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カテゴリー: security

  • グルガーオンのCab Killer捕まる

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     MBAの学位を手にマディヤ・プラデーシュ州から上京してきた青年アーシーシュは、首都近郊のハリヤーナー州のグルガーオンに到着した。ついさっき携帯電話にこの街のセクター15に住む友人から電話が入り『今そちらに向っている』としゃべったところだ。
     通りで『どうやって行こうか?』と足をさがしていたところ、うまい具合に幾人かの客を乗せたジープが停まった。車内から『どこまで行くんだい?』と小柄な青年が声をかけてくる。友人の住所を告げるとちょうどそのあたりを通ることになっているらしい。車内には五人ほどの先客たちが座っている。『やれやれ』と車内の狭いスペースに身体を滑り込ませる。クルマはゆっくりと発進して次第に速度を上げていく。
     そのときだ。アーシーシュが心臓が張り裂けそうなほど驚いたのは。誰かが突然背後から首を締め上げられている。背後に座った二人が力の限りを尽くし、この首を折らんばかりの勢いで・・・。
     間もなくアーシーシュは車内でそのまま息を引き取り、運転手、助手と『乗客たち』は慣れた手つきでアーシシュのズボンやカバンの中から携帯電話、500ルピーほどの現金などを取り出して手早く懐にしまいこむ。遺体は『いつもどおり』人気のない場所かドブ川に放り出されることになる。

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     こんな内容の記事がインディア・トゥデイ誌11月22日号に掲載されていた。このグループは昼間普通に不特定多数の利用者たちを相手に乗り合い乗用車を運行しており、夜はその車内で強盗殺人を繰り返していた。デリー、ハリヤーナー州、ラージャスターン州とU.P.州の一部で同様の手口により、これまで8か月の間に28人もの人々をこの手口で闇に葬り去っているのだという。そして彼らが手にしたのは6万ルピー程度。被害者の中にはポケットの中にほんの数ルピーから数百ルピー程度しか持っていなかった者も含まれている。このグループの中で現在まで逮捕されている者は7名。残り数名は逃亡中だという。
     どこの国でもそうであるように、インドでも詐欺、スリ、強盗いったニュースはちょくちょく新聞等に出ている。だがこの一連の事件が人目を引くのは、首都近郊で順調に発展を続けてきており、治安も良好であるとされるグルガーオン界隈等でこのような事件が続いていたことではない。それは手口の残忍さゆえである。被害者たちが警察に通報したり自分たちの身柄が明らかになることがないようにと、盗みに取りかかるまえに殺害するのが彼らの常套手段であったからだ。
     記事には犯人たちの中の5人の写真が掲載されていた。18歳から28歳までの一見ごく普通の青年たちである。オートの運転手でいつも見かけるような、食堂の小間使いによるいるような、その辺の道端で野菜でも商っていそうな感じである。映画やドラマと違って現実の社会では本当に凶悪な人間であっても見た目はごく普通であることがほとんどだろう。

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  • 亜大陸の片隅で起きていること

     先日、ゴーパール・メノン監督によるドキュメンタリー・フィルム『ナガ物語〜沈黙のかげで』(2003年)を見る機会があった。バングラデシュのタンヴィール・モカメル監督による『コルナフリの涙』とともに、NGOのジュマ・ネットと市民外交センターにより共同上映されたものである。
     どちらも約1時間ほどのドキュメンタリーで、前者はインドのナガランド州における、後者はバングラデシュのチッタゴン丘陵地帯における先住民たちの置かれた立場と弾圧、人権問題や民族対立などを描いた作品だ。
    『ナガ物語〜沈黙のかげで』では、インド国籍の者であっても地域外から自由に出入りすることができない状態は、地域の文化や特殊性を守ることにつながったが、外部の目を遮断する効果を持つことにもなったこと、それがゆえにまかり通っている暴力と不条理等が示されていた。ナガランドを含むインド北東部に適用されている国軍特別権限法(Armed Forces Special Powers Act)により、軍が治安上疑わしいと判断した際には令状なしに家宅捜索、逮捕拘束、尋問その他を行なうことができることになっているため、重大な人権侵害が行なわれやすくなる。作品では軍の行為が本来の統治機構である州政府や司法の関与を受けないことから、その暴走ぶりに歯止めが利かない構造になっていることが多くの実例や証言等とともに生々しく描かれている。
     ゴーパール・メノン監督は、他にもグジャラートのゴードラーで起きた列車襲撃事件に端を発する暴動、カシミールで軍の弾圧により犠牲となった人々の現状、津波被災後のありさまなどを描いた作品等々、様々な主題にもとづくドキュメンタリーを制作している。取り扱うテーマがテーマだけに、右翼による襲撃をはじめとする攻撃や脅迫などを受けつつも果敢にインド社会の抱える問題点を人々に提示し続けている。

