ただいまメンテナンス中です…

カテゴリー: security

  • LAAL LAKEER (赤い線)

    LAAL LAKEER (赤い線)

    LAAL LAKEER

    小説「赤い線」(「赤線」ではない)
    チヤッティースガル州バスタル地方に引かれた目に見えない「赤い線」。
    マオイストの影響下にある「赤い線」の向こう側、「人民政府」が力を振るう地域とこちら側つまり州政府が警察力で抑え込むエリア。
    どちらも先住民たちが暮らす寒村が点在する地域だが、「赤い線」のこちら側では、マオイストの掃討のためという名目で家を焼かれ村を追われる。これに抗うと「マオイスト」であるとして投獄される。
    さりとて「赤い線」の向こう側では、「警察のイヌ」との疑いをかけられた者はマオイストたちへの怖れから、弁護する者のない「人民法廷」で一方的に裁かれなぶり殺しにされる。
    相容れないふたつの支配勢力がせめぎ合う狭間での人間模様。
    「世界最大の民主主義国家インド」における盲点は、民主主義の根幹である「数は力」。「多様性の国」とはいえ、あらゆる側面においてマジョリティと利益を共有する部分のない(あるいはそれがとても少ない)マイノリティは、自らの権利を主張することは、「反社会的」であるとみなされる危険を伴う。バスタル地方だけではなく、カシミールしかり、北東地域しかり、である。
    長年、バスタル地方を取材してきたインドのジャーナリストによる「小説」。現地の事実関係に精通した著者によるものだけに、非常に重みのある作品だ。
    アマゾンでKindle版を購入した際、「ヒンディー語版」と記載されていた。おそらくオリジナルは英語で書かれているのではなかろうか。
    限りなくドキュメンタリーに近い力作である。
    著者のフリダイェーシュ・ジョーシー。ジャーナリストとしても、小説家としても、今後注目していきたい人物だ。

    書名:Laal Lakeer (Hindi Edition) Kindle版
    著者:Hridayesh Joshi
    出版社:Harper Hind
    ASIN:B01AI732W2

  • インドによるパキスタン領内空爆

    2月26日午前3時半(インド時間)にパキスタンへの領越境空爆が実施された。

    パキスタン側の反応時代で核保有国同士の戦争となりかねない事態となった。今月14日にカシミールでインドの治安部隊を狙った大規模なテロが起きる前まで、あんな融和ムードであったのに、わずか12日でこのように急変してしまった。まさに印パ関係の難しさを象徴しているようだ。

    Mirage jets destroy Pakistan terror camp with 1,000 kg bombs in pre-dawn strike: Sources (INDIA TODAY)

    インド空軍によるパキスタン領内のテロ組織への「サージカル・ストライク」を賛えるAAP(Aam Aadmi Party庶民党)のアルヴィンド・ケージリーワル。個人的には最も好意を持てるクリーンで誠実、民主主義を尊ぶ政治家だが、こういう人でも対パキスタンとなると、タカ派となる。

    実はこの関係については、右翼のシヴセーナー、BJPから中道の会議派、左翼の共産党まで、全党一致でパキスタン強硬派しか存在しないのがインド政界。
    インドによるパキスタン領内への直接攻撃は2016年にもパ領カシミールにて小さな規模で起きたが、あのときはパキスタンはそうした攻撃自体を否定したが、さすがに今回は次元も方法も違うので、同じようにスルーできない状況だ。

    Kejriwal lauds IAF pilots for striking terror targets inside Pakistan (THE TIMES OF INDIA)

    今回の空爆について、インド側はあくまでもパキスタン領内にあるテロ組織のキャンプを叩くための「サージカル・ストライク」であったと強調している。

    当初は「インド軍機がパキスタン領内を侵犯。これを受けてパキスタン空軍機が緊急スクランブルをかけて、侵犯機を領外に追いやった。侵犯機は爆弾を投下したが被害はなし」というような発表をしていたのだが、インド側による華々しい成果の公表と、標的となったバラーコートにおける人的・物的被害の大きさから、発表の方針を転換した模様だ。

    しかしながら、インド軍が攻撃した先は市街地ではなく、パキスタン軍の庇護下にあるとされる過激派組織のトレーニングキャンプであったので、「被害なし」という部分については変更できない。

