『1857』から150年 大反乱ツアーが旬

インド大反乱
近ごろイギリス発のツアーで、植民地期のイギリス人たちの足跡をたどる企画モノが静かな人気を呼んでいるらしい。名付けてCemetery Tour、つまり墓地巡りである。もちろん墓場だけを次々と訪れるわけではなく、要は昔在住していたイギリス人たちゆかりの数々のスポットが見物の対象となっているのだろう。
当時のインド統治に何がしかの縁があった人たちの子孫が先祖にかかわりのあった土地を訪れるという心情は何となくわかるような気がする。また直接自分の家系とは関係なくとも、英印の歴史の深いつながりからそうした企画旅行に興味を持つ人は少なくないはずだ。
ただ闇雲に墓地を訪れて景色を眺めていてもあまり面白くないことだろうが、これらの墓について貴重な情報源となるソースもあるようだ。亜大陸に散在する外国人墓地に関する記録を管理する組織、BACSA (British Association for Cemeteries in South Asia)という団体がある。
BACSAの出版物紹介ページにアクセスしてみると、タイトルを目にしただけでちょっと手にとってみたくなる出版物が並ぶ。
1976年に設立された組織だが、こうした活動を可能としているのは、やはり几帳面に書き記すこと、物事の詳細を記録しておくことに長けたイギリスの偉大な遺産のひとつといっても良いかもしれない。
パッと眺めただけでは誰のものかもよくわからない墓石が並ぶ空間を、かつてこの大地で自分たちの歴史を築いてきた人々の存在の証明とし、そこをわざわざ遠くイギリスから観光客を誘致するテーマと成し得るのは、豊かな情報の蓄積や知識の裏づけあってのことだろう。


とかく『旅行のテーマ』には事欠かないインド。遺跡、伝統、自然、宗教、登山等々に加えて近年では医療も新たなジャンルとしてしっかり根付いたこの国で、『墓地巡り』は地味ながらも最新のトレンドのひとつになりつつあるらしい。
こうした流れがしばし続いた中、今年2007年、日本で広く『セポイの反乱』として知られる1857年に起きたインド大反乱から150周年ということもあって注目度も高く、こうしたツアーはなかなか好調だという。
しかしこの歴史的な大事件発生からの節目ということもあり、今年はむしろ『大反乱ツアー』のほうが注目度は高いようである。インドでは最初の反英独立闘争という位置づけがなされているため、墓地巡りと違って地元インドの人々の間の注目を引くことができる。
『大反乱ツアー』は英印両国の観光客の間でなかなか売れ行き好調であるということだ。インターネットでちょっと検索してみただけで、ずいぶんいろんなエージェントから同種の企画ツアーが出ていることがわかる。
☆インドのトラベル・エージェントの企画ツアー
Mutiny 1857 India Tour (Oasis Excursions India Pvt.Ltd.)
Mutiny 1857 India Tour (Parveen Paul)
INDIAN MUTINY TOUR (PK Tour & Travels)
The Secrets Of Indian Mutiny (Max Holidays India Pvt. Ltd.)
☆イギリスのトラベル・エージェントの企画ツアー
Indian Mutiny 1857 – 150th Anniversary (Remembrance Travel)
The Indian Mutiny: 150th anniversary tour (Ian Fletcher Battlefield Tours)
India: From Mahrattas to Mutiny (Midas Tours)
The Indian Mutiny (Holts Tours)
もちろん英印双方で同じ出来事について眺めてみても、人々の視点はもちろん興味を覚える部分や見聞きした内容から感じることはずいぶん違うことだろうが、国が違えば歴史解釈も異なるのは当然のことだ。
ともあれこの大きな争いから150年後、両国が対等な関係にあり人々がその縁の地や戦跡等を自由にめぐり、過去からいろいろと学ぶことができる今という時代を謳歌している姿を見て、当時戦火の犠牲になった人々や国土の荒廃により辛酸をなめることになった人々もどこか遠で『いい時代になったものだな』と喜んでくれているのではないだろうか。
時代を揺るがす大事件の発端を開くことになった人物を描いた映画Mangal Pandey: The Risingを観たり、大反乱に担ぎ出された結果、イギリスによる鎮圧後にヤンゴンに流されてそこで人生を終えることになったムガル朝最後の皇帝、バハードゥル・シャー・ザファルを描いたThe Last Mughal (William Dalrymple著 ISBN978-0-7475-8726-2)を読んだりしながらこうしたツアーに参加して、史跡等を目の前にしながら 大反乱について語るガイドの説明に耳を傾けて過ごす『インド旅行』もまた楽しかろうと思う。
この大事件が起きた1857年はまたインドを代表するビールのひとつキングフィッシャーの生産が開始された年でもある。操業していたのはインド南部のおそらく大反乱の影響をほとんど受けなかった地域ではあるものの、大反乱にまつわる史跡巡りを終えた夕方に『Since 1857』と記されたラベルを目にしながら一杯やれば、普段とちょっと違った味わいが楽しめるかもしれない。
kingfisher

「『1857』から150年 大反乱ツアーが旬」への4件のフィードバック

  1. 昨年の1月5日、友人宅のある田舎町(といっても人口数万?数十万のイスラーム教徒の町)Mubarakupurに数日滞在し、近くのAzamugarhからラクノウにバスでむかった。6日Residencyとよばれるイギリス人居住地の跡を散策。2000人の男女、子どもたちが眠っているという墓地は以外にも若い男女がたくさん。何事かとおもえば、逢引の場所となっており、中には平気で接吻しているカップルも(初めてインド人のそんなシーンを見た)。カメラをぶら下げ墓石を撮っている一観光客の自分はなにやら怪しい人物に見えただろう。

  2. 男女ともに心ときめいているんでしょうね。私にはすでに妻がいるのでどこかで新たにときめくことがあっても困るのですが、恋する人たちの気持ちはどこも同じですね。
    ただ国や地域によってはそうした自由な恋愛が成就しやすいところもあれば、けっこう難しかったり、ほとんど無理といったところまでいろいろ温度差が大きいことは如何ともしがたいのですが。
    でも身内付き合いが濃密な土地になるほど、親御さんたちがが釣り合いの取れた相手を決めるということのメリットも大だと思います。『燃え上がるような恋(!)』よりも、出会うきっかけはどうあれ、相互の身内たちを含めて互いに思いやってうまくやっていける相手であることが一番なんじゃないかな、と私は思います。
    恋愛感情だけでは結婚生活は続かないですからねぇ・・・

  3. ときめきの場所が植民者の眠る墓地とは意味深ですね。「偕老同穴」の愛を死者の前で誓っているのか。
    ダッカにあったアルメニア教会の敷地内はすべて墓地となっていました。妻が亡き夫に捧げた(あるいは逆)メモリーが刻まれていて、何か昨今の×一なんて軽く言われてる離婚ばやりの日本に較べ愛の永遠性?を感じさせられました。
    昔はよかったなあ、老婆(ラオポー)や。
    ちなみに僕も既婚者です。
    (ogataさんとは東京国際ブックフェアーだ会ってますよ)

  4. もちろんどなたかわかってました(笑)
    今後ともどうかよろしくお願いします。

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