チェラプンジー1

メガーラヤ州の州都シローンを朝6時に出てチェラプンジーに向かう。2007年にシローンに来たときに、州政府観光局が催行するバスツアーでチェラプンジーを含む同州の観光地を巡ったことがあるが、1時間半程度立ち寄ったチェラプンジーの景色がとても良かったので、今度は一泊してみることにした。

チェラプンジーは、世界で最も多雨な場所として長らく知られてきたが、気候の変化のためか測定方法が変わったのか、近年は同じメガーラヤ州内の西寄りにあるマウスィンラムにその座を譲っている。どちらにしても、地形的にモンスーン期にベンガル湾から流れてくる大気がベンガルの平原部北側を弓型に囲む高地の最深部となるため、季節風に乗ってやってくる湿った空気がこのあたりに集まり、一気に多量の雨を降らせることは容易に理解できる。メガーラヤ州そのものも世界的に最も多雨なエリアのひとつということにもなる。

風景を楽しみに行くつもりであったが、州都シローンは前日の夜半から雨が降っており、当分止みそうな気配さえない。モンスーン期の激しい雨を体感してみるのならともかく、乾季の最中の季節外れの雨で霞んだ景色を眺めることになるのは気が進まないが、延期するだけの時間がないので仕方ない。そのままチェラプンジーに出発することにした。

1時間半ほどでチェラプンジーに到着した。本日の宿泊先はConiferous Resortだ。クリスチャンのカースィー族の男性が家族とともに経営している。チェラプンジーの村の中か村の端あたりかと思ったが、案外遠かった。チェラプンジーへの訪問客はシローンから日帰りするケースが多いため宿泊施設は少ない。自家用車で訪れて宿泊する場合は村の外の風光明媚なスポットが好まれることから、自前の足を持たないとちょっと辛いものがある。急な坂道が多いためオートリクシャーはなく、村から外れると人口もまばらで公共交通機関もほとんどない。

チェラプンジーの町のマーケットにて。労働人口のおよそ半分はキッチリ女性たちが占めているように見える。

そのため、村に居住している人たちが出向く用事もない展望台、洞窟、滝等の観光スポットを訪れるにはタクシーを頼むしかない。この日利用したクルマはTATAのNANOである。最近はずいぶんあちこちで見かけるが、これまで実際に乗りこんだことはなかった。

ボディは従来の小型車よりもずっと小さいが、外観から想像できないくらい車内スペースを広く感じる。スズキのマールティ800と全く同等という印象だ。エンジンスペースを節約するためだろう、バッテリーは運転席の下に収められており、小型化のため相当な努力がなされていることがわかる。この日、山道で路面の悪いところも走ったのだが、ボディが変にしなることはなく、ボディ剛性もそれなりに高いように思われる。乗り心地はまったく普通の小型車である。エンジン音も静かで良かった。

NANOのタクシー

このクルマの需要については、2008年にデリーで開催されたAuto Expoで発表された際、1,00,000 Rsの格安国民車 “NANO”と題して取り上げてみたが、そこに書いた以外にも、自家家用車としてだけではなく、タクシーとしての利用への潜在的な需要は相当高いであろうと予想していた。まず考えられるのは、これまでタクシーが普及してこなかった所得の低い地域や都市圏外での需要、そしてオートリクシャーの走行が困難な山地での需要である。そうした意味では、シローンやチェラプンジーはNANOのタクシーとしての普及にはもってこいのエリアであるといえる。

本題に戻る。私がこの日訪れた場所は以下のとおり。

Eco Park

Maulsmai Cave

Nohsugithieng Falls

Thangkuarang Park

Khow Kanihah

Dawthlen

Rama Krishna Mission

Nohkalihai Falls

土地の言葉であるカースィー語の地名なので、どれも馴染みがないため、どう読むのか良くわからない地名が多い。この中のいくつかは、シローンからのバスツアー参加したときに訪れているが、クルマをチャーターしているため、ゆっくりと見物することができた。

だがやはり問題は天気であった。雨のため、景色の良い展望台に行っても霧でよく見えなかったり、後には霧が濃くなりすぎてまったく見えなかったりした。道路交通も良くなかった。霧が少し薄くなることもあったのだが、ひどいときにはわずか10メートル先さえもまったく見えないところも多かった。突然向こうからタクシーや大型車両が出てきてびっくりするし、あまりに霧が濃い場所では道路自体がどう走っているのか輪郭さえも見当さえつかなかったりして恐ろしかった。チェラプンジーとその周辺地域は、下界から見るとすっかり雲の中に入ってしまっているため、雨天 = 濃霧となってしまう。

眼下に広がる平原部はバーングラーデーシュ。だが天気が悪くてよく見えなかった。
鍾乳洞

インド北東州は全面的に多雨の地域であり、観光面ではモンスーン期は概ねオフシーズンとなるのだが、世界最大級の多雨スポットとして有名なチェラプンジーだけは、『その雨を見に来る』人たちがかなり多いらしい。

台地を流れてきた水は断崖絶壁へ
雨季には数倍の水量になるのだとか。

チェラプンジーは多雨な高地であるため、あちこちに滝がある。小さな複数の滝幾筋も流れていたり、大きな瀑布があったりもするのだが、どちらも断崖絶壁からはるか下へと水が落下している。平坦な台地で幅広い石畳状の川床を流れた水がそのまま断崖から下へと落下しているところもある。こういう極端な風景がチェラプンジーらしいところだ。雨季には、滝の水量が数倍になると言い、まさにそれを見たいがために不便や周囲の景観を楽しむことができないことを承知のうえで訪れるようだ。だが前述のとおり、雨のチェラプンジーの視界は最悪となるので、くれぐれも交通事故には気を付けていただきたい。

深い霧で景色は楽しめず。

<続く>

「チェラプンジー1」への1件のフィードバック

  1. この記事とは無関係ですが、書く欄が見当たらないので、ちょっと失礼してHaindava Keralamというヒンドゥー至上主義?の南インドのウェブサイトに
    こんな変な(勘違い)記事が掲載されています(27/12/2011)
    “Japanese government released a postal stamp on Muthuji from Salem – Why?”
    you-tubeにはMuthuさん登場
    “Indian’s Achievement in Japan”
    で検索してください。

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