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カテゴリー: news & media

  • インドの偉大さ

    先日ミャンマーで発生したクーデター。せっかく民主化してから10年経つというのに、時計の針を一気に戻してしまうような、せっかく軌道に乗って明るい将来を描こうとしていた経済が、これからどうなるのだろうか。ミャンマーからのニュースを目にして、耳にして、ふと思うのは、年中ゴタゴタが絶えない割には、揺るぐことのないインドの安定ぶりである。隣国パキスタンやバングラデシュでは、クーデターあり、政変ありで、目まぐるしいことが多いのだが、インドは時の政権が不人気で政局が流動的になることはあっても、国の根幹が揺らぐことはない。

    いや、例外はあった。インディラーの時代に強権が独走した「非常事態権限」のころである。あのときは在野の政党や指導者たちと民衆が力を合わせてインディラーの独裁に抵抗した。決して長くはなかったが、そんな時期はあった。当時、軍の一部では不穏な動きもあったとのことで、もしかしから?という可能性はあったのかもしれない。

    また、隣国との係争地帯を抱えるカシミール、同様に中国その他からの干渉がある「動揺地域」である北東部のいくつかの州は、そうした周辺国と連動性のある分離活動のため、本来ならば国境の外に向いているべきインド軍の銃砲が、地元市民にも向けられる状態であったため、「インドの民主主義の外」にあった。いや、「あった」という過去形ではなく、地域によっても今もその状態は継続している。そんな地域では、警察組織ではない軍隊に市民を尋問したり拘束したりする権限が与えられていて、さまざまな人権問題も発生しているのだ。

    だが、そうした地域は例外的なもので、やはりインドといえば、独立以来ずっと今にいたるまで非常に民主主義的な国だ。

    90年代以降のめざましい発展が言われるインドだが、まだまだとても貧しい国だ。日本、ドイツに次いで世界第5位のGDPの経済大国とはいっても、13億を軽く超過する、日本の10倍もの人口を持つがゆえのことで、一人当たりのGDPにならすと、わずか2038ドル。9580ドルの中国はインドの4.7倍だ。もう比較にもならない貧しい国である。

    そして文字を読み書きできない人々は総人口中の23%。ひどい州になると33%にも及ぶ。今、西暦2021年なのに・・・である。そんな貧しい人の票もミドルクラスの裕福な人たちの票も等しく一票。投票所の投票マシーンには、政党のシンボルマークが描かれており、文字が読めない人でもそれを頼りに票を投じる。中央の選挙でも地方の選挙でも、ときどき不正があったのどうのという話は出るが、どんな不満があっても居座ったり、クーデターを画策するようなこともなく、敗者は退場していく。落選した議員、失職した大臣などが、政府から与えられた官舎から落選後もなかなか出ていかないというトラブルはあるようだが、公職に力ずくでしがみつこうとするような話はまずない。そのあたりは実にきっちりしている。さすがはインド。

    スーチーさんは母親のキン・チーさんがインド大使であったため10代の一時期をデリーで過ごしており、現地で学校にも通っていた。当時首相であったネルーとも家族ぐるみの親交を持ち、24 AKBAR ROADにあった屋敷がキン・チーさんの大使時代に与えられていた。青春時代にインドの首都で「デモクラシー」の薫陶を受けたスーチーさんにとって、「民主主義インド」は彼女の理想かどうかは知らないが、ひとつの重要なモデルであるとされる。

    それにしても、ネルーからこの24 AKBAR ROADの屋敷を使わせてもらっていたというのは大変なことだ。現在の国民会議派の総本部があるのが、まさにその場所なのだ。そのような重要なところに住まわせてもらっていたのが現在のスーチーさんを含めたキン・チーさん家族。インドと、そして初代首相のネルーと、実にゆかりの深い人だ。それだけに、今の時代になってもミャンマーでこのようなことが起きて、自宅軟禁となっているのは、なんとも皮肉なことである。

    同時に、常々いろいろな問題や不正に満ちていながらも、「総体としてはしっかり」しており、「根幹は良識と法で守られている」インドに対して、いつもながら畏敬の念を抱かずにはいられない。「JAI HIND !(インド万歳)」という言葉が自然と口に出る外国人は、実に多いのである。

    For Japan, Myanmar coup brings fears of threat to business, political ties (The Mainichi)

