未だ見ぬ『怖い新型インフルエンザ』

日本では学校の新学期が始まり、新型インフルエンザによる学級閉鎖等のニュースがメディアに登場しない日はない。自らはかかっていなくても、身の回りに罹患したことのある人があるという方は少なくないだろう。
早いうちに罹ってしまって、免疫とやらを獲得するのもいいかもしれないが、我が家の下の子供はまだ1歳。私が罹患するということは、自動的に家族も感染・発病してしまうということで、特に乳幼児は新型・季節性を問わずインフルエンザ脳症のリスクが高く、何としても新型に対するワクチンを接種させるまでは、少なくともこの新しい病気をもらってこないことを願っている。
この病気があまりに一般化してしまい、発生件数をカウントすることに意味がなくなってしまったこと、加えて症状や治療方法等が他のA型の場合と変わらないことから、医療機関で簡易検査を行なってA型であることが判明しても、特に新型か季節性までを確定することは通常行なわなくなっているようだ。この時期インフルエンザにかかるということは、非常に高い確率で新型であるということもあるだろう。
新型インフルエンザ – Googleニュース
新型インフルエンザの出現と流行に関しては、他の多くの地域よりも遅れたインドでもSwine Fluとして、やはり同国のメディアにはよく取り上げられている。患者数もかなり増えてきている。
Swine Flu – Google news
本日時点までで、これまでバンガロールだけで36名が死亡しているとのことだ。その他各地で相当数の方々が亡くなっており、類型の死亡者数は9月5日時点で125名を越えている。適切な医療へのアクセス、生活水準等の問題から、特に社会的に弱い立場の人々の犠牲が多いのではないかと思われる。
貧困層の乳幼児や老人、元気なはずの世代でも日銭を稼いで何とか大家族を養っており、体調が思わしくないからといって休めないような人々の間で感染が広まれば、それなりの割合で重症化することは容易に想像がつき胸が痛む。
新型ということで、このタイプのインフルエンザの出現以降、これまで罹患したことのある人を除き、誰も免疫を持っていないため、今後どのように流行していくのか注目される。
新型の毒性は季節性と同程度とはいえ、私たちがこれまで冬になるとよく罹ってきた通常のインフルエンザにしても、持病のある人は重症化しやすく、乳幼児や高齢者もリスクが高く、健康な大人でもこじらせると厄介なことになったりする危険な病気であった。日本だけでも毎年インフルエンザに罹患したことにより、あるいは合併症などを起こして亡くなる方々は1万人以上であるとされる。
現在言われているところの『新型インフルエンザ』のみが怖いのではなく、これまで私たちが慣れ親しんだ?季節性のものも含めたインフルエンザという病気全般が、これと同じ程度に危険なものであることを認識させてくれる機会になったと言えるかもしれない。
数年前から『遠くない将来、新しいタイプのインフルエンザが出現する』という前提のもとで、WHOならびに各国政府が新型インフルエンザに対する行動計画の策定を進めてきた。その進捗状況には国・地域差があったものの、先進国を中心に概ね本格的な体勢が整ってきたところで、今回の新型インフルエンザ出現となった。
世界各地で蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、関係当局はその対応に忙殺され、メディアは煽り立てて、騒動に拍車をかけてきた。まさに『予想されたパンデミックの最中』に私たちはある・・・ということになる。
だが『ちょっと待ってくれ』と言いたいのは私だけではないだろう。確かに新型インフルエンザが出現した。だがこれはここ数年来危惧されていた高病原性のH5N1型トリインフルエンザではなかった。現在までのところ、トリからヒトへと散発的な感染が観察されていることからWHOの言うところの『フェーズ3』にある。
遠からず、トリインフルエンザが、これに感染したヒトからヒトへと効率よく感染が広まっていく状態が現れることが予想されており、しかもこれまでトリから感染したヒトの死亡率が約6割という。世界的に大きな災厄を及ぼすことが予想されているインフルエンザである。
今回、意外な『伏兵』の登場により、私たちが本当に気をつけなくてはならない真の敵に対する注意が散漫になってしまっているように感じられてならない。目下、流行している『新型』対応のワクチン生産その他に対して持てる力の大半を注ぎ込んでしまい、いつ出現してやろうか・・・と機会をうかがっている『本命』に相対する余力は残っているのだろうか?と少々心配になったりする。
もちろん、このたびの毒性の低いインフルエンザの流行は、やがて来るであろう『危険な新型』に対する予行演習にはなるだろう。これまで想定してきた対策のうち、何が有効で何がそうでないのか。新たにどういう対策を打ち出すべきなのか、いろいろ検証できることと思う。
私たちが肝に銘じておくべきことは、目下『とうとう怖いインフルエンザがやってきた』のではなく、近い将来『本当に怖いインフルエンザがやってくる』ということである。

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