ワガー国境

夕方、ワガー国境が閉まる時刻、インド側では国境警備隊、パーキスターン側からはパーキスターン警備隊の見事なヒゲをたくわえた立派な体躯の巨漢たちが威風堂々たる行進と儀礼を行なう。
互いへの敵意とも感じられる動きや表情とは裏腹に、国境を挟んだ双方の息の合った動きから両者の協調ぶりも感じられるのは興味深い。もちろんこのセレモニーで行進する双方の隊員たちの動作、時間、内容等は、インド・パーキスターン両当局の間で打ち合わせした上で実施される、いわば政治ショーである。
印・パ分離前、アムリトサルとラーホールの間に位置するごく普通の農村であったワガーは東西に分かれて現在に至る。日々、インド側だけでも8,000人のもの人々が見物に訪れるという人気の観光スポットになっているこの国境。
デリーを起点に、国道一号線はパーニーパト、クルクシェートラ、ルディヤーナー、ジャランダル、アムリトサル等を経てこの国境に至る。本来国道一号線の終点であったラーホールまではワガーから西へ20kmほど。
東西に分かれたパンジャーブ地方が再びひとつになることもなければ、同じくふたつに分かれたワガー村がひとつになることも決してなく、今後もずっと両国の境目であることは変わらないだろう。
しかしこの国境が対立する二国間関係を象徴し、互いに虚勢を張って大上段に構えた雰囲気から、いつの日か誰もが必要に応じて行き来する、単なる行政の区分にしか過ぎないものとなることを願わずにはいられない。仰々しいセレモニーもなく、ここを通過する人々あるいはここを職場とする人以外は訪れることもない、ごくごく普通の国境となる日を。

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