ネパール 王室廃し共和制へ

ギャネンドラ国王
マオイスト勢力の圧力を受けて、ネパールの王室が廃止されることが確定した。1599年のゴルカ王国成立から数えて400年以上、同王朝を率いるプリトヴィー・ナーラーヤンが1768年にマッラ朝を倒してネパールを統一してから240年の長きに渡るシャハ王朝の歴史に幕を下ろすことになる。
90年代初めにそれまで国王による事実上の専制状態から立憲君主制へと移行したものの、議会の混乱やマオイスト勢力の伸長などにより、長く不安定な時期が続いたネパール。2006年に国名がネパール王国からネパール国へと変更された。それまで世界唯一のヒンドゥー教を国教としていたこの国が世俗国家となり、それまでの王室を讃える歌詞内容の国歌が廃止された。しばらくの空白期間を経て、今年8月に新国歌制定が宣言されることとなった。
今後共和制に移行するとともに、王の肖像をあしらった紙幣、王室を象徴する要素の強い国旗のデザイン、国旗を上部にあしらった国章についてもやがて変更されることになるのだろう。
ネパール国旗
ネパール国章
かといって、これらが人々の生活の向上に直接作用するとは思えないし、国内が確実に安定へと向かっているのかどうかはわからない。こうした象徴的な事柄や制度が改められていく背景にある本質的なものとは、近年のこの社会の様々な方面における力関係の大きな変化に他ならない。
とりわけこの国の政治権力構造で浮沈の激しいいわば『戦国時代』が続く中、かつてこの国を名実ともに支配していた王室という伝統的な政治パワーが、表舞台から公式にドロップアウトすることとなる。今後のネパールは融和と安定へと向かうのか、それとも衝突と分裂の歴史を刻んでいくことになるのだろうか。この国から当分目が離せない。
今ネパールで起きていることや現在進行中のこうした動きなどについて、近隣国のブータンも慎重に分析していることだろう。国内に退位を求める声が起きていないのに、それまで権力を握ってきた王家が自主的に民主化を進めるという世界的にも稀有な例を世界に示している同国。その背景にはいろいろあるのだろうが、隣国の情勢を踏まえての強い危機感もまたこれを決断させたひとつのきっかけとなっているのではないだろうか。
Federal Republic of Nepal, 601-member CA agreed
(Kathmandu Post) 
Nepal strikes deal with Maoists to abolish monarchy
(Hindustan Times)

「ネパール 王室廃し共和制へ」への3件のフィードバック

  1. 民主化なんて、単なる隠れ蓑にすぎないので、注意。
    ついにネパールは、シナの属国になりはててしまった。
    次はブータンか?
    そしてその次は、日本か?
    テロを起こす非合法組織を支援し、やがて合法化させて国政に参加させる。
    日本でも同じことが、前後すぐ始まり現在も続いている。
    気をつけましょう。

  2. ogataさまへ 最近、ネパール関連の記事が多くて、うれしい想いをカトマンズで抱いております。
    さて、王制廃止と連邦共和制の導入ですが、今年4月10日と云われている(でも、実施できるかどうかは分からない)制憲議会選挙で選出される議会の初日、これを承認してから、新しい政治形態として導入されます。
    選挙が出来るのか?国王やその支持者が黙って、王制廃止を受け入れるのか?国軍の動きは?また、インド共和国政府も懸念を表明している模様で。
    いやはや、時代の転換点を我が目で、ネパールで見ることが出来る我が人生は、ある面、幸せだと思います。やせ我慢?しっかり目を見開いて、事態の推移を見続けます。
    ogataさん、これからもネパールに注目してください。

  3. 空の下ミキさま
    どうもありがとうございます。計画停電などでネット環境は厳しそうですね。そんな中でアクセスしていただけてうれしいです。
    山の景色はゆったりしていても、人間の世の中とりわけ政治の世界はものすごい勢いで音をたてて動いているようで、先行きが見通せないだけにとても気になっています。
    「ネパールの空の下」からのフレッシュな記事を楽しみにしています。

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