オートリクシャー・スター・クラブ 2  頑張る路上の星たち

スィーター・ラーム氏が所属するオート・リクシャー・スター・クラブのウェブサイトにアクセスしてみよう。今年1月に結成されたグループで、オートリクシャー運転手たちの地位と待遇の向上を究極の目的とする自助組織である。
彼らが問題としているのは、ひとことで言えば、運転手たちの劣悪な労働環境、乏しい収入、低い社会的認知などだ。それらを背景に、行政に対する発言力が弱いために、行政により現場の声が届かないところで公定の(つまりメーターの)運賃が決められ、オートリクシャーに対する様々な要求が突きつけられる現状を打破して、自らの置かれた環境と生活改善のために闘おうという、ひとつの労働運動といえる。
彼らの運動をリードするニャーヤブーミーというNGOのウェブサイトを覗いてみよう。オートリクシャー運転手たちが具体的に抱えている問題とは何かということについても、同クラブのウェブサイト中にいろいろと実例が挙げられており興味深い。


運転手たちが抱える問題について
・料金決定について行政のポリシーの欠如
・デリーのオート公定運賃は、国内主要都市最安レベル
・操業許可取得にかかる費用
・デリーではオート・リクシャーの車両コストが突出して高いこと
・この事業における資金調達にかかる問題 公的かつリーズナブルなファイナンス手段の欠如
・CNG車両のメンテナンスコストはガソリン車両の8倍
・関係官憲たちの腐敗
・公的には存在するはずのオート・スタンドの不在
収入
オートリクシャーの運転手という職業は、もちろんそんなに実入りの良いものではないだろう。同クラブのサイト中には、彼らの平均的な一ヶ月の収支が掲載されており、彼らの暮らしぶりが透けて見えるようでもある。
オーナードライバーから賃借ドライバーへ
2000年を迎えるまで、デリーのオート運転手の多くは、自分で車両を所有していたが、エンジンのCNG化が課されてからは、それに対応するコストの高さゆえに、オーナーシップを手放して、オートを賃貸する立場に転落する人々が続出したのだとか。第三者の視点で見れば、『あぁ、環境にいいじゃないか』と好意的に受け止めらることであっても、現場でそのアオリを食う当人たちにとっては死活問題であったりする。
その他いろいろとオート関係の問題や彼らの主張などが書かれているので、関心があれば彼らのウェブサイトを更に読み進んでいくと興味深いものが見つかるだろう。
ともあれ、職業運転手としては格が低く見られ、搾取の対象となり、あまりいい思いをしていないと感じている運転手たちが、自らにふさわしい尊厳と報酬を得ようという運動である。
その手段として、簡単に言えば、法令順守してマナーやサービスの向上も図ることにより、利用者たちから高い信頼を得る。それを通じてこの職業に対する人々の認知度を高めるとともに、社会的な発言力を高める、顧客たちの意見を集約して行政に伝えるなどにより、こうした運動が広く支持されていることを示して行政に対する影響力を行使しようという具合だ。
オートのドライバーの労働環境改善のため、まずは自身が襟元を正したうえで、運転手仲間やお客たちを味方に加えて、行政に対して堂々と物を言う存在になろう、というスタンスだ。
当初運転手6人でスタートしたこの運動は、現在拡大を続けており、スィーター・ラーム氏によれば『現在数十台』とはいうものの、彼らのウェブサイトにあるように、2008年末までに2万5千台という目標はあまりに大風呂敷すぎて手が届きそうにないようだ。
ところでスィーター・ラーム氏は、オートリクシャー・スター・クラブ発足当時からの中核メンバーのひとりであり、写真の並びが序列を反映しているのかどうかは定かではないが、同クラブのメンバー紹介ページにある運転手たちの中では、筆頭の位置にその写真と携帯電話番号が掲載されている。
こうした運動の展開を快く思わない運転手やオートリクシャーのオーナーたちもいるだろう。また利用者側にしてみても、もともとオートリクシャーに対する期待値が低く、この動きに対してあまり興味を持ってくれないという部分も少なくないのかもしれない。
まさにそれらこそがスィーター・ラームさんをはじめ、他の運転手たちや関係者等が打破しようとしている現状の一側面でもある。今後彼らの運動が広く人々の支持を得て発展していくことを願ってやまない。

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