現在では自由に旅行できるようになっている。しかしながらどちらの地域にも長く抗争を続けてきた反政府武装勢力が存在し、現在は停戦状態にあること、ときおり治安に関する問題が生じていることは頭に入れておきたい。

    Trade resumes at India-Burma border (DVB)

    もしかすると、数年後にはポピュラーな国境越え地点となっている可能性もある。数年前にパーミット無しでの入域が可能となったものの、さほど注目を浴びることなく、期待されていたほど観光の振興に繋がっていないインド北東部が、ちょっとしたブームとなる可能性もあるかもしれない。

    しかしながら、外国人の出入境も可能となっていることから、物流ルートとしてもそれなりの機能を果たすようになっているものと思われることから、両国側ともこの出入国地点のエリアがもはや辺境ではなく、ダイナミックな通商のルートとなりつつあることが、容易に想像できるだろう。

  • 横浜・東京の秋のインド関係屋外イベント

    今年のディーワーリーは10月23日(木)である。そのディーワーリーにちなんで、横浜・東京で今年もまた次のような屋外イベントが開かれる。

    ディワリ・イン・ヨコハマ2014 10月18日(土)および10月19日(日)

    第15回 東京ディワリフェスタ西葛西 10月25日(土)

    秋の気候の良いこの時期、まだ屋外イベントでも寒さに震えることなく楽しむことができるだろう。ご家族やご友人と誘い合わせて、昼間からビールでホロ酔い気分でのんびりとした休日を過ごしてみてはいかがだろう。

  • Galaxy K zoom

    Galaxy K zoom

    Galaxy K zoom

    こんなカメラ/スマホが気になっている。言うまでもなくSamsungの製品だが、スマホでありながら、ズームレンズ付きのコンデジとしても使用できる。画角は24mm~240mmである。広角側が35mmや28mmからではなく、24mmからというのは、いかにもイマドキのコンデジらしくていい。F値は3.1~6.3とのことで暗めであるが、当然手ブレ補正が入っているからそれで勘弁、といったところなのだろう。

    もとより、使いやすくて写りの良いコンデジとなれば、日本メーカーのものを買わずにSamsungを挙げる必要はない。スマホがそこそこ実用的なカメラを兼ねているというところに面白味があり、利便性があるということになる。前述のとおり、24mmの広角から240mmの望遠までをカバーする光学ズームを持つスマホは他のどころを探しても、このメーカー以外には見当たらず、唯一無二の魅力がある。(この画角の光学ズームを持つスマホはGalaxyシリーズのK5 zoomとS4 zoomのみ)

    かつて、「世界初」を謳うサプライズな個性的な製品を輩出するのは、日本メーカーのお家芸であったが、今やそのお株は韓国のSamsungに奪われてしまっているのは正直なところ、とても残念な気がするのだが、次から次へと魅力的な製品を投入するこのメーカーの意欲・体力に感心せずにはいられない。

    メーカー自身は、カメラとしての機能に重点を置いているものの、ウェブ上で公開されているレビューを眺めてみると、どれも撮影機能に利点があるスマホとして取り上げているがゆえに、カメラとしてはどんなものなのかというところについては何だかピンと来ないものがある。

    この背景には、Samsung製品のカメラに対する一般的な評価が現在まであまり高くないことに加えて、スマホとしての扱いであるがゆえに、レビューを書く人物がカメラに関しては門外漢であることがその理由だろう。

    こらちはGalaxy S4 zoom

    私自身は購入していないのだが、このモデルよりも先に市場に投入されたGalaxy S4 zoomに触れてみたことがある。操作感は決して悪くないし、Galaxy K zoomと異なり、それなりにデジカメらしい形状で持ちやすい感じであった。また、ちゃんと三脚用の穴も装備されているところに好感を覚えた。それでも食指が動かなかったのは、店頭でしばらくいじってみただけなので大きなことは言えないのだが、精緻な液晶に映し出される画像が、ちょっと以前のコンデジみたいな出来栄えであったからだ。

    Galaxy K zoomはかなり画質面での向上が見られるとの評判であるものの、形がどうも気に食わない。普通のスマホのようなフォルムでホールド感はあまり良さそうには思えず、うっかり落下させてしまいそうな気さえする。せめてS4 zoomのように三脚穴が用意されていれば、そこにネジ込むストラップを利用して首から吊るすことも出来るのだが。

    ただ、Samsungのこうしたカメラ特化型のスマホで高く評価できる部分もある。フタを外してバッテリーを抜き差しすることが可能であることだ。ただでさえバッテリーの減りが早いスマホでガンガン撮影などしていると丸一日持つとは思えないし、携帯充電池を接続すると取り回しが悪くなる。スペアバッテリーを携行して必要に応じて交換できるというのはありがたい。

