素敵なGX100

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4月後半の発売前にとして取り上げてみたリコーのデジタルカメラGX100だが、その後実機を使ってみる機会があったのでその感想を述べたい。少なくとも現時点で私自身がこのカメラを所有しているわけではないので、実写画像をご紹介できないのは少々残念ではあるが。
GRの名が冠せられるのは、やはり広角単焦点モデルという不文律みたいなものがあるのだろうか。コンパクトなズーム付きデジタルカメラのシリーズ『Caplio』ブランドで登場したこのGX100だが、外観はもちろん操作体系、機能性、描写、画質等々どこを眺めても、事実上のGR-Digitalのズームレンズ版である。あるいは汎用デジタルカメラとしてのCaplio GXシリーズをGRと同列の高級機のレベルにまで持ち上げたといった表現してもいいだろう。
いずれにしてもこのシリーズの前モデルGX8とは違い、GRと肩を並べるリコーのフラッグシップ機となって登場しただけに、GRファンはもちろんコンパクトデジカメの分野における高級機復活を願うユーザーたちの注目度は高かった。
価格は6万円台半ばから7万円台半ばといったところだろうか。今ではそのくらいの金額で各社のデジタル一眼レフの汎用機のボディが購入できてしまう。これらはエントリー機とはいえ、『猫も杓子もデジ一眼』といった様相の昨今、沸騰する旬な市場だけに高性能化と軽量化が進んでいる。多様なラインナップのレンズの中から目的に応じたものを自由にチョイスできること、その他周辺機器等の利用の幅も広いことなどからくる拡張性や撮る道具として別次元にあるデジタル一眼レフと競合する価格帯にある。そのため『なんだか高くてバカらしいなあ・・・』と感じる人もいるであろうことは充分理解できる。


GX100の魅力は、コンパクトデジカメながらも写真を撮ることの楽しさを味わえる、本格的に撮影に取り組むことができるだけの高性能機でありながらもズボンのポケットにすっぽり収まってしまうコンパクトデジカメであることに加えて、同種のカメラには見られない24?からスタート(望遠側72?)するズームレンズ、さらにワイドコンバーターを装着すれば19?という同種のカメラで他に例を見ないダイナミックな画角での撮影が可能であるという点だ。目下、28?以下の広い画角のコンパクトデジカメといえば、GR-DigitalとこのGX100を擁するリコーの独壇場である。広角ならではの歪みがどんな具合か気になるところではあるが同じ焦点域の28?で比較してみて、優秀なGR-Digital同様といっても良いくらい自然な画になるようである。
2年前の秋に発売されたGR-Digitalによりも2年近く新しい分、画素数が上がったことはもちろんだが、バシッ、バシッと小気味良いレスポンスのAF、常に青みが強く出がちだったGR-Digitalより格段に進歩したホワイトバランスの精度など、使い勝手の点でかなりの向上が見られる。
デジタルカメラ、とりわけコンパクトデジカメのように小型のCCDを使用しているものはかなりラティテュードが狭いため、またコントラストの強い場面では盛大に白トビしてしまうものだ。そのためシチュエーションによってはカメラのセッティングメニューによりコントラストその他の設定をいじる必要が出てくる。GX100で撮影画像を再生する際に『ハイライト表示』を選べば、白トビ部分が点滅して示されるので大いに参考になって良い。
GR-Digital同様、GX100でも高感度設定はあまり積極的に使う気はしないが、幸い二段分程度の手ブレ補正機能が付いているため、光量がやや不足する場面で風景を撮りたい、室内を撮影したいといった場合にかなり心強い。
タテ・ヨコのサイズ比が1:1の画像設定もできるのは新鮮に感じる。ブログ向きのカメラという部分もあるのかもしれない。
強いて不満な点を挙げるとすれば、GR-DigitalやCaplioシリーズの前代モデルGX8などのズームレンズは電動で開閉するバリア内に格納されていたのに対して、GX100はレンズキャップの付け外しをしなくてはいけないこと、そしてレンズを収納した状態でもボディからかなり出っ張ってしまうことだろうか。そのため本体の長さ、幅、厚みはほとんど変わらないGR-Digitalに比べてかなり大柄に感じてしまう。
チルト機構付きVF(電子ファインダー)はアイデアとしてはいいのだが、造りがチャチでやや手荒に扱えばすぐに壊れてしまいそうなこと、アクセサリー・シューの上に大きく出っ張ることにより『コンパクトさ』を著しく損なうようで、あまり好感を持てなかった。本体に標準装備されているものだが、これは別売りにしてカメラ自体の販売価格を引き下げて欲しいものだ。
GR-DigitalのオーナーによるGX100の需要はかなり多いようだ。単焦点であり描写力に優れた前者とズームの利便性を活用できる後者とをひとつの『システム』としてセットで持ち歩いている人がかなりあるのだろう。どちらも充分コンパクトなので2台一緒にカバンに突っ込んでおいても決して邪魔にならないだろう。これらのモデルの操作体系はほぼ同一であるため、相互に取り換えながら違和感なく撮影できる。電池も共通であることも有利なポイントだ。
GX100は機能性、機動力、コンパクトさどれをとっても第一級品で、広角側に強いコンパクトデジカメを探している方にオススメしたい・・・というよりも、自分もこの素敵なカメラが欲しくてたまらずソワソワしているところなのだ。
今年秋ごろには次代のGR-Digitalが出てくる予定であると聞く。現行のモデル自体がかなり完成度の高いだけに、仕様その他に大幅な変更はないものと想像している。だがRAW撮影時の書き込み時間の短縮、流行りの手ブレ補正機能(広角レンズなので必要無しという意見もあるが、光量が不足していても手持ち撮影可能なシチュエーションが広がるので有益だと私は思う)や高感度撮影時のノイズ軽減などが盛り込まれれば、さらに魅力的なカメラにとして磨かれることだろう。こちらもまた気になるところ。
キヤノン、ニコンといった最大手、それらを追うオリンパス、ペンタックス、ソニーといった各社に比べて地味な存在のリコー。デジタル一眼レフを製造していないが、最上級機をコンパクトデジカメの広角モデルに特化したニッチな市場で展開するという他社にない個性が光る。
日常での携行、旅先で景色や建物などを撮るのもいいかと思うが、マクロ撮影に強いので手元にあるものをチマチマ写すのにもいいし、狭い路地裏を徘徊して歩くのにもちょうどいい大きさと画角。極めて旅行向きのカメラではないかと私は思う。
GX100

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