料理屋さんもそれぞれ


 ひと昔以上前、『エスニック料理』なるコトバでひとくくりにした『非欧米・中華』のガイコク料理がもてはやされた時期があった。東南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカの実に様々な料理すべてが『エスニック』であり、もちろんインド料理もその範疇に含まれていたと記憶している。ちょうどそのころだったと思う。これら種々雑多な食事をメニューに網羅する『多国籍料理屋』なるものが出現したのは。
 その後、人気躍進したタイ料理やマレー料理のなどは『エスニック』のカテゴリーから独立し、外食の新たな人気ジャンルとして定着。もちろんインド料理も同様で、従来からラーメンやうどんといった、サラリーマンのお昼の定番アイテムのひとつとしての『カレー』とは全く違う『インドカレー』として、街角にごくありふれた身近な存在となり現在にいたっている。
 だが『インド料理』といったところで、インドという国がそうであるように、何かをもってインドの料理であると簡単に定義してしまうのはむずかしいところだ。それでも現在日本にあるインド料理屋の大部分が北インドの料理、とりわけパンジャーブ料理やムグライ料理といった北西部の食事を出していることが多く、そうしたものが『典型的なインド料理』ということになっているようだ。
 それはそれで別に悪いことではないのだが、『インド料理』の看板を掲げて同じようなものを出していると思われる店の中にもいろいろある。料理屋で本のレシピに書かれているスタンダードなものばかり出す必要はないし、それなりに独創的なアイテムでお客の目や舌を楽しませてくれるのは結構なことなのだが、かなり不思議なものに出くわすこともある。たとえば魚のカレーを注文してみたら鮭が出てきたり、タンドゥーリー・チキンを頼むと赤く染めた鶏肉の唐揚が出てきたりなどといったところだ。
 ごく一部だとは思うのだが、『店先や厨房にインド人を配置すればそれらしく見える・・・』と思ってか、いい加減なものを出す店はままあるように見受けられる。
 少し前に日本の新聞のウェブサイトでこんな記事を目にした。
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「真の和食」にお墨付きマーク 仏で偽物の苦情増え(asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0701/009.html
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 インド料理店が増殖を続ける中、『ウチはちゃんとしたのを作ってるよ』という認証みたいなのがあってもいいかもしれない。
 皮肉なことに、妙なものを出しているところはお客が来なくなって早々に店をたたんでしまう・・・わけではなく、いつも結構込み合っていたりする。
 それだけに『悪貨が良貨を駆逐する』みたいなことになっては、真面目に頑張っている料理屋さんが気の毒ではないかと思うのだ。

「料理屋さんもそれぞれ」への2件のフィードバック

  1. 15年以上前にパリの「ふじた」という有名な鮨屋にいって、〆にお茶漬けがあったので頼んだら、初めて味わうエスニックな味のスープで驚きました。その後バンコクでカオトム(鶏出汁の粥)を食べて、これがパリで食べたお茶漬けだったと気付きました。
    パリの中華、韓国、日本料理屋で働く東洋人は
    実はラオス人が一番多く、ラオス料理はタイのイサーン料理に非常に近いことをその後知りました。という訳で、私にとっては変なお茶漬け
    を食べたのはむしろ貴重な体験だったのですが。

  2. カオトム風のお茶漬けですか。おいしそうですねぇ。海外での和食もまたその国ごとのカラーがあったりしてなかなか楽しいですね。
    個人的には韓国で食べる和食(日式料理)も、本場ものより歯ごたえやコシがあり、かなりパンチの効いた味でなかなか気に入ってます。
    同じ和食をとってみても、その国ごとのカラーがあってなかなか面白いものだと思います。

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