地球温暖化の懸念が高まる中、それを生じさせる原因を少しでも削減しようという試みがなされており、それ自体がビジネスにもなっている昨今。『悪役』をあぶり出す動きもまた盛んである。
温暖化の元凶とは、おおまかにいえば工業化と都市化に集約されるものとばかり思っていた私だが、生き物の活動による影響もかなりあるらしいことを知ったのは、次の記事を目にした本日のことだ。
牛のげっぷを9割削減 出光と北大、天然素材発見(asahi.com)
なんでも、げっぷに含まれるメタンの温室効果は二酸化炭素の21倍もあるのだという。大型動物がゆえに1頭あたりが発生させるメタンの量も多いために問題視されるのだろう。記事によれば、日本国内の牛440万頭から年間32万3000トンのメタンが発生しており、これは二酸化炭素換算で678万トンに相当するという。これは日本国内の温室効果ガス年間排出量の0.5%に相当するというからバカにならない。
牛1頭あたりの排出量1.54トンを、1億8千万頭いるとされるインドの牛たちに、体格は違えどもそのまま当てはめてみれば、2億8千万トン近い数字が出てくる。つまり先述の日本における温室効果ガス排出量二酸化炭素換算の値のおよそ2割!にまでなってしまう。インドの温室効果ガス排出量は日本よりも少なく11億トン弱程度のはずなので、この中に占める割合は25%にも及ぶことになる。でもよくよく考えてみるまでもなく、インドの温室効果ガス排出量の四分の一が牛のげっぷだなんて、これはきっと何かの間違いだと思うのだが・・・。
記事中にある『牛のゲップを9割抑える天然素材』として、カシューナッツの殻に含まれる成分と、ある酵母菌に含まれる界面活性剤が用いられるといい、2011年度には商品化することを目指しているとのことだ。
温暖化対策に有効とされるバイオ燃料の需要により、穀物をはじめとして様々な農産物とその加工品の値段がグンと上がったように、世界の『牛げっぷ対策』でインド特産のカシューナッツの価格が高騰することもあるかもしれない。すると、これを原料とする(ココナツから醸造するものもあるが)フェニーの小売価格が暴騰し、ゴアの庶民の手に届かなくなった・・・なんていう話も後日出てくるのだろうか。
カテゴリー: nature
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牛のげっぷ問題
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トラも大変 村人も大変
先日、ZEE NEWSを見ていたら、スンダルバンのトラ保護区近くの村に侵入したトラが捕獲され、これを安全な場所に逃がしたという映像が流れていた。
YoutubeでもCNNが流した同じコンテンツを見ることができる。 侵入した村で、そこに暮らす人々による反撃を受けて負傷したトラは妊娠中。追われてヤシの木の上に避難していたところを、担当官たちが麻酔銃などを使って捕獲、そしてケガの治療をしたうえでトラ保護区内まで船で運搬し、マングローブの森林地帯で解放したものだ。
上記リンクのビデオは映像が終わってしまっているが、拘束を解かれたトラは河の中に停泊した船からビヨーンとジャンプして水中に飛び込み、河岸まで泳ぎついた後、泥地を跳ねながら彼方へと消えていった。
スンダルバンとは、世界最大級のマングローブ森林地帯で、そこに育まれた豊かな大自然と貴重な生態系、トラやカワイルカなどをはじめとする希少な生き物たちで知られる。ユネスコの世界遺産に指定されている。インドとバングラーデーシュにまたがる広大な地域であるが、前者側では『Sundarbans National Park』として1982年に、後者側では『The Sundarban』として1997年に登録されている。つまりひとつの広大な地域『スンダルバン』が、国境を境に別々の遺産となっている。
ラージャスターン同様、スンダルバンでも密漁によるトラの頭数の減少が心配されている。また本来開発が制限されている地域でありながらも、他地域からの人々の入植や伐採などにより、トラが生息できる環境がだんだん狭まってきていることから、彼らの行動圏と人間の生活圏の重なる部分が増えてきていることも大きな懸念材料だ。
