ベトワ河の苦行者

 朝から自転車を借りてオールチャーの遺跡群を巡り、昼ごろベトワ河の岸辺に下りて一服。
 ふと水面に目をやると、誰かが河の中から顔だけを出している。溺れているのではないかと心配になったが、後頭部をこちらに向けて身動きひとつせずに静止している。「こんな修行をするヨーギーもいるのか」と感心して眺めていると、近くを通りかかった西洋人たちもやはり立ち止まって注目。
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 午後遅くなってからも男はまだ同じ姿勢で河の中にいた。すでに陽は彼方に沈もうとしている。アメリカから来たカップルが「あの人、大丈夫だろうか」と深刻な顔をして私に声をかけてきた。もしや水面下で流木に引っかかったまま失神しているのではないか、あるいはすでに息をひきとってしまったのではないか、私も心配になってきた。
 ……ところが身を乗り出して、よくよく目を凝らして瀕死の苦行者を見た私たちは、「真実」を発見し、顔を見合わせて大笑いした。遠目には人にしか見えないのだが、……そこには石を積んであるだけだったのだ。昨日は見かけなかったので、今日の午前中あたりに誰かが河に入ってしつらえたのだろう。
 まんまとだまされてしまった。誰だか知らないが「作者」のユーモアのセンスに大きな拍手を送りたい。

「ベトワ河の苦行者」への1件のフィードバック

  1. この記事、12日に投稿してから、今日まで「記事を書いた人」が「tamon」になっていました。すいません。おがたさんより指摘あり、早速修正いたしました。

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