インドを撮ろう!

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 私たちが日常的に手にするカメラがほぼデジタル化されて久しい。汎用機から高級機種までさまざまなモデルが機能性や画素数を競い合い、短い商品サイクルで次から次へと登場しては消えていく。この流れは間違いなく今後も続くことだろう。
 ひとたびカメラや周辺機器を購入すれば、プリントせずパソコンで眺めている分には「撮る」コストが実質タダになる。手のひらに収まる小さな機種が増えており、また携帯電話にもカメラ機能が内蔵されるようになったので、写真を撮ることが以前よりもずっと手軽に、そして日常的な行為となった。デジタルカメラを手にしたユーザーがシャッターを切る回数は、銀塩時代の三倍以上になったと何かの記事で読んだ記憶がある。
 デジタル写真といえば、ひところまでは画質に満足できるようなものではなく、記録メディアの容量も小さくメガバイト当たりの価格が高かった。ちょっと撮ったらパソコンにデータを落とすか、CDにでも書き込む必要があり余計な荷物や手間がかかるので、旅行には種類やグレードを選ばなければどこでも現地調達できるフィルムを使用する従来のカメラのほうがよほど楽でもあったことがウソのようである。
 デジタルカメラの高画質化と低価格化が並行して進み、メディアも以前よりも安い価格で大容量のものが手に入るようになった。そしてパソコンを介さずメディアを挿入して直接書き込みできる画像データのストレージ機器が市場に出回っている。
 それだけではない。かつてはやたらと画素数にばかり重点が置かれていたのとはうってかわり、カメラそのものの表現力や機能性、そして操作性もずいぶん向上しているようだ。システムの設定等のスムーズな取り扱いはもちろん、電源を入れてからの起動時間、そして連写機能も飛躍的に短くなってきている。ユーザーたちの目的や予算により選択できる幅が大きく広がっている。