スンダルバンで村人が『トラに襲われて死亡』といった事件はしばしばメディアで報じられるところだ。通常、トラは獲物の背後から奇襲することが多いという習性を踏まえたうえで、後頭部にお面をかぶったり、農業や養蜂などで作業をする場所の近くに囮の人形を置いたりして対策を講じているようだ。それでもやはりトラの行動エリアと重なる地域で寝食することのリスクを取り除くことができるわけではない。この大型肉食獣は、本来の『食物連鎖』では私たちヒトよりも上位にある動物であり、他の逃げ足の速い草食動物を狙うよりも、丸腰で単独で歩いている人間を狙うほうが簡単であることは言うまでもない。
西ベンガル政府には、Department of Sundarban Affairsという部局があり、スンダルバン担当大臣までいる重要な部署でもある。バングラーデーシュ政府には、そのものズバリ『スンダルバン省』なるものはないようだが、いずれの国も私たち人類が共有すべき貴重な『世界遺産』としてのスンダルバンをしっかり守っていって欲しいものだ。
しかしながら、ここにもまた人々の生活があり、行政にしてみても財政的な制約があることなどから、保護といってもそう簡単なことではあるまい。豊かな自然を破壊するのは人間だけではなく、ときにその大自然自身もスンダルバンを傷つけることがある。昨年11月にこの土地を襲ったサイクロンは、スンダルバンの大自然にも相当なダメージを与えたようだ。
ともあれ、WHTour.orgのサイトで、インド側とバングラーデーシュ側ともに360度画像でちょこっと垣間見てみるのも楽しいし、Digital GrinのBangladesh – In search of Man-eaterで、最近のスンダルバンの画像を眺めながら、広大なデルタ地帯に広がる深いマングローブの森林に想いを馳せてみるのもいいだろう。 -
Bangladesh River Journey
BBC World Serviceによるこのプログラムは、もともと『Climate Change : Taking the Temperature』という特集の中で、地球温暖化による社会への影響を探る試みのなかのひとつとして、バングラーデーシュのデルタ地帯の水際で生活する人々を例にとって2週間に渡ってリポートするものであった。だが先週のバングラーデーシュを襲ったサイクロンと時期が重なり、その被害に関する報道とジョイントした内容になっている。
悠久を思わせる大河の眺めとは裏腹にグローバルな規模で進行中の深刻な気候の変化。ここに取り上げられた写真と文章を見ながら、何か身近なところでできることはないか考えてみるのはどうだろうかと考えさせられるとともに、今回のサイクロンの被害については、本日まで各メディアを通じて耳にしている数字よりも大きな被害となりそうで、たいへん気にかかるところだ。
それでも、バングラーデーシュの豊かな自然、とりわけ水際のとても美しい景色を想うと、いますぐ私もそこに出かけてみたくなる。おりしも乾季のシーズンでもある。バングラーデーシュ側でもインドの西ベンガル州側でもいいのだが、世界最大のマングローブの森、スンダルバンを訪れてみたいなあ、とボンヤリ思う。
Bangladesh River Journey
Bangladesh boat diary: River erosion
Bangladesh River Journey
Bangladesh boat diary: The launch
Bangladesh boat diary: Life on the edge
Bangladesh boat diary: Tigers and dolphins
Bangladesh boat diary: Northward bound
Bangladesh boat diary: Cyclone coming -
サイクロン接近!
ベンガル地方に時速200kmという強い風速の大型サイクロンが接近中。すでにインドの隣国バングラーデーシュの主要港であるチッタゴンやコックス・バーザールは操業を停止しているのだとか。嵐は本日11月15日夕方から翌16日にかけて、ベンガル地方を縦断する見込みだ。
早期警戒システムの導入とコンクリート製のサイクロンシェルターを多数建設したおかげで、バングラーデーシュにおけるサイクロンの被害は相当少なくなってきているとはいうものの、デルタ地帯からなる低地が国土の大半を占めるため、風雨による直接のインパクトに加えて、高潮による影響も懸念される。
