鎌倉のガンダーラ仏

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 先月下旬、鎌倉の建長寺に、パキスタンから「釈迦苦行像」が寄贈されたとの報道がなされていたことを記憶されている方も多いことだろう。
 あまりにも有名で、ガンダーラ美術の最高傑作のひとつとされる仏像のレプリカだが、先の愛知万博の会期中パキスタン館で展示されていたものである。同国政府が当代一流の職人たちに作製させたこの像の素材はファイバーグラスとのこと。
 10月25日に「遷座奉迎式」が行なわれた同寺境内にある、法堂と呼ばれる建物の中に安置されている。ちょうど私は鎌倉で用事があったので拝観してみることにした。
 雲ひとつない晴天に澄み切った空気。暑さはもちろん寒さとも無縁、なにひとつストレスを感じないこの陽気。こんなパーフェクトで気持ちの良い天気は年に何日ほどあるだろうか。
 総門をくぐり梵鐘や三門などを眺めながら境内を奥へと進む。法堂の入口脇に「パキスタン国寄贈 釈迦苦行像」と毛筆で書かれた看板が置いてある。堂の中には入ることができないが、入口のところから中を覗くことができる。写真などで見慣れた像だが、やはり日本のお寺にあってはずいぶん異質な印象を受ける。それがゆえに、はるか昔、広い大地を越えそして海を渡り、ついに日本まで至った仏教がたどってきた気が遠くなるほど長い旅路、それを支えた信仰の力に対して畏敬を感じずにはいられない。
 わが国最初の禅専門道場であり、木造漆塗りの須弥壇、木造北条時頼坐像など、国の重要文化財をいくつも抱える建長寺に新たな寺宝が加わった。万博に出展したパキスタンによる素敵な置き土産である。
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鎌倉建長寺にパキスタンの国宝の複製が寄贈(愛知万博ちょこっと情報)

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