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  • 毒蛇大国

    ラッセル・クサリヘビ
     ラッセル・クサリヘビという蛇がいる。ヒンディー語、ウルドゥー語ではコーリーワーラーと呼ばれているらしい。体長は通常70?から130cmほどだが、特に大きなものは150cmを超すという。ひと咬みで相手に注入する毒の量が多いため、世界でも有数の恐ろしい毒蛇だ。主に草むらに棲息し、パキスタン、インド、バングラデシュなどといった南アジアの国々に多く見られるとともに、東南アジアや台湾などにも分布している。
     毎年インドでは蛇に咬まれることにより5万人もの人々が命を落としているといい、世界全体のこうした死亡事故のおよそ半分を占めるというから、インドは世界に冠たる毒蛇大国ということになる。国内に生息しているヘビおよそ270種中の60種が毒性を持つというインドで、先述の年間死亡者の4割にあたる2万人がラッセル・クサリヘビにより命を奪われているのだから、この蛇がいかに危険であるかということがわかる。なお被害者たちの大半が畑仕事中の農民である。
     毒蛇といっても種類によって毒の性質や強度はさまざまだ。ラッセル・クサリヘビのようなクサリヘビの類は出血毒を持っている。強力な消化酵素から成るたんぱく質を分解する毒だ。 咬まれるとまず細胞組織のたんぱく質が分解され患部に激痛と腫れが発生、それらは徐々に全身に広がっていく。続いて皮下出血や腎機能障害や内臓からの出血、血便、血尿などが起こる。またコブラやアマガサヘビは神経毒を持ち、噛まれるとおもに麻痺やしびれが発生。究極的には呼吸や心臓が停止して死亡に至る。前述の出血毒よりも症状の進行が早いとされる。
     毒蛇に咬まれた場合、傷口の消毒や感染症予防のために抗生物質投与や破傷風の予防注射、出血毒を持つヘビの場合は血液凝固などの措置が取られるとともに、ヘビの毒への対処として血清治療が行なわれる。だが血清による致命的なショックが生じることもあるという。
     あくまでも国全体として見れば、インドにおける血清のストックの状況まずまずのレベルらしいが、特に需要の多い農村部でローカルな医院に置いてなかったり、あっても医師が使いかたについて不慣れであったりなどということが多いなど、毒蛇対策の普及の偏りが大きな問題となっている。
     以前、雨季にラージャスターン州のある小さな町に滞在していたときのこと、食堂で昼食を注文して待っていると、いきなり『コブラが出た』と上に下への大騒ぎがはじまった。店の人によると小型で幼いヘビが狭い店内のどこかに潜り込んでしまったとのことで『まったくどこに隠れちまったんだか?』と困惑した表情。たとえ子供であっても猛毒を持つ恐ろしいヘビに違いはない。私自身はとても食事どころではないと早々に退散した。
     何はともあれ毒蛇に咬まれた場合、治療は一刻を争う。昼間の町中ならまだしも、田舎の村で農作業中に咬まれた場合、付近の病院にたどりつく、あるいは運び込まれる前に手遅れになってしまいそうだ。近くの町の病院が閉まっている夕方以降にやられたりすると、一体どういうことになるのだろうか?想像するだけで空恐ろしい。
    India’s battle against snake bites (BBC South Asia)