このサイクロン、バングラーデーシュはもとより、インド東部沿岸部やミャンマー西部海岸地域にもかなりの爪痕を残すのではないかといわれている。今からほぼ24時間の事態の推移が気になるところだ。下記のロイターによる記事にあるように、今回のサイクロンは『Terrain lower than 3 metres (10 feet) above sea level may be flooded requiring massive evacuation of residential areas as far inland as 10 km (6 miles).』『Complete destruction of mobile homes 』という事態を含めた甚大な被害が心配される規模であるらしい。
洋の東西を問わず、自然災害に際して貧しい人ほどその影響を受けやすく、また被災からの回復にも時間がかかるものだ。明日、明後日以降に私たちが目にするニュースが心痛むものでないことを願うばかりである。
Super cyclonic storm Sidr (Reuters)
Storm lashes Bangladesh coast, thousands evacuated (Reuters) -
サルの天下(2)
シムラーのリッジにある、街のシンボルの教会裏手の道をしばらく登ると、ハヌマーンを祀るジャクー寺がある。登り口のところでは杖を売ったり、レンタルしたりしている店が多く目につく。足腰に問題を抱えた老人向けというわけではなく、サル除けなのだと言われた。よもやそんなものが必要になるとは思わなかったが、子連れなので念のため一本用意して寺へ向かうことにした。これが意外に役に立つ代物であることに気付くまで、そう時間はかからなかった。
三人ほどがなんとか肩を並べて歩くことができる狭い道、複数のサルたちが我が物顔で歩いていたり、真ん中に陣取ってこちらを睥睨していたりする。牙をむき出しにしてこちらを威嚇しようとするものもある。ときに路面をガーン、ガーンと打ち鳴らして散らせてこいつらと距離を保たないと危ない。
寺近くまで来るとそこから先は石段になっている。このあたりのサルたちはなかなか手ごわかった。前から下ってきた四人連れの若いインド人男性たちが、サル軍団の襲撃を受けている場面に遭遇。ズボンのポケットに前足を突っ込まれるなどして皆成す術なしといった具合でパニックに陥っていた。
サル集団が本気になれば、大の男たちが束になっても素手では敵わないようだ。このあたりはすでに寺の敷地内である。ハヌマーンの寺なので仕方ないのだが、僧侶や世話人たちがサルたちにふんだんにエサをやっていることが、悪戯ザルたちを助長しているに違いない。手前の参道のサルたちも大胆不敵だったが、ここのサルたちはあたかも自分たちこそこの地の支配者だと勘違いしているようで、人を恐れる様子がまったくない。 -
サルの天下(1)
Arukakatさんの『これでインディアExpress』に『猿の猿退治』と題して、アカゲザルに対する他種のサルを用いた捕獲作戦の話が出ていたが、このアカゲザルときたら体力と知力ともに高次元でバランスが取れており、しかも集団行動するので私たち人間にとってかなり手強い相手だ。
インドでよく見かけるアカゲザルは、オナガザル科マカク属に分類され、同じくマカク属のニホンザルと近縁だ。種が近いために交雑も可能。日本国内で飼育されていたアカゲザルが野生化し、ニホンザルとの雑種の出現が懸念されているのだとか。このサルはアフガニスタンから南アジア全域、そしてインドシナや中国にまで広く分布している。
よく子供向けの物語で、サルといえばユーモラスなキャラクターで描かれることが多い。しかし実際は野犬などよりかえって危険で非常に厄介な動物であることはいうまでもないだろう。平面的かつ直線的な動きが多く、石や棒などを軽く振り回せば簡単に動きを封じることができる犬と違い、予想もしない動きと上下左右への変幻自在な身のこなしに加え、相当高い知能を持ち合わせるこのサルと素手で渡り合うのはあまりにリスキーだ。
