キングフィッシャー・レッド ローコスト路線廃止へ

Kingfisher Airlines

ちょっとビックリする反面、やはりそうかという思いもする。

Kingfisher Red to shut operations: Mallya (DAILY NEWS & ANALYSIS)

After Kingfisher Red’s exit, no-frill carriers to expand operations (DAILY NEWS & ANALYSIS)

キングフィッシャー・エアラインといえば、2005年に運行を開始した、まだ新しい航空会社ではあるが、もはやインドを代表する航空会社のひとつとして、内外に広く知られている。

ご存知『キングフィッシャー』ブランドのビールを製造するユナイテッド・ブルワリーズ・グループが親会社の企業だが、今ではそれとは逆に『あのビールも造っている航空会社だね』などとアベコベなことを言う人もいるくらいだ。

垢抜けたイメージとともに急激に路線を拡大していったが、2007年にインドにおける格安航空会社の先駆けであったエア・デカンを買収したことに負う部分も大きかった。旧エア・デカンは、キングフィッシャー・レッドとしてその後もインドの格安路線市場で、その他後発の格安航空会社や既存航空会社の格安料金と競い合い、同国の航空チケットの低価格化に果たした役割は相当なものである。

個人的には、料金が安いもののウェブサイトでインド国外で発行したクレジットカードでは予約できなかったエア・デカンがキングフィッシャーに買収されてからは問題なく使用できるようになったのがありがたかった。

ここ数年来の燃油代やパイロットの人件費の高騰により、どの格安路線も経営は決して楽ではないが、キングフィッシャー・エアライン自身も、華やかなイメージとは裏腹に様々な筋から経営難が伝えられていた。

国内路線の伸長とともに、国際線にも積極的な進出を行なっており、他社と一線を画したカジュアルながらもスタイリッシュなブランドイメージとスタイルが良くてセクシーな制服を着た美人揃いの客室乗務員たちで人気を集めている同社は、利幅が薄くブランドの印象維持が容易ではない格安路線の切り捨てに舵を切ることになった。

総体的には格安航空会社が従来型のキャリアに移行したように見えるが、実のところこれまでなかったちょうど両者の中間といった具合の新しいタイプのエアライン、つまりお役所的ではなく使い勝手の良い航空会社として今後も更に発展していくことと思う。

この10年ほどで、インドの空の交通機関のありかた、ネットワーク、料金は大きく変化している。もちろんインドに限らず、中国、アセアン、ガルフその他のアジアの多くの地域で同様だ。

だが便利になった、と感心ばかりしてもいられない気がする。人手不足で給与が高騰しているパイロットはともかく、その他の職種で航空業界に務める人たちの労働条件は、この間にどのように変化していったのかということも気になる。

新規参入した会社が多数あり、業界全体の事業規模が飛躍的に拡大した結果、雇用者数が急増したことは容易に想像できるのだが、旧来からの航空会社に勤務の大多数の人たちにとっては、年々条件が厳しくなる苦難の10年だったのかもしれない。

便利になるということは、往々にしてそのサービスを生業にしている人たちにとっては、当然の帰結として従前よりも重いノルマ等が課せられるわけで、同じ一続きの世の中で暮らしている以上、顧客たる私たちにとっても対岸の火事ではない。回り回って我が身にも降りかかってくることなのだ。

キングフィッシャー・エアラインスの『レッド』部門切り捨てにより、これまで同社の路線拡大に大きく貢献してきた、切り詰めたコストの中でいろいろ使い回しされながらも頑張ってきた人たちが、今後どのような処遇を受けるのかということにも思いが及ぶ。

現場で汗をかいて働く人たちはもちろんのこと、ホワイトカラーの間でも、エア・デカンの買収により、キングフィッシャー・レッドに移行した人たちには、厳しい処遇が待ち構えているのではないかと思うと、同じ生活者として非常に気の毒である。

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