    しばらくして値下がりしたあたりで、実機に触れてちょっと検討してみたいと思っている。

  • Skype 今年11月10日よりインド国内からインド国内の携帯・固定電話への通信サービス終了

    Skype 今年11月10日よりインド国内からインド国内の携帯・固定電話への通信サービス終了

    最近、Skypeからこんなメッセージが届いた。

    Skypeのウェブサイトにもこのような記事が掲載されている。

    11月10日から、インド国内にてSkypeの「Skype Out」のサービスによるインド国内の携帯電話や固定電話と通話することが出来なくなるのだという。インド国内のSkype間の通話やインド国外からインド国内の携帯電話や固定電話に発信することは引き続き可能であるとのことだが。

    今回の措置についてSkypeによる説明はなされていないようだが、インド国内の通信会社の利権に関わる問題が生じてのことであると思われる。

    Skype to block local voice calls from India starting November 10 (The Times of India)

    上記の記事を読む限りでは、「Skype said that users will not be able to make calls to phones in India if they are based in India.」とあることから、インドに居住しているわけではなく、Skypeにインド居住者として登録しているユーザーでもないのであれば、同国内からの通話に差し障りがないようにも読めるかもしれないが、ユーザーがどこの国に居住していようとも、インド国内からの発信については、この措置の対象となる。

    場所によってはSIMの購入があまり簡単ではない場所はあるものの、概ね簡単に購入できるし、インド国内の携帯電話の通話料金は廉価ではあるのでそれほど困ることはないかもしれないが、これまでごく当たり前に使うことが出来たものが、じきに利用できなくなることについては知っておいたほうがいいかもしれない。

    今後、Viberの「Viber Out」についてもこのような形でのサービス停止が待ち受けているのかどうかはわからないが、これに続くことになるとすれば、やはりインドの当局の圧力によるものということになるだろう。

  • すごいインド

    すごいインド

    著者のサンジーヴ・スィンハさんとはずいぶん前に何度かお会いしたことがあるが、非常に快活、そして才気煥発という印象を受けた。そのサンジーヴさんが今年の9月に出したのがこの本である。これまで経済界の人たちによる数多くのインド論が書籍や経済誌等で世に出てきたが、この人の書いたものはやはり他とずいぶん違う。

    インドからグローバルに活躍する人材が輩出する理由、理系人材が豊富なワケ、インドがIT大国となった背景にある初等教育の拡充等々について、彼自身の視点と体験から綴っていく。しかしながら一方的なインド賛辞となっているわけではなく、そうした部分での自国のネガティヴな側面、日本が大きくリードしている部分などについても大いに言及しており、何もわざわざ日本に来なくても、欧米などでも活躍できたであろう彼自身が、なぜ日本に惹かれて、日本を本拠地として活動している理由へと繋がっていく。

    日本在住のインド人であり、インドでの財閥系メーカー勤務、日本ではIT、外資や日本の証券業界複数社で働き、その傍らでIIT同窓会日本支部の立ち上げ、その同窓会主催による「日印パートナーシップ」を謳う国際会議の開催、はてまたAAP (Aam Aadmi Party)を率いるアルヴィンド・ケージリーワル氏がIRS (Indian Revenue Service ※税務関係の中央政府公務員の上級職)を辞して政治活動に進出するきっかけを作った腐敗糾弾の署名活動の発起人であるなど、精力的に日々を過ごしてきただけではなく、そうした多忙な日々の中で日本での社会生活に埋没してしまうことなく、インドとの繋がり、しかも個人の交友レベルではなく、財界や政界との縁をも切り拓いてしまう才覚と行動力があるのが頼もしい。

    すでに会社員生活を辞めて、2008年にサンアンドサンズグループというコンサルタント会社を起業して、日印経済の架け橋として活躍中。もちろん彼自身も「インド発のバリバリやり手の人材」であるわけで、これからインドに進出を考えている企業の方などは、この本を読んで「ぜひこの人物に相談してみたい」と思うことだろう。日本在住歴の長いサンジーヴさんらしく、非常に謙虚な表現で書いてあるにもかかわらず、読者に対し自身を強く印象付ける経歴書でもあるところがまたすごい。

    日本を活動の本拠地として、業務で日印間を足繁く通うサンジーヴさんは、日本で活躍するインドの人であるとともに、インドに日本を伝える「日本のグローバル人材」だ。今後のさらなる活躍がいろいろと伝えられることだろう。

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    書名:すごいインド: なぜグローバル人材が輩出するのか(新潮新書)

    出版社:新潮社

    著者:サンジーヴ・シンハ

    ISBN-10: 4106105853

    ISBN-13: 978-4106105852

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  • Namaste Bollywood #41

    Namaste Bollywood #41

    Namaste Bollywood #41

    ナマステ・ボリウッド#41が発行された。今回の特集は10月中旬に東京、高崎、大阪の三つの会場で開催されるIndian Film Festival Japanである。

    今年で3回目となるこの映画祭は、東京(ヒューマントラストシネマ渋谷)においては10月10日から17日まで、高崎(シネマテークたかさき)と大阪(シネ・ヌーヴォ)では10月18日から24日までが会期となる。

    10月10日のオープニングイベントに出演するために来日するのは誰か?!というところも大いに興味をそそるところであるが、今回の映画祭もまたMadras Café、Barfi !、Pied Piperその他のキラ星のような傑作タイトルがその名を連ねているので、大いに盛り上がること間違いなし!