  • バンドから一夜開けて

     朝が来た。活気あふれ街中は前日とはまるで別の世界である。喧騒の中、もはや鳥のさえずりは耳に入ってこない。
     バンド・・・といえばインドにおける伝統的な抗議手法だが、かつてのイギリスに対する非服従運動の中でも人々に対してそれに参加するようにと、影に日向に同様の強制があったのではないだろうか?とふと想ったりもする。
     そのころのインドでは植民地行政下において鉄道の敷設と路線の拡充、道路網の整備など、工業化、商業化を進めるためインフラの整備や開発も進行中だった。 20世紀に入ってからは高級官僚など政府幹部のポストにネイティヴの人たちが占める割合が次第に高まってくるなど、行政組織の頂点部分へ現地の人々の進出が目立つようになってきた時期でもある。地元市民の発言力が相対的に高まるとともに、そのころのイギリスではインド勤務に対する魅力が次第に下降線をたどっていたことも原因のひとつだろう。
     ともあれ当時の統治システムの中で日々を送っていた上から下までさまざまな職責の公務員たちにとって、頼みとする体制の不安定化と流動化は自らの将来について大きな脅威であったはず。反英運動に対する取締りにあたった警官たちも、その大部分はインド人たちであり植民地体制化で既得権を持った人々の中では親英勢力は相当な力を持っていたはず。
     商業活動に従事していた人たち、とりわけ都市部でビジネスを営んでいた人々は当時の行政の枠組みの中でそれなりの繁栄を享受していたし、当時英領あるいは英国の保護領となっていた地域との間で活発な取引を行なうなど、英領下であることのメリットは大きかっただろう。
     たとえば当時のマドラスに本拠地を置いていたスペンサー商会にとって、この時代は大きな試練であったという。社会不安はもちろんのこと商会の根幹を成す事業のひとつであった舶来の高価な品々の輸入販売が大打撃を受けたこと、欧州系のオーナー家族による運営がなされてきた商会が、当時の世の中の動きから必要に迫られて経営の現地人化を進めざるを得なくなったのもこの時期であった。
     社会のかなりの部分の人々にとって、民族の大義や社会正義より正直言って日々の稼ぎと個々の家庭の平安のほうが大切だろう。どんな体制下にあっても世の中の大部分の人たちはそのシステムの中で折り合いをつけたり、うまく立ち回ったりして私生活の維持と向上をはかるものである。開拓精神に溢れて機転も利く一握りの人々を除き、多くの人々にとって場合体制が変わること、システムが入れ替わることは大きな不安だと思う。私自身もそういう人間である。
     しかし植民地当およびその協力者たちと反英勢力の綱引きの中で、次第に親英勢力がジリ貧になっていくにつれて鞍替えする人たちが出てきたこと、また内心どちらでもなく状況の様子見をしていた人たちが独立勢力の伸長していき、イギリスの撤退がもはや明白となったあたりで『さあ、乗り遅れるな!』と反英勢力側に飛びつく人たちが続出した・・・なんていう図が目に浮かぶのだがどうだろうか。
     世の中、誰もが『革命家』であるはずはないし、もっぱらの関心事といえば今日と明日の自分自身と家族のことだろう。いくばくかの問題意識を持っていたとしてもひとりで世の中を動かすことはできないから、せいぜい仲間内で批判めいたことを口にするくらいだ。日和見は無力な一市民だけではなく、何事か起きれば巨万の富や権力を失いかねない立場にある人たちにとっても当然の処世術である。
     時代が下れば『勝者の歴史』は美しくまとめられてしまうものの、当時の世間は様々な不協和音に満ちていたことだろう。戦争にしても独立運動にしてもつまるところ『勝てば官軍』なのである。誰もが勝馬に乗りたがるのは無理もない。
     かくして敗者たちのうち機知に富む者たちあるいはコネを持つ人々はいつの間にかスルリと立場を入れ替えて勝者の側に立ち、要領が悪かったり頑迷だったりした人たちは『裏切り者』という烙印を押されてしまうのはいつの世も同じ。かくして敗者たちの主張は闇へと葬り去られていく。

