シェーカーワティー地方へ 2 〈Hotel Mandawa Haveli〉

滞在先のマンダーワーで宿泊先としたのはHotel Mandawa Haveli。古いが立派な屋敷をホテルとして活用したものである。18世紀から20世紀初頭にかけて、最初は陸上交易、そこで蓄財した商人たちが都会に進出して稼いだ資金を故郷に送ったことから、豪壮で華麗なハヴェーリー (屋敷)が残されたことで知られるシェーカーワティー地方。そのハヴェーリーの内部・外部ともに美しい壁画による装飾が施されているのが特徴だ。

だが、多くはオーナー家族が大都市に転出していったり、売却してしまったりということもあり、田舎町に似つかわしくない大規模な邸宅が間貸しでテナントを得るようになり、地上階は商店、ファーストフロアーから上は集合住宅というような形態になってしまっているところが多い。伝統的なジョイント・ファミリーの邸宅として、中庭を中心に「ロの字型」となっている屋敷に身内の複数世帯が起居するものであったため、間貸しするのにちょうど良いということもあるのだが。

その結果、ハヴェーリーの内部は荒れ放題であったり、オリジナルの形態とは似ても似つかぬ安手の増改築がなされたり、ということになり、壁に精緻なタッチで描かれた絵に対する敬意が払われることもなく、危機的状況にあることは様々なメディア等で伝えられつつも、現地では相変わらずの無頓着という状況が続いていたのが1990年代までのこの地域であった。

21世紀に入ってからは、こうしたハヴェーリー、それらを建てた豪商たちが寄与した建築物(ハヴェーリー以外に寺院や共同井戸など)が歴史的・文化的な価値が高いものであるとして認知されてきてはいる。しかしながら、細切れに賃貸に出されているハヴェーリーについては、長年賃貸で居住している世帯ないしは商店があることから、以前と同様の厳しい状態にある。

ホテルに転用されたハヴェーリーについては、華麗な絵による装飾は見事に復元されていたりするものの、ここでもまたオリジナルの形態とはかなり異なる部分も生じるのは当然のことだが、少なくとも文化的な価値に焦点を当てて、ヘリテージな宿泊施設として供されるわけである。人々にそうした伝統を認知させること、こうした修復活動を通じて、技術が伝承されることなどから、決して悪いことではないだろう。















現在、間借人たちが居住しているハヴェーリーは、そこに住む人との何かしらのコンタクトを取る機会でもないと、なかなか内部を見学することはできないし、オーナーがテナントに貸し出すことなく、ケアテイカーを置いて管理させているようなところでは、いくばくかの謝礼を渡して建物内を見せてもらうことも出来たりはするものの、そうのんびりと見学できるわけではない。そうした点からも、宿泊施設として転用されている場合、誰に遠慮することもなく、建物内を闊歩できるという大きな魅力がある。

ホテルに転用されるところが次第に増えているのは、近年の傾向のようだ。1990年代に幾度か訪れた際に「こうしたハヴェーリーがホテルに生まれ変わっていたら、どんなに素敵な宿泊施設となることか」と思ったことを記憶している。地域の領主の館、豪商たちのハヴェーリー内部を模した装飾が施された宿泊施設はあったものの、このような形態のホテルはまだ存在していなかった。

ただし、今回の宿泊先の近くで、ふたつ、みっつほど営業しているハヴェーリーから転用された宿泊施設については、内装の修復が素人目にも相当いい加減なものであったり、「コンクリート造りの別棟」に客室があったりと、あまり良い印象を受けなかった。伝統的なハヴェーリーを謳う宿泊施設の粗製乱造が懸念されるところである。

〈続く〉

This entry was posted in column, heritage, society, travel. Bookmark the permalink.