    2015年に日本公開となるであろうボリウッド映画の予測、ボリウッド都市伝説の検証その他のカラフルな記事を読み進んでいくと、今後日本の劇場で鑑賞できるムンバイー発のヒンディー語映画の幅が更に広がっていくことを期待せずにはいられなくなる。

    なお、同誌のフリーペーパー版はこれが最終号となり、次回からは増ページした有料版へ以降するとのことで、更にパワーアップした誌面を楽しみにしたい。

    購入方法等については、やがて同誌のウェブサイトにて案内がなされることと思うが、詳細が明らかになればindo.toでもご紹介したいと思う。

  • ヘーマント・カルカレー氏夫人死去

    2008年11月26日にムンバイーで発生した大規模なテロ事件からもう6年が経過しようとしているが、あのときの衝撃は今も鮮やかに脳裏に刻まれている。その日、現場に居合わせたわけではなく、複数の現場からのライヴ映像を流すインドのニュース番組に釘付けになっていたのだが。

    次々に伝えられる虚実が入り混じった情報の中、事件が起きた11月26日から同29日にこれが終結するまでという長時間に及ぶ悲惨なテロ事件が、電波に乗って中継されるという未曽有の出来事であった。テレビニュースから垂れ流しにされる様々な報道は、同時にテロリストたちの現状把握の助けにもなってしまうという皮肉な側面もあり、報道の自由や国民の知る権利について、このような事態の元にあっては何かしらの制限をかけるべきではないかという議論もあった。

    そんな非常事態下ではあったが、わずか10名の実行犯により、164名の死者、308名の負傷者(数字には諸説あり)に及んだこと、足掛け4日間という長期戦となってしまったことについては、テロに対する大都市というものの脆弱さを憂うとともに、当局の手際の悪さについて厳しい非難を呼ぶことにもなった。

    そんな中で、現場の警察官たちは精一杯頑張っていたことについての一定の評価もあり、実行犯のひとりのアジマル・カサーブ(2012年11月に絞首刑)をほぼ素手で生け捕りにした巡査たちの勇気やテロリストたちの銃撃により殉職することとなったムンバイー・アンチ・テロリスト・スクウォッド(ATS)のチーフのヘーマント・カルカレー氏について、メディアで大きく取り上げられていた。

    Anti Terror Squad head killed in Mumbai Terror Attack Hemant Karkare (Youtube)

    そのカルカレー氏のカヴィター夫人は、夫の死に関して治安組織の装備に関する不手際について非難の声を上げており、ヘルメットや防弾チョッキ等の強度が基準を満たしていないものであるという事実が明るみに出るなど、テロ対策に当たる組織のありかたについての不安について大きな波紋を呼ぶこととなる。

    カルカレー氏は、自らが所属する警察組織から事件に関する最初の一報を受けたわけではなく、自宅でテレビを観ていたら、この事件を伝えるニュースが流れたため、取り急ぎ職場に急行したということにも、私自身は大きな不安を覚える。警察内部での反応よりも、報道のほうが早かったということが事実であるとすれば、である。この部分については夫人が糾弾していたわけではないようだが。

    一男二女の母であり、大学講師でもあるカヴィター夫人は、事件後しばらくはメディアで取り上げられる機会が多かったが、脳溢血で倒れて昏睡状態となり亡くなった。夫を失った悲嘆とともに、数多くの心労もあったことだろう。ご冥福をお祈りしたい。

    だが、彼女の場合は、夫がIPSのエリート警官であり、テロ対策チームを率いる立場であったがゆえに、また事件後にこうした業務に従事する警察官たちの装備等に関する疑問を呈して世間に知られることになったがゆえに、このように報じられることになったわけだが、カルカレー氏のようにテロ実行犯と対峙して殺害された多くの治安対策組織の人々、事件に巻き込まれて命を落としたり、大きな障害を負うことになった人たち、またそれらの人々の家族もあるわけで、生涯に渡って自分の落ち度によるものではない深い傷を負って生きていくことになる。

    いかなる理由や動機があろうとも、テロ行為を正当化することは出来ないということは、広く共有される認識であるはずだが、それでもこのような事件は世界各地で後を絶たないことは誰もが憂うところである。