遺跡の不条理(1)

●外国人料金のジレンマ
 数年前からインドの遺蹟や博物館で「外国人料金」の入場料が徴収されるようになった。インド人は5ルピーなのに、外国人は100ルピー…というのはよくあるパターン。いまではすっかり定着したようで、メジャーな観光名所ならば、たいがいどこも外国人料金が掲げられている。


 途上国で外国人は往々にして、地元の人たちより割高な入場料を支払わされる。日本で定収入のある者にとっては、どうってことない金額に見えるかもしれない。しかし冷静に考えてみれば、本来の料金(インド人料金)の倍程度ならともかく、20倍というのはずいぶんな話だ。もちろん、20倍の料金を払ったところで、特別なサービスがあるわけでもない。インドが右肩上がりの経済成長を続け、豊かさを実感できる人々が増えてきてからこんなことになったというのも実に皮肉な話である。
 きっと、「外国人観光客=先進国から来た金持ち」というイメージを抱いているのだろう。だが「インドの高賃金」を求め、出稼ぎにやってきた周辺国の人々も「外国人」である。彼らが休日にどこか見物に出かけることだってあるはずだ。それに「外国人」だけではなく、いまやインドの中産階級の人びとだってお得意さんではないか。
 これが社会主義国だったら、国家建設に参加していない外国人が、「人民」と同じ待遇を受ける資格はない!という名分のもと、外国人料金を掲げられるかもしれない。だが、所得差の大きいインドで、社会の底辺に暮らす貧しい人々が、母国の豊かな文化と触れる機会がもてるように、特別な配慮をしているようには思えない。
 これからインドや周辺国を広く旅する予定の長期旅行者たちならば、壮大な遺蹟を目の前に「せっかく来たのだし…」「でもお金がない…」とジレンマに悩むこともあるかもしれない。彼らにとって、100ルピーの入場料は一泊の宿代に相当する。アーグラーでタージマハル、アーグラー・フォート、イティマード・ウッダウラー、ファテープル・スィクリなど、誰もが訪れる名所をすべてカバーしようとすれば、節約旅行者はたちまち「予算オーバー」してしまうはずだ。
<つづく>

「遺跡の不条理(1)」への4件のフィードバック

  1. わたしは現在無職であり、他のインド妻同様夫の収入が頼り、外国人だからといっても物価はインド人感覚で生活しています。なのに遺跡に行くと外国人料金として徴収されるのは本当に腹立たしいです。家族はそういう時は少しでもインド人になりすますため、パンジャビードレスを着て訪れるように勧めています(笑)

  2. 普段、観光名所に行くことはないので、外国人料金の経験が少ないのですが、ハイデラバードのサラール・ジャング博物館に行った時のこと。案内してくれた現地の友だちが「入場料はぼくが奢るよ」と、窓口行って愕然としていました。その時ぼくが泊まっていた中級ホテルと同じ値段だったもので…(苦笑)
    あと、マハーバリプラムの海岸寺院も入場料がドル表記になっていてたまげましたが、そのくせ昔行ったときより周辺にゴミが多くて景観ひどく、がっかりしましたっけ。
    あんだけ金取るんなら、とるなりに、ちゃんと保存してもらいたいものです。

  3.  インド人の20倍の料金であるということは、もし20人の外国人観光客のうち19人が遺跡入口のところで「高すぎる」と踵を返しても、入場した1名からインド人料金20人分は確保できるので、徴収する側にとっては悪い話ではないのかもしれません。
    もっともインドを観光目的で来た人が、入場料が高いからと中に入るのをとりやめることはあまりないでしょうね。
    ルピーでなく米ドルで支払う観光客もいるようですが、その紙幣の券種や番号まで記帳する役割の人がいるのを目にすると、おそらく外国人料金導入の背後に新たに創出された仕事もいくつかあるかもしれないので、雇用対策にもなっているのかな(?)という気も少々。
    遺跡等については、「高いからヨソに行く」というわけにもいかないし、料金を値切れるものでもないし・・・。それに昔はタダで入れた遺跡まで有料になっていますね。
    テロを警戒してのことでしょうか、遺跡によっては各要所に配置されて武装した警備員が目立つところもありますので、ほんのわずかな年月のうちにずいぶん時代が変わったような気がします。

  4. >suryaさん
    書き込みありがとうです!ああ、やっぱり日印家族でもだめなんですねぇ。ほんと不条理。ogataさんも言っているけど、お子さんが大きくなったら、どうなるんでしょう…。

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