インドからの贈りもの

象のインディラ
 NHKの番組「その時歴史が動いた」(9月22日放送)によると、9月23日は、戦後の日印関係を記念する日であるそうだ。1949年にインドのネルー首相から日本の子どもたちへ向けて、東京の上野動物園に贈られた象のインディラが芝浦埠頭に上陸した日である。上陸してから上野動物園まで、インド人の御者が上に乗って誘導する様子も、白黒映像で紹介されていた。
 戦時中、空襲で檻が破壊されて動物たちが街に出てしまうのを防ぐ目的で、当局の命令によってこれらを処分した話は、「象のいない動物園」という本やアニメによって日本の子どもたちにもよく知られており、戦争の悲惨さを伝えている。
 だが私自身、象のインディラがどういう経緯で日本に寄贈されたのか実はよく知らなかった。もともとは戦後の民主主義教育の一環として開かれた「台東区子ども議会」で、「上野動物園で象を見たい」という子どもたちの熱望が、社会を、そしてついにはインド首相をも動かしたのだというから、正直とても驚いた。
 子どもたちの運動は、名古屋の東山動物園に象の貸し出し願い(実現せず)や国会への請願(!)などを経て、マスコミの話題となった。その運動を知ったインド人貿易商ニヨギ氏がツテを通じてネルー首相への働きかけ、東京都から、国会まであらゆるレベルで協力した結果、象のインディラがバンガロールからはるばる日本までやってくることになったのだという。


 話の詳細については「NPO日印国交樹立50周年記念事業を盛り上げる会」のウェブサイト内の「象のインディラ物語」でも読むことができる。子どもたちの無邪気ながら、真摯な願いとその行動力が、周囲の大人たちを味方につけて、ついには海の彼方のインド首相をも動かしてしまった。当時リアルタイムで眺めていた人たちは、さぞ感動したことだろう。
 また戦後の新憲法ですべての国民に請願権が認められたことにより、日本の国会で「子どもたちの請願」を初めて受理した出来事でもあるそうだ。
 世界最大の民主主義国インド初代首相が、日本の草の根民主主義実現の片棒を担いでくれた…とは言いすぎかもしれないが、少なくとも当時の子どもたちには「象をくれたおじさん」として心温まるイメージ記憶されていることは間違いない。
 インドからの贈りものがいかに日本の人びとの心を動かしたか。それはインディラ上陸から55年も経った今なお、この物語が語り継がれていることからも明らかである。

「インドからの贈りもの」への2件のフィードバック

  1. このとき放送されたその時歴史が動いたの映像を持っていないでしょうか?
    持っていればお貸しいただきたいと思うのですが、返信ください  古川

    1. 持ち合わせていないので、youtubeでも探してみましたが見つかりませんでした。お役に立てなくて残念です。

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