  • 9月8日のマーレーガーオン

     またもやテロ事件が起きてしまった。マハーラーシュトラ州のマーレーガーオンで、9月8日午後、自転車に設置された爆発物による4発の連続爆破事件が起きた。  同州にマーレーガーオンという地名は複数あるが、今回事件が起きた場所はナーシクからグジャラートのバドーダラーに向かう国道3号線の途中にあり、ムスリム人口が6割を占めるイスラミックな街である。
     事件が起きたのはムスリム地域でモスクと近隣のマーケットで爆発が起きた。ちょうど金曜日の礼拝の帰りに被害にあった人たちが多く、今までのところ死者37名で負傷者が100名超ということで、場所柄被害者の大半がムスリムであると伝えられている。事件後(治安当局の『無策ぶり』に)怒った人々がポリスステーションや病院に押しかけ破壊活動を行なう者も出たことに対する対応として、その他予想される緊張状態を回避するためもあり、当局は市内の特にセンシティヴであるとされる地域に外出禁止令を敷いた。
     商業地域や鉄道といった宗教的に中立な場所、あるいはヒンドゥーの寺院や巡礼地のようなサフラン色のスポットではなく、J&K州の外においてはモスクを含めたムスリム地域がターゲットとなったことは、インドで近年起きたテロ事件の中では目新しいものであるといえる。
     今のところ事件の犯人、犯行グループなどについて治安当局がどこまで把握しているのか明らかにされていない。このところ散発しているテロ、とりわけ7月11日に州都ムンバイーで起きた連続列車爆破テロの記憶も新しい中、あたかもヒンドゥー極右側による報復のように受け取られかねないこの出来事は、明らかに社会の分断を狙ったものであろう。 
     コミュナルなテンションが高まることを警戒して、政府も『火消し』に懸命な様子がテレビなどで伝えられている。ひょっとするとこの事件は内政面でも外交面でも今後に大きな影響を及ぼす重要なきっかけとなるのかもしれないので、成り行きを注意深く見守りたい。とにもかくにも非常に残念な出来事である。不幸にして事件に巻き込まれて命を落とされた方々のご冥福をお祈りしたい。
    At least 37 killed, over 100 injured in Malegaon blasts (Zee News)

