ペリンへ

午前中はガントク市内を散策。せせこましい斜面の街並みに高層建築が増えているため、街路は陽当たりが悪く、寒々とした感じがする。
ガントクの乗合ジープスタンドから出発
予約した乗合ジープは昼過ぎの出発。できればもっと早い時間に出たかったが、いかんせん本数が少な過ぎる。州内の交通の大半が乗合ジープであるのは、道路が細くて舗装も貧弱であるため仕方ない。だが他州に較べると格段に人々の移動が少ないのではなかろうか。もちろん、それだけ人口が希薄であるということにもなる。
決して豊かな州ではないし、これといった産業があるわけでもない。その割には極端な貧困層は多くないように見えるのは、やはり人口が少ないことと、中央政府が予算配分で優遇しているということもあるだろう。国境線を巡って幾度か痛い目に遭わされてきたインドとしては、すぐ北にある中国に対する警戒心を解くわけにはいかない。
ガントク市内を南に下る。家並みが密集している中、ぽかんと開けた空間があった。Iリーグのスィッキム・ユナイテッドの本拠地グラウンドである。元インド代表ストライカー、バイチュン・ブーティヤーは現在ここに在籍している。この時期なのにピッチの緑がつやつやと輝いているのは、まさかグラウンドの整備が行き届いているためというわけではなく、おそらく人工芝なのだろう。
行けども行けども、山また山。スィッキム州の景色は素晴らしい。同じチベット仏教地域でもラダックのあの月面のような風景とはまったく違い、つやつやとした豊かな緑に恵まれている。水も豊富でところどころで岩清水が湧いては流れ落ちている。自然の恵みの豊かさを感じる。ラダックに較べると、チベット仏教色がやや薄く感じられるのは、仏教徒以外の住民も多いからに他ならない。
クルマに乗り合わせている人たちの大半はベンガルからの旅行者たち。私の後ろには四人の家族連れと最後の列の席にはカップルがいる。それにしてもジープに11人乗るので、かなりきつい。私は最前列の左側。運転手の横に私含めて二人座っている。それでも最前列はまだいい。後ろの席はもっと窮屈そうだ。乗合ジープはたくましい駆動力で山道を進んでいく。やはり4WDのクルマは、きれいに舗装された市街地で乗るものではない。悪路で荒っぽく使いまくるためにあるのだ。
街道沿いの茶店で休憩
タルチョが風にはためく
ガントクからペリンまで5時間半ほど。道のりを半分ほど来たあたりで、食事休憩が入った。天気は良く陽射しもいいのだが、気温はかなり低くてカゼを引きそうだ。休憩後走り出して間もなく、ラヴァングラーの町を通過する。スィッキム州では、山道を走っていると、いきなり町に入るのでちょっとビックリする。それだけ人々が密集して暮らしているということなのだろう。あまり広がりすぎると往来が困難になるとともに、おそらく電気や水道等のインフラの整備の関係もあるのではなかろうか。狭くコンパクトにまとまることにより、限られた費用で生活や産業の基盤を整えることができると考えられる。
どこもかしこも山景色
市街地に入ったときだけ、スマートフォンでインターネットに接続できるようになる。そして郊外に出ると可能なのは通話のみ。人口が希薄でアンテナ等施設の設置と維持に費用がかかる割には投資分の回収を期待できそうにない地域では、相変わらず民間の携帯キャリアではなく、BSNLが強いらしい。
それでも、ここ10年ほどでインドの通信事情は飛躍的に向上している。インターネットが普及してきたころ、ネットカフェで30分くらい費やしてもメールチェックさえできなかったりすることが珍しくなかったことが、ずっと遠い昔のことのように思える。今ではスマートフォンで手軽に見ることができるし、フェイスブックで友人・知人たちの近況を知ったり、こちらから投稿したりすることができる。インドの場合、スタート地点が低かっただけに、その成長ぶりには目を見張るものがある。
スィッキムはインドの東のほうにあるため、夕暮れどきがずいぶん早い。午後5時にはもう真っ暗。日没は4時半過ぎくらいではないだろうか。その理由のひとつに山並みが太陽を遮ってしまうことも挙げられる。
ペリン到着まであと少し
5時を回って「夜になる」と、満月が美しかった。山あいに点々と光る電光を目にすると、それらの場所に人々の暮らしがあることを気づかされる。スィッキム州の給電事情は良好だ。水力発電が盛んであるためだろう。すぐ隣のブータンもインドに売電しているくらいだから、スィッキムも州外に電気を売るくらいの余裕があるのかもしれない。
午後6時にペリンに到着した。アッパー・ペリンの宿の前で降車。小さな町ではあるが、正面には24時間営業の銀行ATMがあるのにはちょっと驚いた。チェックインの手続きをしていると、日本人旅行者Uさんに出会った。ちょうど明日は周囲を観光するとのことなので、クルマをシェアさせてもらうことにした。

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