TNSA (Tibetan National Sports Association) 5  国技としてのサッカー

チベットでのサッカーの歴史は、20世紀初頭にギャンツェに置かれていたイギリスの商館員たちが現地で競技を楽しんだことに始まる。その後、やはりイギリスが首都ラサにおいて1913年に当時のチベットの軍隊に訓練を施し、続いて1920年代に警察組織の発展に協力した際に現地の人々に伝えたとのことだ。チベットにおける近代スポーツとしてのサッカーの歴史はなかなか長い。

TNSAは、サッカーをチベット人たちの国技として育もうという姿勢を明確にしている。在印チベット人たちのクリケットに対する関心は決して低くはないようだが、世界的なクリケット大国にあって大海の一握りの砂に過ぎない彼らの立場だ。これを『国民的スポーツ』として、それなりのモチベーションを持って強化していくことには難しいものがあるだろう。

またサッカーという競技の、よりグローバルな広がりを考えれば、対外的に自分たちの存在をアピールしていくにあたり広告塔的な役割もあり得る。これがひとつの形として実現したのがFIFI Wild CupELF Cupへの出場、そして幾つかの欧州遠征試合ということになるだろう。

それでも道は決して平坦ではないようだ。サッカー人気の低調なインドにあって、亡命チベット人社会でもサッカー人気がそれほど高いとはいえない。TNSAも競技人口の拡大には腐心しているようだ。

また彼らの活動に関心を寄せるのは、概ね在印の人々を初めとする亡命チベット人社会の中に限られる。資金的な面は言うまでもないが、選手たちの指導や育成といった部分についても相当な困難がある。

日本代表は、1998年のフランス大会以来、4回連続でFIFAワールドカップに出場し、韓国と並んでアジアからの常連国となっているが、サッカーという競技を愛する人の気持ちや自国代表を応援する心情は、チベット人亡命者たちの間でも変わることはないだろう。

インド・ネパール各地およびその他の国々に暮らすチベット人たちの心をつなぎ、また世界の人々との結びつきを強める絆として、このスポーツが彼らの間で今後ますますの発展をしていくことを願う。

チベット人コミュニティの『サッカーをこよなく愛する仲間たち』に大きなエールを送りたい。

<完>

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