  • 「アーリア人の谷」の気になる噂

    ラダックのブロクパの人たちの地域、俗に「アーリア人の谷」とも呼ばれるところだが、そこにはチベット文化と仏教を受容したアーリア人たちが暮らしている。

    「アレキサンダーの東征の末裔」という説もあるが、中央アジアのフェルガナ盆地に端を発するアーリア人たちの幾多の集団が、現在の欧州、イラン、南アジア等へと移動していく中である集団は定着し、またある集団はさらに先へと移動していった。こうした集団の中の小さなグループがたまたまこの地に定住して、現在に至っているのだろう。周囲はモンゴロイド系の人たちの地域ながらも急峻な山岳に遮られているエリアだけに、そのままコミュニティが残されたのだろうか。

    そんな珍しい地域で嫌な噂が流れているのに気が付いたのは近年。「妊娠ツーリズム」というものがあるのだというのだ。「純粋なアーリア人の遺伝子を求めて子供を授かることを目的でやってくる欧米人女性がいる」という話である。

    当初は根も葉もない与太話だと思っていたのだが、India Today傘下のニュース番組でも取り上げているところから、実際にそういう例はあったようにも思える。ナチスの優生思想ではあるまいし、「純粋なアリアン」が何だというのだろうか。アーリア人の血とは、それ以外の人たちにくらべて、そんなに尊いもののなか。

    それとは別に「現地男性が女性旅行者に買われる」という倫理的な問題がある。言うまでもなく「女性が男性旅行者に買われる」というケースは世界中で多く、これも同様に倫理的に問題なのであり、「アーリア人の谷」でのこの件がそれらより大きな問題というわけではないのだが、こんな小さなコミュニティのもとで、そんなとんでもない「ツーリズム」が振興したとしたら、本当に大変な話だ。

    それはそうと、この地に暮らす「アーリア人仏教徒」というのは、たしかにちょっとミステリアスな存在ではある。しかし「純粋なアーリア人」という意味では、チベット文化を受容しており、チベット仏教徒となっている人たちが多いことなどから、「純血種」というわけでもないように思う。灰色や緑色の瞳の人たちは多いが、総じて小柄で肌色は赤みがかって(これは日焼けか・・・)おり、風貌も先祖のどこかにモンゴロイドの面影を感じさせる村人も少なくないのである。長い歴史の中でどこかで他のコミュニティとの交流があり、混血が繰り返された過去があると考えるのが自然だろう。

    まあ、いろいろ頭に浮かぶことはあるのだが、地域起こしに観光というものは手っ取り早く収益を上げることができ、放っておけば失われてしまう地元の文化を「観光資源」として守り育てていく効果もあるのだが、方向性を誤ると地元の文化やコミュニティをひどく傷つける、地域の評判を著しく落とすたいへん不健康なものとなりかねない。

    このような「ツーリズム」は、ごく一部の非常に稀な事例に尾ひれがついて広まった「都市伝説」みたいなものではないかと個人的には思いたいのだが、とりあえずは今後の進展に注目していくしかない。

    Pregnancy tourism in India (INDIA TODAY)

     

  • リシ・カプールを悼む

    リシ・カプールを悼む

    4月29日にはイルファーン・カーンが亡くなり、とても残念だったが、その翌日4月30日にはリシ・カプールが亡くなり、打ちひしがれた一週間だった。
    ラージ・カプールの息子にしてランビール・カプールの父親。数々の大作に出演し、近年は脇役での出演が主になっていたが、個人的には老いてからのリシ・カプールのほうが好きだった。役者一家のカプール家の中で、父親ラージ・カプールは別格としても、もっともカプールらしいカプールのひとりだったように思う。
    素敵な役者さんだった。
    ご冥福をお祈りします。
    葬儀も気の毒なことに、ロックダウンのため参列できる人は少なく、ごく近い親族でもはせ参じることができない人もいたことだ。あれほどの大物スターの最期がこんな寂しいものとなるとは想像もできなかったことだ。

    Bollywood loses another veteran star: Rishi Kapoor passes away at 67 (stuff.co.nz)

  • 発行済のヴィザ効力停止

    従前より、中国の人々に発行されたインドヴィザの効力停止は伝えられていたが、日本人に対しては、ここ数日間でヴィザ・オン・アライヴァルの停止、e-visa申請受付停止ときて、「遠からず私たちも・・・」と思っていたら、やはり昨日3月3日に「発行済のヴィザの効力停止」ときた。

