一糸まとわぬ姿のセキュリティ・チェック

『搭乗の際には短パンとTシャツだけ着用ということになるんじゃないのか?』
知人とのそんな会話をふと思い出した。
2001年9月の同時多発テロ以降、どこの空港もセキュリティ・チェックが非常に厳格になった。その後も靴の中に隠した爆発物による爆破テロ未遂その他が続いたこともあり、液体物の持ち込みは100ミリリットル以内の容器複数個が、容量1リットル以内のジッパー式のビニール袋の中に納まる範囲のみ可能となった。
フライトによっては、空港の免税店で購入した酒類も持ち込むことができなかったり、目的地に着くまで乗り換えがある場合、そこから先の便へと持参することができなかったり。
私が利用したわけではないが、手荷物一切が禁止となり、透明なビニールの中に旅券や図書類のみ放り込んで搭乗するフライトもあった。当時、メディアでも大きく取り上げられていたので記憶している方も多いだろう。
安全第一とはいえ、セキュリティ関係のこうした事柄があまりに厳しくなってくると、乗客自身困ることだってある。
さりとて身の安全のための代償なので、粛々と従うしかないが、こんな世情を憂うしかないのか、それともほかに何か良い手立てはないのか?と思ったりもする。もちろん面倒に思うのは乗客だけではなく、空港当局関係者をはじめとするセキュリティ担当者たちも同様だろう。これにかかる手間ヒマ、人件費だって相当なものであるはず。
そうした中、『確実に安全というならば、手ぶらで裸で搭乗させるしかないんじゃないのか?』などと話しているうち、『まあ、最低限の服装ってとこなのかな。下着姿でというわけにもいかないだろうし』ということで、冒頭の話になったわけである。
ところが世の中はそんな冗談みたいな方向に進みつつあるようだ。イギリスのマンチェスター空港で、X線を使った装置で乗客を裸体に透視してチェックするというシステムがテスト運用されているとのことだ。
‘Naked’ scanner in airport trial 1 (BBC NEWS South Asia)
‘Naked’ scanner in airport trial 2 (BBC NEWS South Asia)
『ついに行き着くところまで来たのか・・・』という思いはするが、安全面という点のみにおいては、なかなかいいアイデアではないかとは思う。ただし倫理的にこうしたことが許されるのかという部分で、大きな疑問符が付く。文化的、宗教的に受容できないとする人も少なくないだろう。
加えて、当然のことながら、こうした映像がどこかに流出しないのかということを危惧する人も少なくないだろう。厳重に管理されているはずの重要な個人データが漏れるということは、どこの国でも決してあり得ないことではない。
もちろんこれが各地の空港で本格的に導入されたとしても、テロリストたちにとってはまだまだ攻撃を仕掛けるチャンスはいくらでも転がっているようだ。搭乗する飛行機に危険物が持ち込まれることはなくなっても、セキュリティ・チェックの場所までは誰に咎められることもなく、危険物とされるものを手荷物に隠して運ぼうと思えば容易にできてしまうような空港は少なくない。
航空機内でのテロが困難になったぶん、空港機能を停止させてやろうと、そうしたエリアが爆破テロという凶行の標的となることはないのだろうか。もちろん、こんなことを疑えばキリがないのではあるが。

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