鮮度が命!1 エコノミーなホテルは新しいほうがいい

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 カルカッタに着いた。とりあえず宿を見つけなくてはならないので、サダル・ストリートに向かった。市内各地にいろんなホテルがあるのにわざわざここに来なくてもいいはずだが、どこか「いい宿」の正確な所在地を知っているわけではない。だからタクシーには「サダル・ストリートまで」と告げることになってしまう。
 料金の割にかなり粗末なところが多いのは、カルカッタという大都会のためか、あるいは黙っていてもさまざまな旅行者たちが集まってくるためだろうか。
比較的コストパフォーマンスの高い宿は、たいていロンリープラネットのガイドブックお勧めであったりする。そのため正午あたりにでも着かない限り、往々にして満室なのである。私はすでに二件断られていた。
 どこかテキトーな宿がないものかな?と歩いていると、頭上に「OPENING SHORTLY !!」という垂れ幕がかかっていた。


 よくよく見ればそこに書き込まれた日付はすでに10日前のもの。すでに開業しているはずだ。示された方向へと進むと、まもなくその建物が見えてきた。まさに新築ピカピカである。
「ゲストハウス」なのに玄関には制服のドアマンがいて、うやうやしく扉を開けてくれる。入ってすぐのところがフロント。これもまばゆいばかりに輝いている。
 一泊385ルピー。界隈でこのクラスのホテルといえば、部屋の中にいるのさえ憂鬱だったりするが、ここはそれらのはるか上を行くどころか、その三倍以上払ってもいいような気さえした。本当はもっと値段が上のホテルを利用するつもりだったのだから。
 ここは廊下、客室そして浴室内の床材にちゃんとした大理石が使われているし、室内のデコレーションや装備も、このクラスとしてはちょっと尋常ではない気がする。新しい事業をスタートさせたばかりのオーナーの意気込みがヒシヒシと感じられる。
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 それはともかく「新しい」というのは本当に良いものだ。インドでエコノミーな宿に泊まるとき嫌なのは不潔さなのだが、それはメンテナンスの悪さから来るものである。新しいほど快適で古くなるほど不快度が上がるという単純明快にして普遍の法則がある。
 もちろんこれが上級のホテルになれば、マネジメントもメンテナンスの重要性を認識しているし、従業員への教育もしっかりしているので快適さと築年数がストレートに比例するなんてことはなくなってくる。
 まだ手垢のついていない「新品」が、たまらなく快適なのは、鉄道の車両でもバスでも同じこと。もちろんこうした大型車両よりも、街中で客待ちしている無数のオートリクシャーのほうが「新車」に当たる確率は高いだろう。
 見た目がキレイなだけでないのだ。走行中のガタつきはなく加速や減速もスムース。コーナーを曲がる際にボデイのカッチリとした剛性が感じられるようでもあり、特に根拠のない安心感のようなものがある。おかげでひとクラス上のクルマに乗ったかのような気さえすることだろう。
 さて宿の話に戻る。泊まってみてとっても快適であった。まだほとんど誰も泊まっておらず新築の匂いがする部屋だし、ベッドはもちろん毛布とシーツも新品、バスルームもピカピカでタオルも新品なのだ。もちろん部屋の扉やドアすべて不具合はない。
 とにかく新しいので従業員も礼儀正しくとってもキビキビと動いてくれる。フロントはU.P.出身の二人の若者が交代で勤務しており、その他雑用はダージリンから来たネパール系の少年たちが駆け回っている。サダル・ストリートからニュー・マーケットに向かう路地の途中に見えるのがこのホテルだ。
 だからといって「いい宿があったよ」と人に勧める気はしない。なぜならまず例外なく、時の経過とともに建物はボロくなり、従業員もスローでスリーピーになってくるからだ。民間のものでも公営のものでも、真新しいころ利用してみて気に入った宿を数年後再訪してみると、まったく別物になってしまってガッカリというのはよくある。
 そうした現象を私は「標準化」と呼んでいる。敢えて無礼を承知で言えば、周囲の同クラスのものと足並みを合わせ、地域の環境に馴染んでしまうプロセスのことである。
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One Response to 鮮度が命!1 エコノミーなホテルは新しいほうがいい

  1. CO2 says:

    ?いつも更新を楽しみにしつつ、毎回興味深く読ませてもらっています。
    今回の『標準化』という表現がなんとも的を得ていて、ウナズイてしまいました〜。
    例えば15年前にパリで泊まった当時新築のエコノミー宿。
    モダンでピカピカでどこも新しくて快適だったのに、去年14年ぶりに再来して泊まってみると、最低限の清潔さはキープされているものの設備はなんとなく劣化していて、あの時の『大当たり感』はなく、通常のエコノミー宿の設備とサービスで、ちょっとガッカリしてしまいました。
    でも、少なくとも金額相応のサービスと部屋の提供は受けたのですから、一般的な相場に『標準化』をしたと考えると、良くも悪くもなく自然の摂理と現象のように感じられて頷ける説得力があります。
    う〜む…コレは鋭い考察です。

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