なぜ暗がりで食べるのか 1

なぜインドのレストランの照明は往々にして暗いのだろうか?近ごろ家族や仲間と楽しく外食を楽しめるところが増えてきているので、大都市や都会の人々がよく訪れる観光地では日本のそれと同じ程度の照明のところも増えてはいるが。昔からよくあるタイプの『重厚にして慇懃』な雰囲気のレストランでは、すぐ向こうのテーブルに座っている人の顔さえもよくわからないくらいだ。『BAR』となれば更にその傾向は強くなる。
単に明るい照明で煌々と照らし出す習慣がない、あるいは感覚の違いから適当と思う明度が違うということもあるかもしれない。手元の食器が空になるやいなや、ウェイターがツカツカッと歩み寄ってきて、それらをかっさらっていくのはサービスというもののスタイルが違うがゆえのことだ。これと同じく店内の照明についても、それを適当であるとする何かしらの観念があるに違いない。それにしても注文した品が出てくるまでの時間つぶしに広げた新聞や本などの字が非常に見づらいほどの暗さには確固とした理由があるのではないだろうか。
日本を含めた東アジアではレストランの店内は明るいし、これは東南アジアも同様だ。中東に足を伸ばしてもよく見えなくて困るほど暗いレストランなんて記憶にない。もちろん接待の女性がいたりするちょっと特別な場所、家族を連れてくることのできないいかがわしい場所のことではない。私たちが普通に食事をするやや高級なレストランでの話である。
やたらと暗い店内で役人、ビジネスマン、ポリスなどがよからぬ企みをしていたり、袖の下をやりとりしていたりというシーンが映画で描かれることがあるが、そうした『プライバシーの保護』のために他の客たちも照明の暗さにお付き合いしているとは考えにくい。
シンプルな造りのほうが建築時に安くつくということはあるかもしれないが、もともと客単価が高い店では大した問題ではないはず。かえって安食堂のほうが店内は明るい。入口が外に大きく開け放たれているし、日没以降も煌々と照らし出す明かりが人々を店内に誘っている。しかしやや高目の店になると窓が小さいうえに昼間でもカーテンがかかっていたりして、夜間同様に暗い空間が広がっていることが多い。するとその理由は費用の関係ではないだろう。レストランを出て周囲の商店などに目をやると、どこも室内は明るいので電力不足なんかが理由でないことも明らかだ。すると食事の場所であるがゆえに暗くしておく確かな理由があるということになる。

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