ちょっと脅せば『おぉ、勘弁してくれ』と、手にした食べ物を放りだしてしまう人間を前に、サルたちは自分たちの序列の感覚から『オイラが先に食べる=奴よりも立場が上』と解釈して、さらに図に乗って大胆な行動を取るようになってくる。自然界に存在しない人口的な味覚を覚えるとともに、サルが威嚇せずとも自ら進んでエサとしてくれたりする人間たちを前に、サルたちは『弱いヤツが強いサルに上納している』としか思っていないのかもしれない。
人間たちとの接触が濃厚な地域ほど、お互い困った問題が生じている。日本でもサルとの関係に手を焼いているところは少なくない。いろいろ工夫しても知恵のある動物なのであまり効果がなく、サルが匂いを嫌うとされるヤギの放牧をするといった消極的な対抗策を試みている地方もあるらしい。
〈続く〉 -
伝説の橋

アダムズ・ブリッジとも呼ばれるラーム・セートゥ、またの名をセートゥサムドラムは、ラーマーヤナでラーマ率いる一団がラーヴァナに誘拐されたシーターを救い出すためランカ島に渡る際に築かれたものとされる。『橋』というよりもむしろ「コーズウェイ』と言うべきかもしれないが、それはともかく神話とともにまさに絶妙なロケーションと地形から『大昔に人が造ったものである』という説もささやかれている。
南にマンナール湾、北にパーク海峡が控えるこの海域は深さ10メートル程度の広大な浅瀬になっており、氷河期にはここを通じてインドとスリランカが地続きであったとされる。
「へーぇ、なんだかロマンチックでいいじゃないか」と私のような部外者は思うのだが、ここで大きなプロジェクトがまさに実現しようとしている。
インドとスリランカをつなぐこのラーム・セートゥとその北に広がる浅瀬のために大型艦船の通行が困難なため、わざわざスリランカの東側へと大回りして迂回しなくてはならない。この不便さを鑑み、植民地時代には1860年になされたA.D. Taylorの提案以来9回、独立後も5回に渡り、この海域を切り開く水路の建設が提唱されてきた。
ずいぶん長いこと云々されてきたこの計画だが、インドの現在の中央政府が2年前の6月にこのセートゥサムドラム・シッピング・キャナル・プロジェクト (SSCP)の開始を宣言し、実現へと踏み出すことになった。大型船舶が通行可能なルートを造るとともに沿岸の複数の港湾の整備をも含めた大規模な開発計画だ。これにより沿岸輸送の時間が大幅に削減できて商業的に有益であることはもちろん軍事的なメリットも大きいとされる。
しかしながら広大な地域に及ぶ掘削や浚渫等が環境に与えるインパクトが懸念されており、この海域の豊かな生態系を破壊するのではないかという声も高い。また沿岸で漁業を営む人々の間でも影響を心配する声が多いようだ。
また2004年12月に起きたスマトラ島沖地震で発生した津波が、周辺各地に大きな被害を及ぼした際、このエリアで比較的影響が少なかったのはまさにこの特異な地形が津波の威力を弱めたからだという説もある。
先述のとおり、ラーム・セートゥが宗教的に重要な意味合いを持っていることから、コングレスを中心とする連立与党が進めるこの計画に対し、右翼政党は強硬に反対する立場を取っている。この地域特有の神話に基づくいわれがなければ、議論が開発コストや環境への影響あたりに終始しそうなところが、信仰や民族文化にかかわる問題であるとして攻め込むあたりはインドらしい。今回大きく抗議の声を上げているBJPにとって、これまで確固たる地盤を築いていなかった南部、とりわけ地域政党の強いタミルナードゥへの足跡を刻む格好の機会となることだろう。UP州のアヨーディヤのラーマの生誕地問題と違い、現場はほとんど海上であるためそこで大きな騒乱が生じることはないであろうが、与党にとっては取り扱いを間違えると大やけどをしかねない危険をはらんでいる。この伝説の橋をめぐる駆け引きにおける今後の推移を見守りたい。

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こんなクジャクに誰がした!?

輸入されて野生化したインドクジャクが増えて農作物などに大きな被害が出るとともに、生態系への影響も懸念されている。数年前から駆除に乗り出している行政当局は、このほど地元猟友会の協力を得て大攻勢に乗り出している。目下、新城・上地島を立ち入り禁止にしてクジャクの根絶作戦が進行中だ。
・・・と書くと、多くの方がいったいどこの話だ?と思うことだろうが、実はこうした事態が日本国内で進行中なのである。
