手ブレ補正機能が欲しい

高倍率のズームの良いところは、それ一本でとりあえず何でもできること。しかも手ブレ補正付きとなればなおさら。旅行先はもちろん、休日に界隈を散歩なんていうときにも手軽で便利。目的や状況に合わせてレンズ交換できることがメリットの一眼レフカメラなので、オールマイティなズームレンズ一本ですべて撮っているという人はまずいないだろう。でもお気に入りのいくつかのレンズに合わせて、こうした応用の効くレンズは誰もが持っているはず。ズームはさておき『手ブレ補正はヘタな奴が欲しがる』なんていう人を見受けるが、これはとんでもない偏見だ。
もともとブレを生じやすい焦点距離の長い望遠レンズに使われる機能である。これがいつごろからか普及タイプのコンパクトデジタルカメラによく手ブレ補正が搭載されるようになった。当初はなぜスナップ用のこうしたカメラにそんな機能が必要なのだろうかと怪訝に感じたこともある。だがこれには消費者側に問題?というか、ユーザーからの求めがあったのだ。カメラがデジタル化し小型化も進んだ。機器の価格も安くなったので、日常的にカメラを持ち歩く人が増えた。するとユーザーにもいろんな人たちが出てくる。


最近のコンパクトデジカメは高倍率のズームレンズを搭載しているモデルが多く、テレ端が300mmを超えるものも珍しくない。コンパクト機でそんなものが要るのかといえば、そういうモデルを欲しがる人がいるからということに尽きる。こうなると手ブレ補正を搭載しないと、よほど条件がよくないと使えないズームになってしまう。
もっと根本的な問題もある。カメラから顔を離して液晶画面を見ながら撮影するというスタイルでは、慣れない人はブレを生じがちであることは言うまでもないのだが、観光地などで見ていると、驚いたことに片手でカメラを持って「ハイ、チーズ」なんてやっている人がけっこういる。ブレが生じないほうが不思議だ。こういう無理な使い方を棚に上げて「写りが良くない」「ブレる」「ボケる」なんて文句を言われるメーカーはたまったものではないだろう。
しかしユーザーあっての商売なので、これらについてマジメに対応した開発者たちが、そんな風に扱っても『ブレにくい』カメラを設計して世に送り出すと、これが人気を呼ぶようになり、いつしか手ブレ補正が定番となってくる。こうした背景を踏まえると、こうした機構について「あんなものは!」という批判的な声があるのはわからないでもない。
本来焦点距離の長い望遠レンズでの手持ちでの撮影の限界を抑えるために導入された仕掛けだ。だがもっと焦点距離の短いレンズにあっても、極端な話広角レンズだって、照度が足りずに三脚が必要となる場面でも、手持ちで撮影できるシーンが多くなる。手ブレ補正が付いているレンズで、この機能をオンにしていると電池の消耗が早くなるという欠点はあるが、通常3段から4段分ほどの補正効果があるので、早朝、夕暮れ時、照明の付いた街中、それに条件さえ良ければ夜景だって手にそのまま構えて撮影できてしまう。より少ない道具でより楽に撮影可能なフィールドが広がるのだから、決して悪い話ではない。無いよりもあったほうがベターだ。
昨年10月にタムロンから28mm-300mm F/3.5-6.3 XR Di VCというレンズが発売された。フルサイズのセンサーを持つデジタル一眼レフを持っていれば、この一本で広角から望遠までとりあえずひととおりの用が足せて重宝するだろう。でAPS-Cサイズのセンサーの中級機以下のカメラを使用しているならば、この28mmからというレンジは標準レンズ近い画角に相当することになってしまう。今のところこのクラスのカメラのユーザーたちにとって、オールラウンドなズームかつ手ブレ補正付レンズとなると、シグマの18-200 F3.5-6.3 DC OS / HSMが最も便利だということになる。あるいは近い将来タムロンのAF18-250mm F/3.5-6.3 Di II LD Asphericalに手ブレ補正機能が付いたら、これまた魅力的なものとなるだろう。
でもこうしたレンズが増えてくるのは果たして良いことになのかという疑問もある。なぜかといえば、だが二大巨頭のキヤノンとニコン以外のメーカー、つまりソニー、ペンタックス、オリンパスといったメーカーは、ボディ自体に手ブレ補正機能を搭載するようになってきているからだ。どのレンズで撮影してもこの機能が使えるには大きなメリットである。この機能はレンズよりもボディ側に普及して欲しい。
手ブレ補正を特殊なオプション的な機能として位置づけ、これに対応するいくつかのレンズを商品ラインナップに加えている二大メーカーにとって、かなり頭の痛いところではないだろうか。もちろんユーザーにとってどちらがいいのかは火を見るよりも明らかだ。現在発売されているデジタル一眼レフには、従来このタイプのカメラの天敵だったホコリ付着を防止する機能が普及している。次はこの手ブレ補正の関係が争点となっていくのではないかと思う。
おかげでより軽い荷物で、より気楽に撮影を楽しむことができたら、被写体の宝庫インドでも大いに役立つこと間違いなしだ。

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