百花繚乱の高倍率ズームレンズ

CANON EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS
例によって『インドでこんなレンズどうだろう?』というテーマである。9月下旬にキヤノンからEF-S 18-200mm F3.5-5.6 ISというレンズが発売される。APS-Cサイズのセンサー搭載のモデル専用のもので、同社の新型中級機50Dの発売に合わせて発売されるのだ。私自身はいまだ20Dを使用しておりこれで大いに満足しているものの、レンズについては腹の奥底で『これ欲しいぞぉ~』と欲望うごめいている今日このごろである。
18-200mm域の手ブレ補正付きというタイプは、A0S-Cサイズのセンサー搭載のカメラのユーザーたちの間では、その利便性の高さから汎用ズームレンズの標準のような存在になっていた。顧客のニーズをつかむマーケティグの巧みさで他社を寄せ付けないはずのキヤノンが、何故か大きく周回遅れでこのホットな市場に参入してきたことになる。
今後低価格モデルが出てくればフルサイズのセンサーを持つカメラに移行しようと思っている場合、将来性に不安があるかもしれないが、もはや中級機以下のモデルではAPS-Cサイズのセンサーがしっかりと定着していることから、今後もある一線を境にしてフルサイズとの棲み分けがなされていくのではないかと個人的には予想している。
ところで、この18-200mmというレンジは銀塩の35mm換算で約29-320mmに相当する。旅行用にはちょうど良い具合で、あまり欲張らなければ通常これ一本でほぼ用が足りるだろう。しかもおよそ4段分の手ブレ補正機能付きであり、利便性において実に申し分ない。
ワイド端約30mmでの手持ち限界スピードが、一般的に手ブレ補正無しで約1/30であることを例に挙げてみよう。一段ごとに1/15, 1/8, 1/4, 1/2・・・つまり4段分といえば、ワイド端部分で半秒というオドロキのスローシャッターが手持ちで可能となるわけであり、日の出前や夕暮れどきなどで大いに威力を発揮することだろう。最近のデジタル一眼レフ、とりわけ高感度域でのノイズの少なさでも定評のあるキヤノンだけに、ちょっとした夜景も撮ることができるようになってくるのだからスゴイ。


朝が遅く、夕暮れが早く訪れる秋以降にはなおさらのこと出番が多くなりそうな手ブレ補正機能。テレ端が35mm換算で320mmに相当するテレ端にしてみても、1/20の低速シャッターが可能となるわけで、より速いシャッター速度が必要となる望遠域になればなるほど、その有用性は高くなってくる。野生動物保護区で野獣たちを追うには望遠が不足するものの、その他の場面においてはマルチパーパスに使い回せて、とても役立つことだろう。
もちろん個人差があるので、幾度か続けてシャッターを押してみて、どのくらいの歩留まりで成功するかという部分についてはなんとも言えないが、通常のレンズでは考えられない遅い速度でのシャッターが可能になることから手持ちで撮影できる領域の幅がグンと広がることは間違いない。
同種のレンズはここ数年間高い人気を呼んでいる。2004年6月にシグマから18-125mm F3.5-5.6 DCが発売され『コンパクトかつ高倍率で便利なズームレンズ』と注目を集めると、翌2005年3月にライバルのタムロンからテレ端を大きく伸ばしたAF 18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II LD Aspherical [IF] MACROを投入。シグマも負けじと同年4月に同じズーム域の18-200mm F3.5-6.3 DCで巻き返しを狙う。どちらも前年にシグマから出た18-125mm F3.5-5.6 DCとサイズ・重量とも同程度で、倍率が大きく上がった割には画質や描写において劣る部分もなかったことから評価が高かったようだ。
他社のカメラのユーザーには縁のないことだが、ニコンからもAF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6Gという、18-200mm域で手ブレ補正付きレンズが発売されたあたりで少し流れが変わったように思う。焦点距離の長い望遠レンズを除けば、手ブレ補正なんて素人がありがたがるものというイメージから、短い焦点域においても有用なことから、これを真に求める声が次第に大きくなってきた。
同時にデジタル一眼レフの低価格化から、このタイプのカメラのユーザーが突如急増した。ファミリーユース向けに『家の中から運動会までこれ一本で!』という目的で高倍率かつ手ブレ補正付きレンズが重宝されるようになってきたことも、このタイプのレンズが流行る下地にあったようだ。もちろんなるべく荷物を減らしたい旅行先に持参するカメラ用としても非常に役立つことは言うまでもない。
その後2007年2月にタムロンから望遠部分を250mmまで延ばしたAF18-250mm F/3.5-6.3 Di II LD Aspherical [IF] Macroを加えて世間を驚かせた。同年6月にはシグマが手ブレ補正付きの18-200mm F3.5-6.3 DC OSを加えて機能面での差別化を図ってきた。またAPS-Cサイズ専用高倍率ズーム人気爆発のきっかけを作った18-125mm F3.5-5.6 DCの製造中止と入れ替わるように、2008年5月には同じく18-125mmをカバーする18-125mm F3.8-5.6 DC OS HSMが発売された。まさに時代はズームレンズに手ブレ補正搭載は当然・・・といった方向にある。
もちろんタムロンも近ごろ流行りの機能に関心がないわけではなく、AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACROを世に出したのが2007年3月。これは35mmのフルサイズのセンサーでも使用できるものであるが、APS-Cサイズのセンサーを持つカメラでは広角端が45mm相当となってしまうため、やはり18mmから始まるこの手のレンズが出ないものかと期待されていたようだ。
冒頭で触れたキヤノンのEF-S 18-200mm F3.5-5.6 ISが気になっていたところ、同時期にタムロンからAF18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical [IF] MACROというビックリの新鋭モデルが登場するとのこと。
AF18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC
これまで出てきたこれらのレンズに対する世間の評価は『手ごろな価格のズームレンズの割にはいいじゃないか』とまずまずで、酷評されているものは特にない。だがもともと高倍率のズームレンズは画質・描写等で過大な期待をするようなものではない。よほどひどい写りでもない限り、高倍率ズームの美点とはすなわちその高倍率でカバーしている焦点域の広さにあると思う。テレ端がF.6.3と暗いのが気になるが、そこは手ブレ補正搭載ということで良しとするべきだろう。
描写特性や光学性能等に対する評価等については専門誌等によるレビューを待つことにするが、APS-Cのイメージサークル専用の高倍率ズームレンズの開発ラッシュの中で、既存レンズと新開発のモデルとの比較を含めた検証が気になるところだ。私としては、キャノンのEF-S 18-200mm F3.5-5.6 ISか、それともタムロンのAF18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical [IF] MACROかと、目下大いに悩ましいところだ。すっかり購入モードに入ってしまっており、物欲に流されてしまいそうだ。あとは時間の問題だろうか・・・。

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