いつもと違う『インドの味』

 90年代以降、日本における『インド料理屋』の拡大には目を見張るものがある。以前も書いたがオーナーはインドやパキスタンからやってきたパンジャーブ系、料理人はそのパンジャーブを含めた北インド各地およびネパール出身というケースが多い。
 その範疇に当てはまらないケースでも、日本のお客の間ですでにできあがっている『インド料理のイメージ』に対応すべく、前者の路線を踏襲したメニューが目立つことが少なくない。その結果料理のバリエーションはどこも似たり寄ったりということが多くなるのだと思う。
 ところがそうした風潮に風穴を開けるべく(?)立ち上がり、独自の世界を展開する『インド中華』を看板に掲げ、パンジャービー&ムグライ料理が支配的な日本のインドレストランの世界に果敢に立ち向かう店がある。
 それはインド式中華料理を標榜するレストラン『天竺』だ。厨房に立つ料理人はインド人、米はインディカ米を使用。発酵させたエビや魚など原料とする中華調味料を使わず、醤油、酢、トウガラシでストレートな味を演出。ちょっと硬派な『天竺』風味である。中華メニューとはいいがたいものの、『フライドチキン』を注文すると、鶏の唐揚ではなく豆の粉を衣にカラリと揚げた本格的なチキン・パコーラーが出てくるのはうれしい。
 サブカルチャーと新興宗教が目白押しの中央線西荻窪駅界隈は、実は隠れたグルメスポットでもある。海南鶏飯の『夢飯』、上海料理の『喬家柵』と、タイ料理の『ハンサム食堂』などといった知る人ぞ知る名店が揃う中で異彩を放っている。
インド式中華料理 天竺
東京都杉並区西荻北3-2-11ハイツそれいゆビル1F
電話03-3394-3238 火曜定休

「いつもと違う『インドの味』」への6件のフィードバック

  1. 日本のインド料理のお店に行くと、「本場! インド人シェフのインド料理・・・・」なんてうたっていますが、インドって広いんです。各州、それぞれ食文化が違います。最近でこそ日本にもいくつか南インド料理のレストランができたと聞きますが、まだインド料理といえばタンドリーチキンにナンに代表される北の料理が中心です。最近は鳥インフルエンザの影響で鶏肉料理を出さないホテルが増えています。
    チェンナイで生活して約2年、南インド料理を楽しんでいます。
    Yannick Yuichi O’HARA
    http://www.photohighway.co….

  2. インド中華の店。ディープですね…。もしや、ゴビー・マンチュリアンとかあるんでしょうか。アメリカン・チョップシーとか。パニール入りのフライド・モモとか。(苦笑) 恐るべし西荻。

  3. 一見ニッチな顧客層に思えるけど、西荻あたりではそうでもないのかもしれません。
    オープンして約1年とか。
    お店の人は「ウチってあまり知られてないんですよ」なんて謙遜してたけど、ニッポンの「インドごはん」の幅をグイッと広げるべく、これからもがんばってほしいと思います。
    ランチもいいけど、夕方フラリと立ち寄ってインド中華の小皿をサカナに一杯ひっかけるのもいいかも。

  4. 初めて書き込みします。コルカタで中華三昧、とても楽しく読まさせて頂きました。そして西荻窪のインド式中華のお店『天竺』までもが登場したので興奮しキーボードを叩いている次第です。
    『天竺』、行ったことがあります。お店の方から薦められるままに食べたフライドチキン、大変美味しかったです。マンチュリアーンは去年行った時点では置いてなかったですね。お店の方に尋ねてみたのですが、心当たりがない様子でした。面白かったのが『インド式中華式カレー』のメニュー。これは片栗粉が入っている「あん」状のやや透き通ったカレーで、スパイスが効いていて結構いけてました。
    『天竺』は、バングラデーシュ出身の男性と日本人の奥様が経営しているお店で、もともと西荻窪の北口に普通のインド料理のお店を構えていたようです。もう1つレストランを南口に出店するにあたって、また北インド料理じゃつまらないということでインド式中華料理を出すことにしたのだとか。
    北口のお店はオールドモンクを出している、知る人ぞ知る小さなお店だそうです。南口の『天竺』には、ラッシーとドッキングしたお酒が数種類置いてありました。オールドモンクは使っていないそうですがラム・ラッシーというドリンクがあり、1杯で結構いい気分になりました。

  5. 日本でインド中華を喰らう…
    コペルニクス的驚愕を覚えました。
    しかもお店は、僕の旧在住地だった西荻。
    さらに住所をみたら西荻の名物喫茶「それいゆ」のビルではありませんか!その近隣にはラディカルな沖縄居酒屋「馬ぐぁ」もありますよ。もう行かずにはいられません。
    まぁ、西荻・インドつながりでいえば、
    かつて駅北口近くにあった老舗風の饅頭屋さん(残念ながら閉店してしまったようですが)のたばこ売り場には、ずいぶん昔からビディーが売っていたぐらいですから、西荻ならばインド中華もありかもしれません。
    ただ、tamonさんが書いているゴビー・マンチュリアンやアメリカン・チョップシーが日本で食べられるとしても、果たしてオーダーするか否か、とてもディープに悩んでしまいます(笑)。
    それはそうと、今回の一連のインド中華コラム、おそらくいまの日本ではogataさんにしか書けないすばらしいものでした。次回、コルカタに行った際はogataさんのコラムを参考に徘徊してみようと思います。

  6. 同じ経営者による南口にあるお店、あの細〜い通りの雰囲気も面白いですね。
    おそらく昔々は『西荻版小便横丁』みたいなところだったのでしょうか。そんなムードを漂わせつつも、なんだかカトマンドゥのタメルあたりみたいなツーリストゾーン的なカラーを感じます。
    一見静かな住宅地のように見えながらも、実はけっこう楽しいスポットが隠れている西荻。今度じっくり探検してみようと思います。

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