    下に貼り付けた英文記事は、この件に関するインド政府の報道発表。ご参照いただきたい。

    インドや日本などのメディアによっては、ヴィザについて「キャンセルした」「破棄した」等々の表現が見られるのだが、政府の公式発表を見る限りでは、「suspended」とあるので、「(一時的に)効力停止」であるように思うのだが、日本の外務省の出先機関である在インドの大使館、領事館等からのニュースレターでは、「日本人に対して3月3日以前に発給されていたあらゆるビザ(通常ビザ及びe-Visa)は無効となる旨発表」とある。これだと「現時点で」「一時的に」という含みは感じられないように思えるのだが、どうなのだろう。

    またこの「無効」となるヴィザについて、対象者は「日本居住者」ではなく、「日本国籍」となっているため、たとえこれまで新型コロナウイルス感染者がひとりも出ていない国に居住し、何年間も日本に帰国すらしていない人であっても、この措置から逃れることはできないことにも留意が必要だ。

    また「who have not yet entered India」という下りについては、「マルチプルのヴィザで、今は日本にいるけれども、インドにはこのヴィザで1度入国しているから大丈夫」というものではなく、「報道発表時点でインドに滞在・居住しているかどうか」とのことだ。

    今年の正月明けくらいまでは、保健衛生上の理由から日本からの入国を拒否する国々が続々と出てくるようなシナリオは「清潔な国、日本」を自負する私たちには、まったく想像すら出来なかったが、「まさか!」の事態が音を立てて進行中である。

     

    Ministry of Health and Family Welfare

    Update on COVID-19: revised travel advisory

    Posted On: 03 MAR 2020 1:31PM by PIB Delhi

    In view of the emerging global scenarios regarding COVID19, in supersession of all earlier advisories, the following advisories are issued for immediate implementation:

    All regular (sticker) Visas/e-Visa (including VoA for Japan and South Korea) granted to nationals of Italy, Iran, South Korea, Japan and issued on or before 03.03.2020 and who have not yet entered India, stand suspended with immediate effect. Those requiring to travel to India due to compelling reasons, may seek fresh visa from nearest Indian Embassy/Consulate.

    Regular (sticker) visa / e-Visa granted to nationals of Peoples Republic of China, issued on or before 05.02.2020 were suspended earlier. It shall remain in force. Those needing to travel to India under compelling circumstances may apply for fresh visa to nearest Indian Embassy/Consulate.

    Regular (sticker) visas/e-Visas granted to all foreign nationals who have travelled to Peoples Republic of China, Iran, Italy, South Korea and Japan on or after 01.02.2020, and who have not yet entered India stand suspended with immediate effect. Those requiring to travel to India under compelling circumstances may apply for fresh visa to nearest Indian Embassy/Consulate.

    Diplomats, officials of UN and other International bodies, OCI cardholders and Aircrew from above countries are exempted from such restriction on entry. However, their medical screening is compulsory.

    Passengers of all international flights entering into India from any port are required to furnish duly filled self declaration form (including personal particulars i.e. phone no. and address in India) and travel history, to Health Officials and Immigration officials at all ports.

    Passengers (foreign and Indian) other than those restricted, arriving directly or indirectly from China, South Korea, Japan, Iran, Italy, Hong Kong, Macau, Vietnam, Malaysia, Indonesia, Nepal, Thailand, Singapore and Taiwan must undergo medical screening at port of entry.

    Indian citizens are advised to refrain from travel to China, Iran, Republic of Korea, Italy and Japan advised to avoid non-essential travel to other COVID-19 affected countries.

    MV

    (Release ID: 1604942) Visitor Counter : 6683

    Update on COVID-19: revised travel advisory (Press Information Bureau, Government of India)

  • ジャグダルプル空港

    ジャグダルプル空港

    南の方角から走ってくると、ジャグダルプルの市街地に入るあたりで空港が見える。まだ新しい施設だが昨年11月から乗り入れがなくなっている。昨年6月からラーイプル→ジャグダルプル→ヴィシャカパトナムというフライトが就航したのだが、半年も持たなかった。
    市街地に隣接しており、繁華街はすぐ目の前。利用者にとっては大変便利な立地だったはずだが、その数については大変ずさんな試算のもとで空港の建設がなされたということなのだろう。
    近年のインドでは、数多くの空港建設が進んでいるが、せっかく完成しても乗り入れる定期便がない、就航したもののすぐに乗り入れ停止というケースも少なくない。ジャグダルプル空港もそうした中のひとつである。