    しかしながら、今のところ幸いであるのは、パキスタンは少なくとも現時点までにおいては、それなりに抑制の効いた対応をしているように見えることだ。

    NSC on LoC violation: Pakistan will decide time and place of response to India (GEO News)

    「パンドラの箱」を開けてしまったのは、果たして今月7日にカシミールで移動中のインドの治安部隊へ大規模な攻撃を仕掛けたパキスタンのテロ組織なのか、本日の越境空爆を実施したインドなのか。

    それにしても、パキスタンに本拠地を置くテログループがこれまで幾度もインド側に出て、こうした事件を起こしている(多くは最後に自爆する覚悟で来ている)ため、もういいかげんインドの堪忍袋の緒が切れたという具合だ。

    今後の進展がとても気がかりなところだが、パキスタンという国にとっては、自国のありかたをしっかり見直さなくてはならない、これまでの責任を取らなくてはならないときに来ていることは間違いない。

    繰り返されるテロについて幾度も抗議しつつも、まともな対応をしない相手国を容認する国がどこにあるだろうか。

    IAF strike in Pakistan killed 300 terrorists: Government source (THE TIMES OF INDIA)

  • ムンバイ猫あるき

    ムンバイ猫あるき

    一般的にはネコが人にかまってもらえず、ネコも人に積極的に関わらないインドだが、南ムンバイにはなぜか野ネコが多い。野犬と同じくらいの数がいるのではないだろうか。
    しかも一瞬、目を合わせると、すぐに駆け寄ってきて足元でトグロを巻くようにグルグル、スリスリしてくるネコが多いのは特徴的だ。

    当然、放ってはおけない。

    ネコが居て・・・

    目が合うと・・・

    駆け寄ってきて・・・

    足元に飛び込んでくる。

    日本のネコと比べて毛足がとても短くスリムなネコたちだが、日本の極めて低温で期間も長い冬を経験すると、もしかして毛足がモコモコに長くなるのだろうか?とふと思ったりする。

    可愛いのだが、野犬と同じく、もし噛まれることがあったら、それなりの対処が必要となるため、特にかまったりしないつもりではいるのだが、目線がバチバチッと合うと、足元でゴシゴシとしつこいまでに絡み付いてきて、さらには仰向けになって「遊んで、遊んで」をしてくるネコが大変多い環境は、ネコ好きにとってはたまらない。

    結局、放っておけるはずがない。

    遊んで遊んで!

    遊んで遊んで!

    見ていて気持ちの良い大あくび

    世界中でネコたちを撮影している動物写真家の岩合光昭さんの作品で、ムンバイでの写真の記憶はない。ぜひともこの地域で野ネコたちと交流してもらいたいものだ。

    ここで「南ムンバイ」と書いたのには理由がある。
    空港があるサンタクルーズ地区やそのさらに北となると、かなり普通のインドの街となるため、コラバやフォートのような地域とはかなり環境が異なると思われるからだ。

    当然ながら、あまり愛想の良くないネコもいる。
    近寄ると「シャーッ」と威嚇される。
    しかしマッチョな筋肉ネコ
    だがネコが憩う眺めは良い。
  • ムンバイのユダヤレストラン

    ムンバイのユダヤレストラン

    コラバにあるユダヤ教施設ナリーマンハウスの中にはコーシャル・ムンバイというレストランがあることを知った。だだしその日は土曜日、つまりサバース(ユダヤ教の安息日)であるため、どうかと思い電話してみたが誰も出ない。まあ近いので行ってみることにした。

    ムスリム地区にあるこのユダヤ教施設。昔からユダヤ人が多かったコラバだが同じくユダヤ人コミュニティの存在で知られたフォート地区、バイクラー地区と異なり、ここにシナゴーグが建てられたことはない。別名チャダードハウスとしても知られるこの施設には、世界各地から来るユダヤ系の人たちのための宿泊施設も有している。