  • 近ごろのテロ事件、テロ未遂事件に思う

     イギリスで摘発されたアメリカ行き旅客機同時多発爆破テロ未遂事件発覚後、ロンドンからの飛行機乗客たちが手荷物の機内持ち込みを禁止され、パスポートとわずかな身の回り品のみが入った透明なビニール袋を手にしているニュース映像を見て思った。『ついにここまできたのか』と。
     犯行に使われようとしたのが液体の爆発物であったことからあらゆる液体類が機内持ち込み禁止となった。ペットボトルに入った飲料類からはじまり、子供の飲み薬やコンタクトレンズの洗浄液もダメ。ガラス瓶にはいった香水や酒類も当然持ち込めないことになってしまうためバカンスシーズンの向こうも、お盆の出国ラッシュの日本でもまた空港の免税店にとっては大打撃となっているようだ.
     また起爆装置に転用可能とされる携帯電話やモバイルPCなども持ち込み禁止となったという。ビジネスマンたちはとても困るだろう。それにパソコンのような精密機械を機内預け荷物というのは非常に不安でもあるだろう。こういう状態が続くようならば、今後世界を股にかけて行き来する人たちの間では、床に放り出しても壊れないようなタフなノートパソコンが求められるようになるのだろうか。
     それにしても飛行機にほとんど手ぶらで搭乗しなくてはならない時代がやってこようとは、かつて誰が想像しただろうか。それでも今後まだまだアッと驚くような仕掛けで攻撃を企てる者が出てくることだろう。上着の中に爆発物を仕込むという事件が起きてジャケット類の機内持ち込みが禁止となったり、カツラの中に危険物を隠し持つ輩が出てきて長髪の乗客は厳重にチェックされるようになったりということもあり得ないことではないだろう。
     今回の事件について空港のセキュリティ担当者の関与も取り沙汰されているようだ。テロリストたちはこうした保安関係者たちに加えて整備士、あるいは大胆にも客室乗務員や操縦士たちといった部分にも浸透を図るのかもしれない。
     また容疑者グループのメンバーたちの所属するコミュニティや人種に偏りがあるため。今後は一見して風貌や容姿が違うとともにこうした事件に関わった前例のない国籍・人種の人々の取り込みに力を入れるということも考えられるだろうか。
     このところ空の旅への不安は高まるいっぽうだが、同時にムスリムというコミュニティ、ムスリムである個人、ムスリム人口の多い国への漠然としたあるいはあからさまな偏見や敵対感情などが高まっている様子。
     このところ反ムスリム勢力による『Not all muslims are terrorists, but all terrorists are muslims』とのメッセージが現実感と説得力を持って非ムスリム人々の心に響くようになってしまっている現状はとても心配だ。不信と憎悪とそれへの反発と対立。それらは過激分子のさらなる先鋭化へとつながるのだろう。
     来る8月15日はインドの独立記念日。当局により例年厳しい警戒が敷かれるのがこの時期だが今年はいっそう厳重なものとなりそうだ。アメリカは在デリーの同国大使館を通じ、インドの独立記念日前後にデリーとムンバイーでのテロが計画されているとして警戒を呼びかけているからだ。これがただの杞憂に終わるといいのだが。
     しかしこの時期何も起きなかったからといってテロの脅威と縁が切れるわけではない。大事件が発生したり、危険が予測されたりしているようなときには警戒が厳しくなる。だがそうした体制を敷くのには手間ヒマも費用もかかるし、往々にして通常の市民生活を圧迫する部分もあるため恒久的に続けられるものではない。犯人側にとっては警備がゆるんだあたりが再び狙い目ということになる。
     また保安要員その他の数量的限界もある。ムンバイーで起きた郊外電車の連続爆破テロ直後にはデリーの鉄道駅ではものものしい警戒網が敷かれており、プラットフォームに立ち入る際には厳しいセキュリティチェックがなされていた。いかにも外国人然とした私自身もカバンも開けて中身を調べられた。列車内にも制服の警官その他(おそらく私服も)配置されており、一晩中車両間を行き来しては乗客の様子や乗降口の戸締まりなどを確認していた。またこうした保安要員が昔ながらの大ぶりなライフルではなく、小回りの利く拳銃を持っていたのは現実的な対応だと感じた。
     だが首都その他の主要都市を出る際にはそれなりの対策がなされていても、地方都市から首都行きの列車に乗り込む際にはそうしたことは一切なかったし、駅で警戒する要員さえも配備されていなかった。車両の中では武装した保安要員が目を光らせてはいたが。
     そんなわけで悪意を持った人物にとって地方発の上り列車で首都が近づいたあたりで何かしでかすのは簡単なことなのかもしれない。いずれにしても大時代的なおおらかな造りのインドの駅舎には日々数え切れないほど様々な人々が出入りしている。こうした環境で空港並みのセキュリティを実現できるはずはない。インド国鉄側のせめてもの対応として所持する切符と本人のIDを照合できなければ乗車できないなどという日が来るのかもしれない。
     また空港のセキュリティといっても国によって様々だ。そうした国から自国へと向かうインド機を攻撃することを企てる連中もあるかもしれない。手荷物に関して厳しくなってきたとはいえ、相変わらずインド人乗客たちはかなり大きな荷物を抱えて機内へ入っていく傾向がある。チェックの甘い空港でそうした人々に紛れ込むのはそう難しいことではないように思う。なんとも嫌な時代になったものだ。

