近ごろ、インドでは新しいタイプの「旅行」が注目されているらしい。高度な専門的治療が低コストで受けれるインド主要都市の大病院が脚光を浴びつつある。中でも、亜大陸最大の商都ムンバイを擁するマハーラーシュトラ州では、「医療旅行(Medical tourism)」というコンセプトで、治療を目的とする人びとを海外から同州へ呼び込もうという動きが本格化。医療旅行評議会 (Medical Tourism Council of Maharashtra)なるものが組織されたという。今後、ほかの主要都市にもこの流れが広がっていくことが予想される。
古来伝わるヨーガやアーユルヴェーダに、西洋医学の先端医療が加われば、まさに世界の「健康センター」的な様相をおびてくる。「先端治療と伝統療法によるヒーリングを組み合わせたパッケージを企画すれば売れそうだ」と誰もが思いつくことだろう。いまや国の基幹産業のひとつとなっているIT産業に並び、今後は健康・医療関係も大きく伸びる可能性を秘めている。
すでにアメリカをはじめ先進国の病院が、医療データの解析、患者用の食事献立作成などの業務をインドに委託している。今後、この方面でもインドの得意分野と、各国の既存医療システムとの提携や統合が進んでいくことだってあり得る。重病を患っている人が、費用や順番待ちの問題から、自国で通っている病院で「ボンベイでの治療はいかがですか?」と勧められる日が来るのだろうか。
多くの日本人の場合、インドという国に対する心理的な距離に加えて、英語圏出身の人々と違い言葉の問題がある。特に医療となると細部にわたり、医師や関係者たちとの相互理解が重要。言葉の壁は大きい。
また現地の人びとには失礼かもしれないが、街中の様子を見ただけでは、ホントに「高度な医療」を期待できるのかと、多くの患者が不安を抱くことだろう。
だが臓器移植など、困難で莫大な費用がかかる手術が必要な人たちにとっては、有力な選択肢が増えることは確かだ。手術例が増え、評判も上々になれば、インドの先端病院にコンタクトする人たちだって出てくるはず。いずれ、インドで治療した日本人患者の喜ばしいエピソードを耳にするかもしれない。
ただし、先端医療を看板に海外からの”外来”患者を引き寄せる一方、自国内には基本的な医療さえも満足に行き渡っていない地域や、都市生活者でも貧困のため医療を受けることがままならない人たちが、いまも少なくないことを思えば、複雑な気持ちになる。
「世界」は確かに小さくなったが、「インド世界」はまだまだ広すぎるようだ。
▼マハーラーシュトラ州 「メディカル・ツーリズム」推進!
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/south_asia/3467105.stm

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