 こうした中で、数年前までは主にプロ向け、つまり業務用だった一眼レフ機。今ではずいぶん価格を下げて、しかもハンディにまとまったモデルが市場に出てきている。従来の銀塩一眼レフを使っていた人たちはもちろん、コンパクトタイプのカメラに物足りなくなった人たちからの買い換え需要は相当なものだろう。
 撮影後、結果を目にするまで時間と費用がかかった旧来の銀塩カメラと違い、デジタルはその場で確認できるのは大きな利点だ。すると「向上心」をくすぐられるニーザーたちは多いのだろう、このところ写真撮影のさまざまな分野でのハウツーものの本や機種別の「攻略本」が数多く出ている。従来の「現像」にあたる作業が、暗室などの専用設備がなくても自宅のパソコンで行えるようになったのはありがたい。撮影、レタッチ、出力のすべての工程が自分でできるとなれば、凝り性の人がハマるのは無理もない。
 ここしばらくの間で「アマチュア」ないしは「素人」写真はかつてないほどレベルアップしているのではないかと思う。
 銀塩カメラでの撮影にくらべてデジタルの場合、パソコンなどで拡大して眺める機会が増えたため、ユーザーたちは解像度やピントにもシビアになりつつある。そのため各メーカーともレンズの進化が著しい。
 また従来の35ミリよりもひと回り小さなAPSサイズの撮像素子を搭載するデジタル一眼レフ機が現在主流(よほど高級なモデルになれば35ミリと同等だが)となっている。画角がかなり狭くなり、35ミリの場合とはちょっと違ったレンズの品揃えが必要となるため、各メーカーとも新開発の「デジタル専用」モデルを次から次へと世に送り出している。18ミリから200ミリ(35ミリ換算でおよそ28ミリから300ミリ相当)までカバーする超高倍率レンズが登場する日が来るなんて、ほんの数年前には予想さえできなかった。
 こんな良い環境になってきた今、デジタルカメラで「被写体の宝庫」インドで大いに撮りたいと思う人は多いはずだ。
 撮影するコマごとにISO感度を変えられるのはとても便利だ。カメラボディをひとつしか持っていなくても、以前のように「ボディに入っているフィルム」でそのまま我慢して撮る必要がない。やや高価な機種になればISO800という高感度でも充分実用に耐える画質を得られるモデルさえあるので手持ちで撮影できる機会がグンと広がった。
 記録メディアにしてもデータストレージ機器にしても、ゴロゴロと沢山のフィルムのロールを持ち運ぶよりもずいぶん手軽なのも大いに助かる。手のひらにすっぽりおさまるストレージ機器で、容量が20〜40GBほどもある。これは写真の枚数にするとどれくらいになるだろうか。
 近年では保安上の理由から空港での荷持検査に使われるX線が強力になっているところが多いという。写真に影響が出ないかどうか気になるならば、フィルムを手荷物から取り出して検査官に直に手で調べてもらうか、旅行用品として販売されている鉛入りの専用袋の中に入れて通すしかなかったが、デジタル写真の場合は検査機器による影響がまったくないのもありがたい。
 デジタルならではの特徴のひとつに、ホワイトバランスが設定できることがある。照明の条件によって生じる色かぶりを、補正フィルター無しで防ぐことができる。 
 AWB(自動ホワイトバランス)は相当精度が高くなっており、状況に合わせて選択することができるプリセットモードを使わずにフルオートで撮ってもそうひどい失敗をすることはないだろう。ユーザー自身がホワイトバランスを設定できるように、いくつかのプリセットモードも用意されているが、これをマニュアルで設定することもできるので、さまざまな色みのかかった無数のフィルターがカメラに内蔵されているようなものである。
 後者の場合、必ずしも白地や18%のグレー地を撮影してバランスを取るだけでなく、色地を利用すればその補色、たとえば緑地を利用すれば赤色がかぶった画像を意図的に作ることもできる。アイデア次第で色合いも濃度もさまざまなフィルターを無限に持っているのに等しい。
 残念ながら私自身はそれらをフルに活用してクリエイティヴなことをするワザも知識も持ち合わせていない。それでも自然も人造物もカラフルなインドの風景の中でいろいろ楽しんでみたくなる。一度機材を購入すればいくら試行錯誤しても費用はゼロ。かかるのは時間だけだ。
 ひとつ気になるのはゴミの問題だ。従来のフィルムならば表面に小さな異物がついたところで、一枚一枚撮影するごとに前に送られてしまうので問題なかったのだが、デジタルの場合は撮像素子がシャッターの裏側に固定されているため汚れが蓄積してしまうのだ。
 街中でも田舎でもとかくホコリっぽいインド。屋外でのレンズ交換をなるべく避けていても、絞り込んで撮影すると画面に点々とシミが付いているのが見える。カメラ本体のメニューの清掃モードでミラーアップして撮像素子を大きなブロアブラシで吹いてみても、こびりついてなかなか取れないゴミもある。だからといってレンズ交換するのが億劫になるようでは何を好き好んでわざわざ一眼レフを手にしているのかわからなくなってしまう。 
 ごく例外的に一部の機種では対策が施されているのだが、他はまったく無防備。今後各メーカーでゴミ対策にマジメに取り組んでもらいたいものだ。
 カメラのタイプはともあれ、撮りたくなるもの、美しいものにあふれる豊かな大地へ愛機を片手に旅に出てみよう。ファインダー越しに被写体をじっくり眺めてみれば、今まで気がつかなかったものが見えてくることだってあるだろう。カメラは記録するための道具であるだけではなく、豊かな表情に満ちたインドを見つめる第三の眼となるに違いない。

「インドを撮ろう!」への2件のフィードバック

  1.  はじめまして。
    このカメラはニコンかしら? 今日夫が買ってきた物と似ているわ! とっても詳しいんですね! インドだ〜い好き。インド病な私はまたまた、なんとか、『インド行こう!』って言わせたいんですが・・・・・どこ撮っても絵になっちゃうインドは、むずかしいかな? 今後デジタルでどんなのが撮れるか楽しみです。

  2. 今年は普及機が続々と登場しているので、一眼レフの分野でも銀塩タイプが片隅に追いやられてしまう日がすぐそこまで来ているようです。
    この夏はご主人をうまくその気にさせて、インドでいい写真を沢山撮って来てくださいね!

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