先日、ZEE NEWSを見ていたら、スンダルバンのトラ保護区近くの村に侵入したトラが捕獲され、これを安全な場所に逃がしたという映像が流れていた。
YoutubeでもCNNが流した同じコンテンツを見ることができる。 侵入した村で、そこに暮らす人々による反撃を受けて負傷したトラは妊娠中。追われてヤシの木の上に避難していたところを、担当官たちが麻酔銃などを使って捕獲、そしてケガの治療をしたうえでトラ保護区内まで船で運搬し、マングローブの森林地帯で解放したものだ。
上記リンクのビデオは映像が終わってしまっているが、拘束を解かれたトラは河の中に停泊した船からビヨーンとジャンプして水中に飛び込み、河岸まで泳ぎついた後、泥地を跳ねながら彼方へと消えていった。
スンダルバンとは、世界最大級のマングローブ森林地帯で、そこに育まれた豊かな大自然と貴重な生態系、トラやカワイルカなどをはじめとする希少な生き物たちで知られる。ユネスコの世界遺産に指定されている。インドとバングラーデーシュにまたがる広大な地域であるが、前者側では『Sundarbans National Park』として1982年に、後者側では『The Sundarban』として1997年に登録されている。つまりひとつの広大な地域『スンダルバン』が、国境を境に別々の遺産となっている。
ラージャスターン同様、スンダルバンでも密漁によるトラの頭数の減少が心配されている。また本来開発が制限されている地域でありながらも、他地域からの人々の入植や伐採などにより、トラが生息できる環境がだんだん狭まってきていることから、彼らの行動圏と人間の生活圏の重なる部分が増えてきていることも大きな懸念材料だ。
スンダルバンで村人が『トラに襲われて死亡』といった事件はしばしばメディアで報じられるところだ。通常、トラは獲物の背後から奇襲することが多いという習性を踏まえたうえで、後頭部にお面をかぶったり、農業や養蜂などで作業をする場所の近くに囮の人形を置いたりして対策を講じているようだ。それでもやはりトラの行動エリアと重なる地域で寝食することのリスクを取り除くことができるわけではない。この大型肉食獣は、本来の『食物連鎖』では私たちヒトよりも上位にある動物であり、他の逃げ足の速い草食動物を狙うよりも、丸腰で単独で歩いている人間を狙うほうが簡単であることは言うまでもない。
西ベンガル政府には、Department of Sundarban Affairsという部局があり、スンダルバン担当大臣までいる重要な部署でもある。バングラーデーシュ政府には、そのものズバリ『スンダルバン省』なるものはないようだが、いずれの国も私たち人類が共有すべき貴重な『世界遺産』としてのスンダルバンをしっかり守っていって欲しいものだ。
しかしながら、ここにもまた人々の生活があり、行政にしてみても財政的な制約があることなどから、保護といってもそう簡単なことではあるまい。豊かな自然を破壊するのは人間だけではなく、ときにその大自然自身もスンダルバンを傷つけることがある。昨年11月にこの土地を襲ったサイクロンは、スンダルバンの大自然にも相当なダメージを与えたようだ。
ともあれ、WHTour.orgのサイトで、インド側とバングラーデーシュ側ともに360度画像でちょこっと垣間見てみるのも楽しいし、Digital GrinのBangladesh – In search of Man-eaterで、最近のスンダルバンの画像を眺めながら、広大なデルタ地帯に広がる深いマングローブの森林に想いを馳せてみるのもいいだろう。