  • ふたたび不安と不信のはじまりか

     7月11日午後6時台にムンバイーの郊外電車車両や鉄道駅などで連続して起きた爆弾テロ事件により、190人前後が死亡し620人以上が負傷したとされる。事件発生後、コングレス総裁のソニア・ガーンディー、RJD党首で鉄道大臣のラールー・プラサード・ヤーダヴらはデリーから事件発生現場へと急行した。
     どの現場でも同種の時限発火装置が使用されたと見られ、現在までのところこの事件にはこれまで幾度もインドでテロ事件を引き起こしているパキスタンを本拠とする組織と地元インドで非合法化され現在では地下活動を行なう過激派組織がかかわっているとみられている。
     こうした残忍にして愚かな行為はどんな理由があろうとも決して正当化できるものではない。しかしこうした事件を計画・実行しようとする組織や個人に対して、日々不特定多数の人々が出入りするという人口の流動性、常に人々の顔を見ながら生活していても、日々付き合いのある特定の個人を除いて他はすべて見ず知らずの他人であるという匿名性などから、都市といったものがいかに計画的にして組織的な暴力に対して無力であるかということをまざまざと見せ付けられた思いがする。  都会というものは、相手の顔が見えるようでいて、実は私たちが眺めているのは仮面や虚像に過ぎないのだろうか。
     数年前、ムンバイーの市内バスが連続爆破される事件が発生した直後、シヴ・セーナーによる、事件首謀者たちとテロに対する行政当局の無策ぶりに対し、ムンバイー市街地全域に及ぶ規模での抗議活動としての『ムンバイー・バンド』が実行され、その趣旨に賛同するしないにかかわらず同党とその友党であるBJP の活動家たちが市内を巡回・監視し、インドの金融・経済の中心都市として、また市民生活を含むムンバイーの機能が日中一杯すべてストップさせた。
     また事件の実行犯たちと同じくムスリムであることから受けるかもしれない危険や不利益を避けようということもあってか、いくつかのイスラーム教団体やイスラーム・コミュニティを支持母体に含む政党などが、メディアからの声明発信や街頭での演説などを通じて積極的な支持を表明してムンバイー・バンドに『相乗り』する様子も目に付いた。
     指導部の世代交代を発端とする組織の内紛を経て、幾人かの重要幹部たちが抜けた現在のシヴ・セーナーに当時のような力があるのかどうかわからないが、同党を含めてマハーラーシュトラ州はもちろん中央政界でも下野している右派勢力がこの事件を好機とみて与党に対する揺さぶりをかければ、そのコトバが説得力を持って一部の人々の胸に響くことだろう。 事件そのものだけでなく、出来事を受けての政界による反応もコミュニティ間の緊張につながりかねない。ともかく影響は長期に及びそうだ。ここしばらくの間好転している対パキスタン関係も大いに懸念される。
     このたびの事件で犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、これがふたたび『人』『社会』『コミュニティ』『隣国』に対する不安と不信のはじまりとならぬことを願ってやまない。

  • 犬こそは頼れる友人

    bihar police2.gif
     ビハール州でナクサライト(毛沢東主義過激派=マオイスト)が活発な地域では、警察署あるいはパトロール中の警官たちが攻撃を受けたり、命を落としたりといったニュースがしばしば聞こえてくる。同州内の38のディストリクト中、18の地区では彼らの活動が盛んで流血事件がしばしば発生している。
     この左翼過激派たちによる奇襲を恐れて、特に日没後には屋外に置いた机などすべての備品を屋内にしまい込み、本来ならば地域の治安維持を担うべき警官たちも「身の安全のため」建物の中にじっと閉じこもるのが常になっている地域もあることも含め、このあたりの新聞等ではよく報道されているところだ。

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  • チャンバルの盗賊の死

     昨年の今頃であったただろうか。伝説の大盗賊ヴィーラッパンが南インドで警察の治安部隊とのエンカウンターの結果、絶命したのは。
     そして今年は、かつてのプーラン・デーウィーと同じく、北インドのチャンバル渓谷を舞台に悪名を馳せたニルバイ・グルジャルが、STF(Special Task Force)との銃撃戦の末、死亡した。おとといの夕方のことである。
     しばしばメディアの取材に応じ、写真とともに記事が掲載されていたので、まるで絵に描いたような「悪漢」らしい不敵な面構えが脳裏に浮かぶ人も多いだろう。
    nirbhai.jpg
     200件を超える凶悪事件のお尋ね者。年齢は40代とも50歳を越えているともいわれていたニルバイは、幾度か結婚を繰り返しているが、いずれも妻となった女性たちとの家庭生活は長く続かなかった。その中には部下と駆け落ちした者あり、警察に逮捕されてそのまま生き別れになった者あり・・・。
     獲物を求めて野山をさまよう「狩人」には、世俗の家庭生活などもともと似合わなかったのかもしれない。

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  • アラビア海から大津波がやってくる?