    ジャグダルプルの空港の市街地からのアクセスの良さはインド最高クラス。繁華街から徒歩でも行ける距離だ。

    PM Modi Inaugurates Flight Service From Jagdalpur To Raipur (NDTV)

    Why flight services to Maoist-hit Bastar region have been discontinued 5 months after launch (FINANCIAL EXPRESS)

  • 現代のシャー・ジャハーンとムムダーズ・マハル

    現代のシャー・ジャハーンとムムダーズ・マハル

    亡き妻のために「うちのタージマハル」を建てたとして何年か前に話題なっていたUP州の元郵便局長。

    This retired UP postmaster built a Taj Mahal for his ‘Mumtaz’ (Hindustan Times)

    昨年、自らも亡くなり、奥さんと一緒の墓廟に埋葬されたとのこと。
    美しい愛のエンディングストーリー。
    ただし、現代のジャー・ジャハーンの死は交通事故によるものであったことは痛ましく残念である。

    Ex-postman to be buried in ‘mini-Taj’ with late wife (Times of India)

    以下の動画から、仲睦まじい夫婦であったことが偲ばれる。
    自宅の窓からいつでも墓廟が見えるようになっており、幽閉されたシャー・ジャハーンは窓から見えるタージマハルを眺めて、先立った愛妻ムムターズのことを想いながら過ごしたという逸話そのままのようだ。


    The Retired Postmaster Who Built A Taj Mahal For His Wife | Unique Stories from India(Youtube)

  • 日本とネパールを繋ぐお金の縁

    紙幣の原料となる樹木、ミツマタの大半をネパールからの輸入に頼っているとのこと。
    リンク先記事によると、もともとネパールでよく採れていたというわけではないようで、1990年代からネパールでの栽培を始めたようだ。
    日本とネパールのお金をめぐる縁は、日本からの国際協力のみならず、ネパールが日本の紙幣発行を下支えしてくれているという側面は、これまであまり知られていなかったはずだ。

    ネパールが支える日本紙幣 原料の樹木、大半を生産(日本経済新聞)

  • ドキュメンタリー映画「Final Solution」が描くモーディーとBJP

    2002年にグジャラート州で発生した大暴動を取り上げたドキュメンタリー映画。
    重たい内容だ。以前はこの関係の書籍等も沢山出回っていたのだが、最近見かけなくなっている。事件はもはや風化してしまったかのように思われる。
    この暴動とそれによる殺戮について、背後で当時州首相であったナレーンドラ・モーディーが深く関与していた(らしい)ことも言われていた。この関係でグジャラート州首相時代、米国入国禁止になっていたことはよく知られている。
    だが2014年にインド首相就任すると、アメリカは黙って禁を解いてしまった。
    モーディー自身は、経済に明るいこと、お金についてはクリーンなことで人気で、州首相としても国の総理大臣としても実績を上げてきたが、思想的には危険な人物であることを忘れてはならない。

    Final Solution (2004)

  • インド人にとっては「安・近・短」のブータン訪問

    インド人にとっては「安・近・短」のブータン訪問

    IRCTCといえば、インド国鉄子会社で主にチケット予約とケータリングサービスを主な業務としている。加えて豪華列車その他の国鉄を利用したツアーはもちろんのこと、鉄道がルートに含まれないツアーなども販売している。リンク先はIRCTCによるブータンツアーに関する記事。
    日本ならば民業圧迫だと非難されそうだが、インドにはまだ民業と被る業種の公営企業が少なくないためもあってか、同様の例はけっこうある。

    さて、そのブータンだがネパールと並んでインド人にとっては「安・近・短」の外国であり、国内にブータン人が多いこと、ブータン事情についてのニュースも日本と較べて格段に多いこともあり、「幸せの国がブータン」というブータン政府プロパガンダに影響されることなく、「ただのインド周辺国のひとつである」という正しい認識がされているようだ。

    インド・ブータン間では相互査証免除となっていることもあり、わたしたちと違って高額なツアーを利用する必要もなく、自国内を旅行するのと同じように、気のおもむくままに移動や宿泊ができる。通貨もインドルピーとブータンニュルタムは等価なので、インド人は自国ルピーでそのまま日々の支払いができるのだ。インド国内と違うのは、たいていお釣りはルピーでなく、ニュルタムで返ってくるところか。