    だいぶ前に前を通りかかったときの記憶とは、佇まいがずいぶん違っているのは、2011年のムンバイ同時多発テロが背景にある。VT駅、レオポルドカフェ、トライデントホテル、タージマハルホテルなどとともに、あの事件の舞台となったひとつの施設だ。テロリストたちがナリーマンハウスに立てこもり、ここを取り仕切るユダヤ教司祭家族、宿泊者等多数が殺害されている。タージマハルホテル同様、ナリーマンハウスにも、デリーから出動した特殊部隊が突入し、事件発生50数時間後に制圧された。

    そんないわくつきの施設となってしまったが上に、今も非常に厳しいセキュリティ体制が敷かれている。ここに入っている「コーシャル・ムンバイ」は、日曜から金曜までの午前9時半から午後9時まで(金曜日のみ午後1時半まで)の営業であることはわかった。

    Kosher Mumbai (CHADAD OF INDIA)

  • 道路逆走への対策

    インドの道路で逆走するクルマやバイクなどは後を絶たない。ショートカットするために平気でバンバン逆走している。運転していても危険だが、歩行者も道路を渡る際には「クルマが来るはずがない方向」にも充分注意する必要がある。
    これらを防ぐためデリー首都圏の事実上の一部といえる隣接するUP州のノエダーで、こんな装置を道路に導入したとのこと。逆走したらタイヤを破裂させるというもの。「タイヤキラー」と呼ばれるのだとか。
    似たような構造のものを日本の米軍基地入口で見かけたことがある。侵入車があった場合、こんな感じのものが路面からニュッと持ち上がり、タイヤを切り裂く装置。造りはもっとアグレッシブで、確か「タイヤシュレッダー」とかいう呼称だったと思う。

    ‘Tyre-killer’ installed in Noida to prevent wrong side driving: Watch it in action [Video](CarTag)

  • Chinatown Days

    Chinatown Days

    英語版発売予定とのことで、リター・チョードリーのアッサム語による小説「Makam」をアマゾンに注文したのは数年前。アッサムにおける華人コミュニティを舞台にした小説。かなり良い評判は聞いていたので、ぜひ読んでみたかったのだ。

    幾度も発売が延期となり、その都度アマゾンから「申し訳ありません」とメールが来ていたが、ついに「この本は入荷しません」とかいう連絡が入った。不可解ではあったが、何らかの理由で世に出なくなったのだろうと諦めていた。

    ごく最近、たまたま知ったのだが、実はこの「Makam」が「Chinatown Days」として出版されているとのこと。

    アッサム語小説の英訳というわけではなく、著者自ら英語で改めて著したとのこと。そんなわけで、確かに「Makam」の英訳版の出版は中止となり、内容はぼ同じながらも改めて書かれた「Chinatown Days」という別の作品が発表されたわけだ。

    これが紙媒体ではなくKindle版で入手できるというのもスピーディーでありがたい。

    ずっと何年も待たされたこともあるし・・・。

    書名: Chinatown Days
    著者: Rita Chowdhury
    ASIN: B0786T8XKX

  • ナガ族の100年闘争

    かつては意思も方向もバラバラだった人たちが初めて「ナガ族」として1918年に結成した政治組織「Naga Club」の100周年に当たる。
    そのNaga Clubはもはやなく、ナガランドでは路線の異なる複数のナガ人政治組織が割拠している状態だ。Naga Club自体は武装集団ではなかったが、英領インドからの分離とビルマ側に住む同族たちの地域との統合を目指していた。
    その流れを汲む組織が政府に対して武装闘争を開始したのは、たしか1947年だった。
    Naga Club結成から数えて100年間も闘っている。これほど長く続いている独立闘争は、そうそうないはずだ。
    (政府と休戦中で、状態も安定しているため2011年から旅行者も自由に訪問できるようになっているが、まだ独立要求の旗を下ろしたわけではない。)

    A Short History of Naga Club With Date of Formation as Foretold by Leaders (EASTERN MIRROR)

  • ムンバイ同時多発テロから10年

    昨日は2008年11月26日に発生したムンバイ同時多発テロから10周年であった。

    この日の夜9時半頃に発生したムンバイCST(チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス)駅での銃乱射を皮切りに、コラバのレオポルド・カフェへの襲撃、タージマハル・ホテルとトライデント・ホテルでの立て籠もり、ユダヤ教施設のナリーマン・ハウス襲撃など、南ムンバイの複数箇所で時を同じくして複数のテロが実行された。