沖縄県の宮古地方では稲やサトウキビなどを食い荒らすことが問題になっており、いまやインドクジャクは環境省の要注意外来生物リストに掲載されるほどの悪者である。見目麗しきインドの国鳥がまさか日本で『害鳥』になろうとは思いも及ばなかった私にとって、ショッキングなニュースだ。
沖縄にクジャクが入ってきたのはそう遠い昔のことではない。1980年に小浜島のリゾートホテルで観賞用に飼育されたのが始まりだという。ところが飼育小屋から逃げ出したり、島外に持ち出されたものが繁殖したりして八重山全域に増えてしまい、いまでは与那国島でも目撃されるようになった。
前述の環境省ウェブサイトには『小浜島(約400羽)、石垣島(約90羽)、黒島(約50羽)、宮古島(約40羽)、新城島(約25羽)、伊良部島(数羽)などで野生化し、繁殖もしている。西表島にも、小浜島から飛来する個体がある』とある。作物への被害はもちろんのこと、トカゲやハブなどの爬虫類、小型の鳥類、チョウその他の昆虫などを手当たり次第にガツガツ捕食することが生態系への影響を云々されるゆえんである。 -
毒蛇大国

ラッセル・クサリヘビという蛇がいる。ヒンディー語、ウルドゥー語ではコーリーワーラーと呼ばれているらしい。体長は通常70?から130cmほどだが、特に大きなものは150cmを超すという。ひと咬みで相手に注入する毒の量が多いため、世界でも有数の恐ろしい毒蛇だ。主に草むらに棲息し、パキスタン、インド、バングラデシュなどといった南アジアの国々に多く見られるとともに、東南アジアや台湾などにも分布している。
毎年インドでは蛇に咬まれることにより5万人もの人々が命を落としているといい、世界全体のこうした死亡事故のおよそ半分を占めるというから、インドは世界に冠たる毒蛇大国ということになる。国内に生息しているヘビおよそ270種中の60種が毒性を持つというインドで、先述の年間死亡者の4割にあたる2万人がラッセル・クサリヘビにより命を奪われているのだから、この蛇がいかに危険であるかということがわかる。なお被害者たちの大半が畑仕事中の農民である。
毒蛇といっても種類によって毒の性質や強度はさまざまだ。ラッセル・クサリヘビのようなクサリヘビの類は出血毒を持っている。強力な消化酵素から成るたんぱく質を分解する毒だ。 咬まれるとまず細胞組織のたんぱく質が分解され患部に激痛と腫れが発生、それらは徐々に全身に広がっていく。続いて皮下出血や腎機能障害や内臓からの出血、血便、血尿などが起こる。またコブラやアマガサヘビは神経毒を持ち、噛まれるとおもに麻痺やしびれが発生。究極的には呼吸や心臓が停止して死亡に至る。前述の出血毒よりも症状の進行が早いとされる。
毒蛇に咬まれた場合、傷口の消毒や感染症予防のために抗生物質投与や破傷風の予防注射、出血毒を持つヘビの場合は血液凝固などの措置が取られるとともに、ヘビの毒への対処として血清治療が行なわれる。だが血清による致命的なショックが生じることもあるという。
あくまでも国全体として見れば、インドにおける血清のストックの状況まずまずのレベルらしいが、特に需要の多い農村部でローカルな医院に置いてなかったり、あっても医師が使いかたについて不慣れであったりなどということが多いなど、毒蛇対策の普及の偏りが大きな問題となっている。
以前、雨季にラージャスターン州のある小さな町に滞在していたときのこと、食堂で昼食を注文して待っていると、いきなり『コブラが出た』と上に下への大騒ぎがはじまった。店の人によると小型で幼いヘビが狭い店内のどこかに潜り込んでしまったとのことで『まったくどこに隠れちまったんだか?』と困惑した表情。たとえ子供であっても猛毒を持つ恐ろしいヘビに違いはない。私自身はとても食事どころではないと早々に退散した。
何はともあれ毒蛇に咬まれた場合、治療は一刻を争う。昼間の町中ならまだしも、田舎の村で農作業中に咬まれた場合、付近の病院にたどりつく、あるいは運び込まれる前に手遅れになってしまいそうだ。近くの町の病院が閉まっている夕方以降にやられたりすると、一体どういうことになるのだろうか?想像するだけで空恐ろしい。
India’s battle against snake bites (BBC South Asia) -
エヴェレストが不調?

