犯罪部族と呼ばれて・・・

英領時代の1871年に制定されたCriminal Tribes Actsという法律により、当初約150の部族を、世襲的に慣習的かつ組織的に犯罪にかかわる傾向が非常に強いコミュニティとして、Denotified Tribesの指定することとなった。ひとたびこの範疇にカテゴライズされると、そのコミュニティの成員はすべて行政当局に登録することが義務付けられ、これを怠ること自体も違法行為として取締りの対象となった。
常時犯罪者予備軍として監視されることになったコミュニティ内の6才から18才の子供たちは、犯罪に走ることを防ぐために、家族から引き離されて矯正学校に収容されることもあったという。今にしてみれば、ずいぶん乱暴な措置ではあるが、その背景には各地で頻発する盗賊や追いはぎなどへの対応に手を焼いており、当時の行政側としては治安確保のためになんとか対策を練らなくてはならないという時代の要請があったのだろう。
それまで主に移動しながらの放牧により生計を立て、訪れた土地の村落での自分たちと村人双方が必要とするものを交換するなどして地域社会の一翼を担ってきた。しかし度重なる飢饉や英領下での各地道路網の整備や鉄道の大建設時代に入るなどといった世相の変化が起きたことが、彼らを社会から弾き出してしまう遠因となったらしい。交通の発達にともない、それまでより多くの物資がより迅速に国内を行き来するようになった。そのため遊牧生活をしていた彼らが、それまで地域の村落に持ち込んでいた物資が次第に必要とされなくなってくる。次第に生活の糧を失っていくにつれて、それと引き換えに犯罪に走るといった傾向があったという話は、それなりの説得力を持つものではある。
この法律は幾度かの改定を経てDenotified Tribesに指定されるコミュニティを追加していったが、インド独立後1952年に廃止されることとなり彼らは解放されることとなる。だが従前の法のエッセンスを引き継ぐHabitual Offenders Actsという新たな法律が1959年に成立し、英領時代に監視の対象となった部族たちは、その後もDNTsからこぼれ落ちてしまっているグループも多いいらしい。他の多くの指定カースト・指定部族の人々と比較した際の大きな違いは、近代化とともに定住する傾向が強まってきていると (Denotified and Nomadic Tribes)として、社会の中で疑惑の目で見られる状態が続く。その数2500万人といわれるが、6000万人に及ぶという説もあるようだ。
この中で指定カーストないしは指定部族にカテゴライズされ、それなりの社会的メリットを得ている人々は少なくないとはいえ、そのセーフティネットの網はいえ、元来は土地を所有せず定住地も持たずに移動生活を続けてきた人々であるようだ。欧州におけるジプシーもそうだが、土地にずっと長く住んでいるたちにとって、流浪の民とはどこか胡散臭く感じられる存在なのかもしれない。現在では都市部のスラムに住むDNTsも多いという。
こうした部族たちについて書かれた本はいろいろ出版されているようだ。
・The Criminal Tribes in India / S.T. Hollins / Nidhi Book Centre
・State and Criminal Tribes in Colonial Punjab: Surveillance, Control and Reclamation of the ‘Dangerous Classes’ / Andrew J. Major / National University of Singapore
・A Nomad Called Thief / G.N. Devy, / Orient Longman
・Branded by Law / Dilip D’Souza / Penguin India
こうした人々の起源はもちろんのこと、彼らが現在置かれている状況等についても関心を引かれるところである。
DNTsの中の一部族、近く予定されているグジャラート州議会選挙で同州に住むDaferというコミュニティが初めて投票するとのことで、BBC NEWSが写真入りで彼らの暮らしぶりなどで紹介している。
In pictures: Gujarat’s nomad voters (BBC NEWS South Asia)

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