    パキスタン水域から侵入し、インドの漁船を乗っ取ってムンバイに上陸した犯人たちは、犯行地点までは市内を流していたタクシーで移動したが、降車する際に車内に時限爆弾をセットしたため、これを知らなかったドライバーが向かった先でクルマが爆発を起こしている。

    またムンバイCST駅で銃を乱射した際に被弾した人たちの多くが搬送された先のカーマ病院でも襲撃を加えるなど、非常に入念かつ冷酷な犯行であった。

    2001年9月11日に起きたニューヨークでの同時多発テロの際もそうであったのだが、進行中の事件がテレビ等で中継されることをも計算に入れており、私たちは画面の前で進行している悪魔の仕業におののきながら釘づけとなった。

    このとき私はAaj Tak、NDTV India等のニュース番組で成り行きを見つめていた。夜になっても、気にかかって寝ていることはできず、ほとんど徹夜で視聴していた。インドの大手メディアは電波だけではなく、インターネットでもニュース番組をリアルタイムで配信しており、私は日本でそれを見ていたのだ。

    実行犯たちは携帯電話で、彼らをそこに送り込んだパキスタンのテロ組織幹部と連絡を取っていることが明らかになっていた。そんな中、テレビでインドの治安組織側の対応が放送されること、その時点でこの事件についてインド側が把握していることを逐一電波で流してしまうことは、敵に手の内を見せているようなものだという批判もあった。

    犯人たちが立て籠もったタージマハル・ホテル、トライデント・ホテル、ナリーマン・ハウスでは、長いこと膠着状態が続き、制圧へ向けて動き出すには、デリーから投入された特殊部隊のコマンドーたちの現地到着を待たなければならなかった。

    そしてついに彼らが現場に投入され、事態は急展開を見せた。事件発生から実に足掛け3日目の朝8時、最後の立て籠もり現場であったタージマハル・ホテルが制圧された。死亡者174名、負傷者300名以上という凄惨な事件がようやく幕切れとなった。

    なお、この事件の実行犯10名のうち、事件当時21歳だったアジマル・カサーブは、この手の事件としては珍しく警察に捕縛された。(2012年11月に絞首刑)

    後に事件の背後関係や実行犯たちの出自等の詳細がよくわかるようになったのは、犯人の1人が生け捕りになったためという部分も大きい。この若い実行犯男性を主人公にした映画The Attacks of 26/11 (2013年公開)は、そうした情報を下敷きして制作された作品だ。

    こうしたことが二度と起きてはならないのだが、決してそうはいかないように思われるのは、やはりインド・パキスタン関係であり、商都ムンバイをターゲットとした場合のインパクトの大きさであり、いつ何時見知らぬ人が徘徊しても誰も気にさえ留めず人々の往来を管理することが困難な大都会の匿名性でもある。

  • センティネル族

    アンダマン諸島の中のセンティネル島に住むセンティネル族。外界とまったく接触を持たない民族として知られているが、アメリカの若い宣教師が彼らの島に上陸を試みて弓矢で射殺されるという凄惨な事件が発生した。

    このセンティネル族、いくら孤立した民族とはいえ、その出自でインド本土の学校に進学したり、街に定着したりした人たちは若干程度いるのでは?と思いましたが、まったくそうではないらしい。

    政府の保護政策により、地域への入域が禁止されていることの裏返しに、政府から彼らへの働きかけもほぼ無い。今も石器時代同様の暮らしであるようで、文化人類学的には大変価値のある存在だ。またこの島内で世界が完結していること、外界からまったく影響を受けていない独自の言語、価値観、倫理観があることなど、大変興味の引かれるものでもある。

    この若い宣教師は、旺盛な好奇心と使命感みたいなもの、そして功名心に駆られて上陸を試みたのかもしれない。

    クリスチャンの言う「神は愛なり」という言葉は好きだが、一方的な価値観、倫理観、文明観の押し付けにより、ときには「神は害なり」に転じることもある。

    とくに宗教のようなものに限ったことではなく、政治活動、販売活動、その他何かの教宣活動においても、「これは素晴らしいから受け容れるべき」というような態度は、相手の存在や現状を否定することに等しいことも少なくない。