かつて世界最高峰エヴェレスト(8850m)登頂は『不可能』であるとされていた。しかし『奇跡』を達成したのは1953年に頂上を目指したエドムンド・ヒラリー、テンズィン・ノルゲイ両氏。1969年にアポロ11号が世界初の月面着陸に成功したのと同じく、彼らは人類の歴史に燦然たる足跡を残したと言って差し支えないだろう。
その後、山岳や気象等に関する情報や知識の充実、登山技術の発達や装備の進歩などにより登頂がより容易になるにつれて、各国の登山隊が登頂を記録するようになり、世界最高峰征服は『快挙』に格下げとなる。
エヴェレスト他の八千メートル級の峰への登山経験の蓄積がクライマーたちの間で共有されるようになるとともに、登山隊を送り出す各国の経済発展を背景に、登山隊の資金力も増大したことがこの傾向に拍車をかける。
英国山岳会により1921年から始まった登山史だが、当初は測量や地理調査などを目的とし、究極的には政治的・軍事的な意図を背景とする事業であった。だが第二次大戦後は登山という行為そのものがスポーツとして世の中に定着することになった。男性たちにやや遅れてやがて登山の世界に進出してきた女性たちも果敢に挑戦し、その中から次々と登頂者が出てくるようになってくる。
このころには単に頂上を目指すのではなく、無酸素登頂やどのルートから登るかということに新たな価値が出てくることになった。つまり頂上という同じ地点を目指すにあたり、より難しい条件を付けて他者よりも高いハードルをクリアすることが目標とされるようになってきた。
そうした中で近ごろ一番ホットなのは、ここ数年次々と記録が塗り替えられている『スピード登頂』記録ではないだろうか。ベースキャンプから頂上に到達するまで20時間台であったものが、12時間台、10時間台、そしてついには8時間10分と、どんどん短くなっていく。このあたりは若手シェルパの独壇場で、他国のクライマーにはつけ入る余地はないようだ。
またエヴェレストをどう攻めるかだけではなく、2002年に63歳で頂上に立った渡邉玉枝氏(女性最高齢登頂)、2003年5月に70歳で登頂した三浦雄一郎氏(世界最高齢登頂)といった年齢に挑戦するものもあれば、世界の他の名峰を含めた『七大陸最高峰征服』という荒行や『全八千メートル峰制覇』などという神業であったりもする。ところで地球上に存在する八千メートル級の山14座、つまりエヴェレスト、K2、カンチェンジュンガ、ローツェ、マカルー、チョオユー、マナスル、ダウラギリ、ナンガーパルバット、アンナプルナ、ガッシャーブルム?&?、ブロードピーク、シシャパンマとすべてがヒマラヤ山脈にあるのだから、まさに『世界の屋根』の偉大さを感じずにはいられない。
これらの中で最も広くその名が知られているのはいうまでもなくエヴェレストだが、登頂すること自体が達成可能な現実となるとともに、この山の『大衆化』(・・・といってもズブの素人である一般大衆がそこを目指すわけではないが)が始まることになった。今ではいわゆる『ヤマ屋』の人たちがそれぞれのレベルで実行可能な『目標』となったと言って差し支えないだろう。それなりの素質とガッツのある人たちにとって、もはや『信じることができる』現実的な夢なのだ。現在、エヴェレストでは1シーズンに数百人ものクライマーたちが行動するのだという。初登頂から半世紀以上経った今、エヴェレスト登頂の意味は大きく変わっている。
エヴェレスト登山の裾野の広がりは、同時にいくつかの問題をも生んでいる。 登山家の野口健氏の『エベレスト清掃登山』http://www.noguchi-ken.com/message/cate/ev_clean/index.html活動により日本でも広く認知されるようになったように、『世界の屋根』という本来ならば辺境であるはずの地域におけるゴミ問題もそのひとつだ。シーズンにおいては登山許可の申請が込み合うことのみならず、登山ルートで物理的に渋滞が起きていることも一般に知られるようになった。
また登山の大衆化による事故の増加も懸念されている。Jon Krakauerによるノンフィク ション作品『Into Thin Air』(ISBN ISBN: 0385494785)で取り上げられたように、 1996年は不順な天候のためもありエヴェレスト登山史上最悪といわれる年であった。このシーズンはエヴェレスト以外でもヒマラヤの各地で多くの事故が相次ぎ、日本人女性も犠牲になっている。 世界的に有名なクライマーが経験の浅い登山者を率いて頂上を目指すいわゆる『ガイド登山隊』が増えてきていることについて、一般に知られるようになったのもこのころからである。
2003年のシーズンにはエヴェレスト頂上に立ったクライマーは過去最高の261名を数え、翌2004年には登頂者数が通算2200名を超えたと日本山岳会会報(2005年2月号) に記されている。