    ブータンでは初等教育から国語のゾンカ語授業を除いて、インド政府の協力を得て、すべて「英語化」されたのは1970年代。またブータン人たちの間ではヒンディー語が広く普及しており、よほどのおじいさん、おばあさんでなければ、たいていの人たちはどちらもごく当たり前にしゃべることができるようだ。

    日本人にとっては訪れてみたいと思っても、けっこうハードルが高いブータンだが、インド人旅行者には大変親和性が高く、費用的にも訪問しやすい国なのである。そんなこともあり、ロンリープラネットの「ブータン」ガイドブックについては、あまり知られていないが「インド人専用版」がインド国内限定で販売されている。

    Lonely Planet 「Bhutan」のインド人専用版

    インドパスポートを持って、見た目ブータン人と似た顔のモンゴロイドながらも実はインド人という立場でブータンを安旅行できたら大変面白そうなのだが、それが可能なのはインド北東地域のモンゴロイド系の人たちに限られるのは残念である。


    IRCTC Tourism Bhutan Tour: Destinations Covered, Fares And Other Details (NDTV.COM)

  • 上位カーストが対象の留保枠

    EWS(経済的弱者層)への10%の留保を設定することが決まったのは今年の1月。これまでの留保対象とならない層における一定水準以下の収入の世帯の者への救済策だ。つまり上位カーストの貧困層に対するものとなる。

    暮らし向きの良さ悪さはカースト上の秩序と比例するものではない。つまり同じ程度に貧しくてもカーストが高いほど損をするという「逆差別」への救済措置となるエポックメイキングなケースと言える。

    従前から「上位カーストへの留保を作る」と公言していたBJPの公約の実現だ。このあたりが出てくるのは総選挙が迫ってからという、いかにも計算された選挙戦の一環ということになる。

    来月終わりから再来月はじめにかけて投票が実施される(警備要員の配置その他の理由から全国一斉にではなく、いくつかのフェーズに分けて実施される)総選挙の争点のひとつでもある。 

    カーストをベースとせず経済状態に依拠する留保枠が設定されることは歓迎すべきことだが、肝心の収入レベルをどのように判定するのだろうか?インフォーマルセクターで日銭を得る人が占める割合も高いので、このあたりの不透明さも今後問題になってくることが容易に予想される。

    10% EWS quota for social equality: Centre (Hindustan Times)

    しかしながら、まだハードルがある。これまで留保枠は全体の50%を越えないという制約があったため、カーストに依拠としない(しかしSC、ST、OBCsに含まれない層を対象とすることから、まったくカーストに依拠しないとも言えない)留保枠を認めるかどうかについて、最高裁の判断に委ねることになっている。

    上位カースト貧困層への救済という観念が現実のものとなったのは良いことかもしれない。だが全体の5割、6割が留保対象となるというのは、あまり健全なこととは思えない。

    現代インドにおいて、「システムとしては存在しないはずのカースト」により「現実に存在する不平等」を解決するための「必要悪としての上位カーストへの逆差別」とその「逆差別により不利益を被っている層への救済」という矛盾とともに、「帝国主義時代に英国がインドの人々を縛った分割統治」の手法が、「民主主義の時代に人々が利益誘導のため活用」するというパラドックスがある。

    10% quota: Centre’s defence of reservation for poor upper castes in SC raises several questions (scroll.in)

  • プリヤンカー・ガーンディーの政界デビュー

    昨日、インドから凄いニュースが飛び込んできた。国民会議派総裁ラーフル・ガーンディーの妹、プリヤンカーの政界デビュー。

    これまで選挙戦で応援演説に立つことはあったが、政治活動とは極力関わらずにいた彼女だが、会議派幹部(UP州東部担当)として正式に活動開始となった。 UP州東部といえば前回選挙でモーディーの出馬した選挙区バナーラス、UP州首相アーディティャナートの本拠地ゴーラクプルを含む。おそらく彼女はこのUP州東部から総選挙に出馬するのだろう。ガーンディー家の伝統的な地盤があるUP州西部のラーイバレリー地区からではなく。

    前回国民会議派総裁、ソーニアー・ガーンディーの娘だが、90年代にソーニアーが政治に担ぎ出された頃、彼女の息子ラーフル、娘プリヤンカーが成長するまでのつなぎという役回りだったが、その息子、娘で大きく期待されていたほうは、このプリヤンカーであった。