    North Sentinel Island tribespeople believed to have killed trespassing US ‘missionary’ (CNN)

  • 2022年までに宇宙へ有人ミッション

    2022年までに宇宙へ有人ミッション

    本日、タブレットに配信されたインディアトゥデイ今週号。特集は宇宙進出。2022年の独立記念日かその前までに有人ミッションを実行するのだとか。
    バンガロールに本拠地を置く宇宙開発機関ISROにより着実に技術の開発と実績を積み上げているインド。その機関のすぐ外の農村では、今でも牛に鋤を引かせて畑を耕している農民がいるという、ハイテクとローテクの混在ぶりが素晴らしい偉大なるインドだ。
    さすがはフェラーリと馬車、ポルシェと牛車が並走する姿を見ることができる国だ。
    (よほどラッキーでないと、こういうシーンを目にすることは、まずできないが・・・。)

  • UAEでイスラエル国歌

    突然、インドに関係ない話題で恐縮である。

    イスラエル建国により、それまで欧州社会でしばしば差別的な扱いを受けてきたユダヤ系の人たちが自分たちこそが主人公の国を持つに至ったという側面はある。

    しかしながらこれに先立つイスラエル建国運動と合わせて、それまでアラビアの国々を始めとするイスラム教の国で、繁栄して周囲と平和に共存してきたユダヤ系市民が生まれ育った国を離れなくてはならない敵意を生じさせたとも言える。

    それはともかく強盗が家に居座って家人を追い出してそのまま暮らしているような形の「国」なので、倫理的にこういうのが存在してよいのか?とは個人的に思う。けれどもすでに強力な国家として事実上存在してしまっているため、周辺地域でエジプト以外に外交関係がないというのは、大変危険で不幸なことだ。

    今回、UAEで開催された柔道の国際大会でイスラエル選手が出場して優勝。同国で初めてイスラエル国歌が演奏されたという。

    UAEでイスラエル国歌=選手が柔道大会で優勝 (JIJI.COM)

    ごく些細なことに思えるかもしれないが、開催国の大変勇気ある英断。これが初めの一歩となり、中東の対立構造にポジティブな変化を生むことを願いたい。

    With Jews Largely Gone From Iraq, Memories Survive in Israel (HAARETZ)

  • 「幸せの国」から流出する難民

    「幸せの国」とかいう官製プロパガンダや「世界初の禁煙国」とかなんとか、健康的なイメージで語られることが多いブータンだが、難民流出、麻薬の蔓延などなどいろいろ問題は多い。国内の少数民族への抑圧はかなり知られている割には、割と知らんぷりを決め込むメディアは少なくない。

    この少数民族への圧迫だが、同じくヒマラヤの王国であったスィッキム王国の失策から学んだようだ。国内の近代化を推し進める中で、労働力不足からネパール系住民を大量に受け入れた。

    その結果として、主要民族であったはずのブーティヤー族がマイノリティに転落。ネパール系住民による権利要求運動が高まり、国内は不安定化。王族は待遇の保証の条件と引き換えに自国をインドに併合。つまり国を売ってインドの庇護のもとに入った。このいきさつを中国は認めないためスィッキムをインド領と認めていない。

    地理的にごくごく近い小王国であること、ブーティヤー族とブータン人は民族・文化的にもごく近いこともあり、決して対岸の火事ではなかったわけだ。同様に王国ではなくなったネパールについても大いに参考にしながら国家運営をしているようだ。

    ヒマラヤの多民族居住環境で、民族衣装ゴ(男性)やキラ(女性)を日常的に着用したり、やたらと伝統的なものがフィーチャーされる国粋主義的な姿勢は、この国の防御的なスタンスを象徴するもので、そこにはこうした伝統を共有しないマイノリティへの高圧的な姿勢があることを忘れてはいけない。

    ・・・とはいえ、ヒマラヤ地域で特別な存在感、貴重な文化遺産や豊かな生活文化に満ちた国であり、大変興味深い地域であることは変わらない。ただ「私たちが忘れてしまったものがある」とか、GNHが高いとかいう、変な取り上げかたはやめて欲しいものだ。

    「幸せの国」ブータンから追われた不幸な少数民族ローツァンパ(AFP)