物理的に『地域振興』が難しいヒマラヤ地方にあって、現実的な『村おこし』とはやはり観光ということになる。登山人気は単に頂を目指す玄人のみならず、日帰りのハイキングから始まり一週間程度の軽いトレッキング、あるいは山岳の景色をゲストハウスのベランダから眺めて満喫、滞在先付近の山里の様子を見物するなど、様々なカタチで風光明媚な土地を楽しみたい観光客たちをもひきつけてくれる。いや数のうえではむしろそういう人たちのほうがはるかに多く、本格的な登山の季節以外でも日々地元にお金を落としてくれるのだ。
自国の高峰を舞台にした登山家たちの活躍のニュースとともにメディアに流れるヒマラヤの風物は、そうした観光振興のため非常に有効な宣伝にもなることは言うまでもない。こうしたものがなければ、この地域の自然や風物、人々の暮らしや文化が今ほどに外の人々の関心を引くこともなかったのではないだろうか。
登山家ならずとも、私たちそれぞれの興味の範囲でいろいろと楽しむことができるヒマラヤは、それをいただく国々はもちろんこの大地に暮らす私たちみんなが共有する貴重な財産でもある。
だがこのエヴェレスト周辺地方で近年の気象の変化が懸念されている。それは氷河の後退や降雪の減少であったりするが、ここ数ヶ月の間でも従来はなかった現象が見られるのだという。それはほとんど雪が降らない冬と春先の豪雪。はてまた4月に入ってから3日間続いた吹雪などである。
気候というものは毎年同じものではなく、時に暑くときに寒く、多雨であったり少雨であったりといろいろデコボコがあるもの。『平年並み』とは近年の平均値でしかなく、何をもって異常気象と呼ぶのかよくわからないこともあるが、とかく自然や気候といったものは相互に作用しているもの。ヒマラヤの変調については、私たちもちょっと気にかけていたいものだ。海原や大地でさえぎられていても、結局ひとつづきの同じ地球なのだ。
Everest weather’s ups and downs (BBC South Asia) -
ヒマラヤの東端はインドネシア?

普段何気なく眺めている地図だが、衛星写真から起こした海底の地形まで表現されているものを見るといろいろ思うことがある。
あいにく地質学の知識など持ち合わせていないのだが、「世界衛星アトラス」は、普段とちょっと違う視点を与えてくれるのが面白い。地図にもいろいろあるものだ。
もともとオーストラリアあたりにあったとされるインド亜大陸が北上を続けてユーラシア大陸のとぶつかったため、チベットの大地が大きく持ち上げらせることになったのはご存知のとおり。その結果できあがったヒマラヤ山脈だが、いまでも亜大陸は北側へ押しているため、いまも年にごくわずかながら隆起を続けていることもよく知られている。
東西に走るヒマラヤ山脈の東端部、インド東北地方からミャンマーにかけては大きく90度褶曲しアラカン山脈と呼ばれているが、海底の地形に目をやればこの大地の隆起は海底にも続いていることが見てとれる。つまりアンダマン・ニコバール諸島だ。
たまたま水面下にあるのでその「山脈」の姿が見えなくないのだが、もしベンガル湾の水をそっくり取り払って(そんなことができるかどうかは別にして)しまえば、その海底山脈をたどって南下すれば、インドネシアのスマトラにつながり、さらにジャワその他東に連なる島々へとたどることができる。
なるほど移動してきたのは亜大陸のように見えるが、実はそれを含む大きな地殻そのものがゆっくりと移動しており、動きを異にする他の地殻との摩擦で起きたズレが山脈や海底の隆起という形になって表れるのだと思う。よくよく眺めてみれば、大地や海底の褶曲や起伏の多いところは地震の多発地帯が多いような気がする。
書籍ではなく手軽なところでは、Google Mapあたりで眺めてみるのもいいかと思う。 -
アラビア海から大津波がやってくる?

いよいよ11月だが、ちょっと気になることがある。それは「今年11月にグジャラートとマハーラーシュトラ両州を津波が襲う」という、アーンドラ・プラデーシュ出身のインド系カナダ人「津波専門家」による発言だ。
彼によれば、次の大津波はアラビア海で発生するだろうということだ。亜大陸では地殻変動による津波が60年周期で起きており、ひとたびそれが起きればグジャラートとマハーラーシュトラで大きな被害が出るだろうとのこと。
その根拠とは何かといえば「1945年に起きたアラビア海の津波からちょうど60年目にあたる。昨年の津波との相関があると思われ、今年年末までには津波が起きるだろう」というなんだか説得力のないものであるが。ちなみにアラビア海における前々回の津波は1883年だったそうだ。
そうした指摘におかげ(?)か昨年南インドを襲った津波の教訓か知らないが、行政当局は沿岸部での津波警報システムの構築やマングローヴの植樹といった対策の検討を進めている。なにはともあれ万一の場合に備えて準備をしておくのはいいことだ。
下記リンク記事は今年9月のものだが、「津波の予言」が空振りに終わることを願いたい。
Tunami could hit Gujarat-Mumbai coast in November (Hindustantimes)