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     いよいよ11月だが、ちょっと気になることがある。それは「今年11月にグジャラートとマハーラーシュトラ両州を津波が襲う」という、アーンドラ・プラデーシュ出身のインド系カナダ人「津波専門家」による発言だ。
     彼によれば、次の大津波はアラビア海で発生するだろうということだ。亜大陸では地殻変動による津波が60年周期で起きており、ひとたびそれが起きればグジャラートとマハーラーシュトラで大きな被害が出るだろうとのこと。
     その根拠とは何かといえば「1945年に起きたアラビア海の津波からちょうど60年目にあたる。昨年の津波との相関があると思われ、今年年末までには津波が起きるだろう」というなんだか説得力のないものであるが。ちなみにアラビア海における前々回の津波は1883年だったそうだ。
     そうした指摘におかげ(?)か昨年南インドを襲った津波の教訓か知らないが、行政当局は沿岸部での津波警報システムの構築やマングローヴの植樹といった対策の検討を進めている。なにはともあれ万一の場合に備えて準備をしておくのはいいことだ。
     下記リンク記事は今年9月のものだが、「津波の予言」が空振りに終わることを願いたい。
    Tunami could hit Gujarat-Mumbai coast in November (Hindustantimes)

  • 祝祭を前に

    explosion.jpg
     10月29日午後5時58分にパハールガンジで装身具店前の路上に駐車してあったスクーターが、午後6時5分にはサロージニーナガルではチャート(スナック)の露店が爆発した。それらに続きオクラーではDTCバス車内に置かれた不審な荷物に気づいた乗客に注意を促された車掌とドライバーが中身をあらためた結果、爆発物と確信して外に放り出した際に炸裂した。今回の一連の事件で非常に強力な爆薬RDXが使用されたとされる。
     市内各所のマーケット、そして鉄道駅やバスターミナルなどでは新たな事件の発生および不審者洗い出しの一環として、乗客の厳しい荷物検査などの警戒態勢が敷かれているが、首都デリーのみならず、ムンバイなどインドの他の大都市でも同様の措置が取られているという。 
     しかしディーワーリーの休暇のため人々が大移動する時期でもあるため「これだけの人ごみを限られた数の警官たちでどうやってチェックできるのか」「人の流れまではコントロールできない」と、その効果を疑問視する声も上がっている。
     現在までのところ死者55名、負傷者155名と伝えられているが、事件の詳細が明らかになるにつれて、この数字はさらに拡大するのかもしれない。負傷した人々は市内各地の病院に収容されているが、輸血用血液の不足のためメディアを通じて献血提供者を求めるアピールが続いている。
     公務でトリプラー訪問中であったマンモーハンスィン首相は、帰路コルカタに到着した時点で事件が発生し、現地に滞在する予定をキャンセルして急遽デリーに戻り対応に当たることになった。
     今年はディーワーリーとイスラーム教徒のラマダーンの断食明けの祭りがほぼ重なることになるが、これらの祝祭を前にしてこうした事件が起きてしまったことはとても残念である。事件関係者の身柄の確保や事件の真相の究明等が急がれるところであるが、この出来事が今後社会のありかたに甚大な影響を及ぼすであろうことからも、事態の推移を注意深く見守っていきたいものである。
    Serial blasts rock Delhi; scores killed (Hindistan Times)

  • 嵐の予感

     本日デリー市内各地(パハールガンジ、サロージニーナガル、オークラー)で連続爆破事件があり、死傷者が出ているようだ。チャンドニーチョウクでは未遂に終わり、爆弾処理班により不発化されたと伝えられている。
     死傷者が出ているようだが、経緯や事件背景等を含めた詳細がメディアを通じて明らかになるまで、もう少し時間がかかると思われる。7月に起きたロンドンでの連続テロ事件を含めて、もはや「定番」となった「同時多発」型であることも気になるところだ。
     これを書いている時点では犯行声明は出ておらず、イスラーム過激派の犯行あるいは90年代初頭以降沈静化しているパンジャーブの分離主義テログループによるものである可能性等々、様々な憶測が飛び交っているようだ。
     いずれにしても国内的にはコミュナルな摩擦が一気に噴出する可能性があるだろうし、先の総選挙以来後退気味の右派勢力がここにきて一転攻勢に出る追い風にもなろう。対外的にはここしばらく良好な印パ関係についても大いに懸念されるところである。
     この先インドでひどい「嵐」が吹き荒れることがないことを願うが、どうやらタダで済まないような気がしてならない。
    DELHI SERIAL BLASTS
    Several feared killed as serial blasts rock Delhi’s markets