ソニア、ソニア

 今年末に封切される『SONIA, SONIA』という映画を楽しみにしている。米国の雑誌フォーブスによれば、「世界で三番目にパワフルな女性」となった国民会議派総裁のソニア・ガーンディー氏。彼女の生き様が映画化されることになった。
Sonia Gandhi
 1968年、ラジヴ・ガーンディーと結婚。外国からインドの家庭に嫁入りするだけで大変だと思うが、よりにもよって結婚相手はインド首相の息子である。夫の弟のサンジャイは飛行機事故で他界し、義母インディラも暗殺。やむなくインディアン・エアラインスのパイロットだった夫が政界入りするとき、それに強く反対したという。「いつかひょっとしたら…」と不吉な将来を予感していたのかもしれない。その懸念はやがて現実のものとなってしまった。
 流転の人生を宿命づけられている人なのだろうか。彼女の運命は常に表舞台で何かを演じるように定められているようでもある。インド政界の重鎮としてしばらく年月を過ごし、息子ラーフル、あるいは娘プリヤンカーに後を任せて引退…という安寧な未来は気の毒ながら想像できない。
 彼女のキャリアは、たとえ自身が望もうと望まざると、いつも第一線を歩むことになっている。それでいて彼女には安泰が訪れることはなく、運命に翻弄され続けている。
 メディアから伝えられる情報以外に彼女の人となりを知る由はないが、いったいどういう人物なのだろうか。いわゆる「女傑」タイプとは違い、いつもどこかに哀しさと、それを精一杯振り払おうとする健気さがあるように感じられる。


 かつてはインドのファースト・レディーとして、そして今は与党国民会議派の総裁として、外国人女性ながら常に内外の耳目を集めてきただけあって、『SONIA GANDHI』(ISBN:81-87277-02-5)、『SONIA』(ISBN:0-67-004955-7)など、彼女の伝記物はすでにいくつも出版されているが、この映画はどんな風に仕上がるのだろうか。
 ちなみに『SONIA, SONIA』を撮るT.D.KUMAR監督は、かつて『NEHRU The Jewel of India』を指揮したKUMAR KIRANと同一人物である。
 純粋にエンターテインメントとして人びとに受け入れられば良いが、政治の世界と絡んでくると騒ぎの種となることもある。特に主人公が在職中の大物とくればなおさらのことだ。
 作り手としても、評価の定まっていない現職の政治家を映画に取り上げることはなかなか難しいのではないかと思うが、この作品は彼女を「国民会議派の総裁」としてではなく、数奇な運命をたどることになったひとりの外国人女性を描いたものだというから楽しみである。
 公開予定は12月9日。奇しくもこの日はソニア氏自身の誕生日でもある。
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