インドで持ち歩きたいGR-D

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 以前「インドでこんなカメラが欲しい」と題して取り上げたリコーのデジタルカメラGR-D。いよいよ10月21日(金)に発売である。
 新しいカメラが発売されるだけで、また何を騒いでいるのかと思われるかもしれないが、これは「インドを撮るのにちょうどいい」と思われるからだ。
 写真を撮るのは好きだが、旅先でボディやレンズその他重い機材を持ち歩くのは嫌いだ。道具に振り回されるのも癪である。出かける目的が撮影そのもの、という人はそれで幸せかもしれない。私は五感でいろいろ感じる機会や気分が削がれてしまうのはご免だ。荷物が重くなる分、旅をするのが辛くなる。そのくせいい写真を撮りたい、扱いが楽しいカメラがいいけど非現実的な価格では困る、などといった欲求は尽きることがない。
 旅先以外の日常でもそうだ。特にこれといった用もないのに、重たい一眼レフをカバンに放り込んで歩くような体力も気力も持ち合わせていない。かといってただの「押すだけカメラ」では退屈極まりない。こうした身勝手な要求にうまく折り合いをつけてくれるカメラはそう無いものなのだ。
 GRシリーズのポイントは画質重視の単焦点レンズであること、高性能ながらも手のひらに収まるほど小ぶりであることだ。写りが抜群に良く、いつでもどこでも持ち歩けて、必要とあればすぐに取り出してシャッターを切ることができる。大きなカメラと違って被写体が人間でも相手を圧迫することもない。撮るほうも撮られるほうにもまったく負担にならないカメラである。そのデジタル版なのだから大いに期待したい。


 高画質とコンパクトさを追求するにあたり、不要と判断したものは容赦なく切り捨てる潔さもこのGRの特徴である。9月にこのモデルが発表された際、コンパクトなボディとはいささか不釣合いなほど大きな液晶モニター(2.5型)が目を引いたが、驚いたことに光学ファインダーが省略され、オプションで外付ファインダーになったことに失望する声が少なくなかった。「光学ファインダーはちゃんと内蔵して欲しかった」「電池ばかり食う大きな液晶は不要」「機動性が売りなのに外付けファインダーとは面倒くさい」等々。
 確かに液晶ファインダーのみのカメラは今では珍しくない。だが例の顔の前で両手を伸ばす、敢えて手ブレしやすい構えで撮影することに抵抗を感じる人は私を含めて少なくないだろう。汎用機ならともかく、コンパクトカメラとしては「高級機」に位置づけられるクラスでは異例のことだ。救いはブレが目立ちにくい広角単焦点のカメラであることだろうか・・・などと言ってしまえば廉価モデルのように聞こえてしまう。
 こうなった背景には、ボディのスペースの問題以外にもいくつか考えられる。液晶画面を大きくしたのはファインダー機能としての役目のみならず、多様な設定をするための操作性向上のためという狙いもあるのだろう。そして中途半端な内蔵ファインダーよりも、必要に応じて高性能な外付けのものを利用できるほうが良いという考えもアリかとは思う。 
 そもそも昔々のカメラにおいては、上部のアクセサリーシューに外付けファインダーを取り付けるのが当たり前だったことを思えば、より「本格的」ではあるのかもしれない。
 ボディサイズの制約自体に無理があるかもしれないが、機能性と機動性が高い次元でシンクロするのがGRシリーズの面白さだ。私のような素人があれこれ詮索するよりも、はるかに高い次元での試行錯誤が繰り返された結果なのではないだろうか。
 このGR-D、リコーのデジタルカメラのフラッグシップ機になるのだが、いったいどれくらい売れるのかは、フタを開けてみなければわからない。市場の評価次第でこれがGRシリーズの最終モデルになってしまう可能性だってある。すでに銀塩カメラから手を引いている同社が、今後の成り行きによってはデジタルも含めてカメラ事業そのものから撤退してしまわないとも限らない。
 本体が実売価格7万数千円、ファインダー、スペア電池、大容量の記録メディアといった欠かせないオプションアイテムを加えると、軽く10万円を越してしまうのだから、いまどきのコンパクトカメラとしてはずいぶん高い部類に入る。現在低価格化が進行中の普及タイプのデジタル一眼レフの価格帯とも重なるため、爆発的に売れまくるものではないだろう。メーカーによる公称月産台数も5千台という控えめな数字である。
 発売前から賛否両論渦巻き、好き嫌いが分かれるモデルになりそうだが、老舗のカメラメーカーが社運を賭けて開発した渾身の自信作。面白いカメラであることは間違いないようだ。早く自分の手で確かめてみたい。

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