    知的かつ自信に満ちたスピーチはもとより、「ガーンディー王朝」と揶揄された国民会議派のネルー家嫡流にふさわしいノーブルさ、気高さ、品格を持つのがこのプリヤンカーであった。 加えて祖母インディラーの面影を濃く感じさせる物腰、仕草、スピーチなどからも、「まったくもって凡庸」な兄ラーフルより、はるかに人気がある。輝き具合がまったく違う。
    インディラーの面影といえば、ソーニアーは努めて義母のなりふりを模倣していたものだが、プリヤンカーに備わるそれは、やはり生来のもの、DNAに刻まれたものなのだろう。

    先の複数の州議会選挙を潮目に、流れが変わったように見えるインド政界。「インディラーの再来」としてのプリヤンカーのデビューで、一気に上げ潮の勢いとなるのではないかと思われる。まさに「真打ち登場!」といったムードのマスコミの扱いである。

    しかしながら不安要素もある。

    プリヤンカー人気、プリヤンカーの幹部入りは会議派の大きな強みであり、同時に大きな画像弱みでもある。その「弱み」は何かと言えば、プリヤンカーの夫、実業家ロバート・ワドラーの存在。
    プリヤンカーの人気と影響力を背景に、彼自身は党の人間ではないのに、会議派内のことに口出しをする、また彼のビジネスには、いろいろと黒い噂が付きまとう非常に濃いグレーな人物だ。
    これまでもソニアーとラーフルが、ロバートの怪しげなビジネスの関係で追求されたことが幾度かある。

    今後、インド総選挙が近づく(今年4月終わりから5月あたりになる見込み)につれて、日本の新聞にも「話題のプリヤンカー氏とは」というような記事が掲載されることもあるだろう。彼女の影には、ロバート・ワドラーという、すべてを台無しにしかねないとんでもない奴がいるということは覚えておいたほうがいいだろう。

    Priyanka Gandhi Vadra Joins Politics, Gets Key UP Post Ahead Of Polls (NDTV)

  • 留保制度

    インドでは高等教育機関進学や公部門への就職などの際に留保制度があり、指定カースト(SC)、指定部族(ST)、その他後進階級(OBCs)といったカテゴリーの人たちが恩恵を受けることになる。

    これについては昔からいろいろ議論のあるところだが、ちょうどアメリカにおけるアファーマティブアクションと比較されることもあり、恵まれない境遇にあるが、やる気と能力にあふれる若者たちを多数引っ張りあげてきたことは間違いない。

    ただし・・・である。

    カーストの上下は現在の人々の社会的地位や経済状態を反映するものではなく、たとえば指定部族出身でも州大臣になり、身内で手広く事業も手がけて大変豊かになっていたり、その他後進階級出身だが弁護士や医者として成功して高級住宅地に住んでいるような人も珍しくない。

    そのいっぽうで貧しい高位カースト出身者も無数に存在している。ムンバイーのタクシー運転手の大部分は北インド、UPやビハール出身者たちだが、若いころから何十年も汗水流して働き、収入のほとんどを故郷の家族に送金しているこうした人たちの中に、最高カーストであるブラーフマンであることを示す名前を持つ相当な人数が含まれているのだ。

    そんなわけで、実際の経済状態ではなく、観念上の出身ジャーティで留保が決まるというのはあまりに不公平だという意見は以前からよくあった。
    だが、たしかに後進階級や指定カースト、指定部族の中にこそ、貧困はより多いし、差別されがちなので就職も容易ではない。ゆえに留保をというのは仕方ないものでもあった。

    だが「その他後進階級」という定義がクセ者で、我らも加えよ、俺たちも追加しろと、様々なコミュニティーが政治を動かし、このカテゴリーに仲間入りさせるよう働きかけてきた歴史がある。

    そんなわけで、憲法ではカーストは否定されているが、厳しい現状を前に、これを解決するための必要悪としてこうした「逆差別」が設定され、これにより救済される人たちが増えてくれば、それらのコミュニティーの社会的経済的地位が向上して、この問題が解決し、制度そのものが用済みとなる・・・はずであったのに、それとは裏腹に留保すべき対象がどんどん増えていくのだ。

    そしてついに、このたびは上位カーストの人々(Swarn Jati)の人々にも10%の留保を!という議論が展開しており、いっそう混迷してしまっている。

    留保制度というものは、底なしの泥沼のようなものである。

    BJP aims to woo back core voters by announcing reservation for upper castes (The Tribune)